記事一覧
こいは忘れられない【旅先ショート⑧】
いろは坂みたいな坂道を登る。
修学旅行を思い出した。
馬力の出ない原付で登って行く。
きっと走ったほうが速い。
昨夜の雨で道路が濡れているから、カタツムリみたいだ。
五分ぐらい木のトンネルを進めば「花の奥山高原」に到着する。
古くから続いていたこの場所も今日でおしまい。9歳の頃に行ったのが最後だから30年ぶりくらいかな。8月は無料開放されているし、今日は人で溢れていると思っていた。
冷やし風呂【旅先ショート⑦】
今回の舞台は静岡県浜松市引佐町
俺は100m平泳ぎ決勝の舞台に駒を進めていた。
夢にまで見たオリンピックの舞台、俺は金メダル最有力候補として、世界記録更新が期待されていた。
俺の名前がアナウンスされると、ドッと会場が湧き上がる。
「世界新頼んだぞーー!」
「頑張れー」
「絶対金メダル取ってくれー」
何故だか、日本語の応援ばかりが聞こえてくる。こういう応援は、世界記録更新には必要不可欠だ
雲の味【旅先ショート⑥】
今回の舞台は富士山
「恵、雲の味ってどんなだろう?」
隣に座る雄太が口をパクパクしながらそう言った。数時間前まで私たちを見下ろしていた雲が私たちを飲み込み、一目散に山頂へ駆け上がっていく。3000mを越えた8合目付近では、今まで見たことがない神秘的な光景が広がっていた。
「味なんて思うけどなぁー」
「そうかな、よく綿あめの味って言うでしょ?」
雄太は帽子まで脱ぎだした。そんなに雲が好きな
社会人になって本が読めるようになった
学生時代、私は読書から遠ざかっていた。不安が頭を行き交って文字に集中できず、本を読んでも上の空になる状態が続いていた。
自分の気持ちを整理する時間の余裕すらなかったのだから、そんなの当たり前だ。別に自分が特別苦労していたという話ではなく、ただ単純に思春期特有の「漠然とした不安」と戦っていただけのこと。そういう経験は誰しもが通る道だと思う。
そんな青々とした並木道を通り過ぎて社会人になった今。
赤トンボ【旅先ショート⑤】
今回の舞台は愛知県東栄町。
「東栄町?」
ある夏の日のこと。史郎は国道151号線を北上していた。終わりの見えない山道を走っていると、何だか見覚えのある地名に目を奪われた。
「どうした史郎、東栄ってとこに何かあるのか?」
友人の大樹が、怪訝そうな顔で運転中の史郎を覗いていた。
「何かな、ここに来たことがある気がするんだ」
「こんな辺鄙な場所にか? 俺たちは腐っても都民だぜ。史郎はこんな山
部活動=教育という理論
最近、正義マンがこの理論を振りかざして若人を批判する事案が多い。特にこの夏の時期は、高校野球を引き合いに出して、批判的な書き込みをする人が目立つ。
実例を出したら申し訳ないので、遠回しに書いた。実際私の母校も、SNSで大っぴらに批判されていた(しかも特定の個人に対してだ)
とにかく、部活動が教育から逸脱しているのを批判したいようなのである。
しかし、そういう人たちは、部活動に対しての考えが根