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赤トンボ【旅先ショート⑤】

赤トンボ【旅先ショート⑤】

今回の舞台は愛知県東栄町。

「東栄町?」

ある夏の日のこと。史郎は国道151号線を北上していた。終わりの見えない山道を走っていると、何だか見覚えのある地名に目を奪われた。

「どうした史郎、東栄ってとこに何かあるのか?」

友人の大樹が、怪訝そうな顔で運転中の史郎を覗いていた。

「何かな、ここに来たことがある気がするんだ」

「こんな辺鄙な場所にか? 俺たちは腐っても都民だぜ。史郎はこんな山

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家主の亡霊【旅先ショート④】

家主の亡霊【旅先ショート④】

今回の舞台は、静岡県掛川市加茂荘花鳥園

咲夜はこの道10年のオカルトライターだ。今日は静岡県掛川市で有名な心霊スポット「高天神城」についての記事を書くために、名古屋の実家から、掛川市にやってきた。

咲夜は誰も知らない心霊スポットを見つけ出し、自分が第一人者になることが仕事のやりがいを感じている。これまでに無数の心霊スポットを開拓した。その中には、最近ホラー映画化された場所だってあるから、オカル

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雨上がり、ヒグラシが鳴く【旅先ショート③】

雨上がり、ヒグラシが鳴く【旅先ショート③】

今回の舞台:静岡県河津町

私は重度のおばあちゃん子で、いくつ歳を重ねても、何か嫌なことがあるたびに、伊豆にある祖母の家に逃げるのが習慣だった。制服のまま訪ねたこともあるし、スーツのまま訪ねたこともある。私がどんな服装で来ても、どんな時間に来ても、祖母は笑顔で受け入れてくれる。

「おばあちゃん……私……私……」

「辛かったねえ、何日でも居ていいからねえ」

そう言って、大好きな祖母特製のうどん

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夕日と橋と(旅先ショート②)

夕日と橋と(旅先ショート②)

今回の舞台:浜名大橋と弁天島(静岡県浜松市)

放課後に夕日を眺めた弁天島。いつもの定位置には、制服を着た女の子がいた。僕と同じ高校生で、何かに苛まれているのは横顔を見て分かった。朝、鏡で見る僕の表情と同じ表情をしていたから。

きっと夕日に託すものは違うから、同じ場所にいても話すことはなかった。夕日が降りてくると、彼女は鳥居を境にして左側に座る。僕は右側に座る。互いの存在だけを受け入れる。背中を

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大火の犯人(旅先ショート①)

大火の犯人(旅先ショート①)

今回の舞台:光明山(静岡県浜松市天竜区)

いつもより胸が高鳴る金曜。横川はベッドでスマホをいじっていた。何かいいことがあるらしく、昼間よりも表情が柔らかい。その表情で仕事すれば、もっと出世だって望めるはずだが、横川は出世のしゅの字も考えたことがない。横川の頭はいつも山登りに支配されている。

「明日はここにしよう」

横川は浜松市の光明山に目を付けた。自宅がある静岡市から約二時間。景色のよさそう

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封鎖された神社と小さな出会い

封鎖された神社と小さな出会い

そこに行くと、大抵は人の流れが出来上がっている。抜かすも抜かされるも許さない頑固な流れに乗ってみれば、嬉しいようで寂しい、曖昧模糊とした気分にさせられる。

某ウイルスの流行から4年が過ぎた。初めて訪れたときは、ただの散歩道みたいで、本当に人気観光地なのかと疑った。想像をはるかに下回る人の数で、驚いた覚えがある。
確かに当時は、ただの島に成り下がっていたかもしれない。しかし、今はすっかり人気観光地

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