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2023年6月の記事一覧

深海魚 (詩)

深海魚 (詩)

幼子みたいに
思いきり声を上げて泣きたい夜
それさえできず
暗がりの中で、ただ息をひそめる

溢れ出る、あらゆる感情の欠片が
音を立てて体中に突き刺さり
貫いていく
私は痛みに眉を寄せる
呼吸が浅く早くなり、息苦しさを覚える

そして、意識の海の中に
ゆらゆら、ゆらゆら沈んでいく
海底まで落ちた私は
深海魚のごとく、じっとしている
全ての感情が消え行くまで、じっとしている

もう浮上できないかもし

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カッコウ (詩)

カッコウ (詩)

母さん、今年もカッコウが来てるよ
毎日カッコウ、カッコウって鳴いてるよ

昔、母さんと一緒にカッコウの鳴き声聴いたね
そして、笑いあったね
声を枯らしてまで鳴いてる声が可笑しいね、って
当のカッコウは一生懸命鳴いてるのに
それを笑うなんて
今思えば、カッコウに失礼だよね

ねぇ、母さんのいる所まで
カッコウの鳴き声が聞こえてる?

カッコウみたいに空を飛びたい
カッコウみたいに自由に飛ぶことができ

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空虚より傷心? (詩)

空虚より傷心? (詩)

空虚より傷心を好んでいた 

でも、今は違う
どちらも受け入れ難い

今は何も感じたくない
傷心も空虚も
私から希望を奪い去っていく

いつまで続くの?
何も感じたくない
心がギシギシと悲鳴を上げる

ただ、凪のように穏やかでいたいだけ

時の河で、ただ穏やかにたゆたっていたい
それさえも許されないのなら
それさえも叶えられないのなら
いっそ、この世の果てまで辿り着き
無になりたい

傷つく準備はできている (詩)

傷つく準備はできている (詩)

バックミラーに映った人影に、ハッとする
あの人だ……
胸が高鳴る

少しうつむきながら歩くあの人
私は息を潜め
その姿を凝視する

次第にこちらに近づいて来るその姿を
いつもなら逸らしてしまう視線を
惜しげなくあの人に向ける

いつもと違う、どことなく寂しげな面持ちが
私の恋慕を掻き立てる

車の横を通り過ぎる瞬間
私は咄嗟に顔を背ける
あの人は私の存在に気づくはずもなく
通り過ぎる
そして、その

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優しさは罪 (詩)

優しさは罪 (詩)

優しくしないで
あなたから離れられなくなるから

時々、怖くなる
目覚めたら、隣にあなたがいなくて

もう会えないんじゃないかと
幸せと不安が同居してる

それ以上、情熱を込めた眼差しで私を見ないで
あなたしか見えなくなって
依存してしまうのが怖い
もう、くらくらしてしまうわ

もし、あなたがいなくなっても
すぐ立ち直れるように

これ以上、私を魅了しないで
これ以上、優しくしないで

涙の理由 (詩)

涙の理由 (詩)

この涙は悲しみの涙ではありません

ただ、あなたの存在が愛しくて
嬉しくて
それだけで有難くて
涙が止まらないのです

一時、求めすぎて
辛くて
心が痛くて
あなたから離れようとした

一時、離れてみて分かった
きっぱり離れるのは無理だと……。
愚かな私

胸の奥にある大切な場所
そこはあなたの居場所
誰も入れない
あなただけ

あなたの存在が愛しくて
涙が溢れます
生涯で最後の恋人です

夜と薄明の狭間で (詩)

夜と薄明の狭間で (詩)

昼と夜の粒子が混じり合う黄昏時
薄暮に染まりゆく街を眺め
やがて訪れる長い夜を思う
私は溜め息をつき
憂える

夜はあなたへの思慕が
一段と深くなる

会いたい
でも会えない
声が聴きたい
でも聴けない
欲望が私を苦しめる

何の便りもない日々
あなたの存在を確かめる術もない

もう会えないの?
夜がふけるにつれ、不安が加速する
心が不安定になる

暗闇の中で目蓋を閉じる
一向に眠気は訪れず
夜が

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