マガジンのカバー画像

エッセイ・コラム

246
運営しているクリエイター

#仕事

「退職代行」は別にいいんだけどちょっとだけひっかかる

「退職代行」は別にいいんだけどちょっとだけひっかかる

退職代行というビジネスが活況らしい。
仕事を辞めたいのになかなか言い出せない(というか言い出すとブチギレられて退職交渉どころではない)人たちを対象に、第三者的な立場から退職の手続きを進めてくれるものだ。

たしかに必要な人は一定数いるのだろう。問題のある上司や、とんでもないパワハラの上司に退職を伝えるのは勇気がいるし、まともに取り合ってくれない可能性もある。本来仕事は「やめたい」といえばやめられる

もっとみる
人生という時間をどう使うか

人生という時間をどう使うか

「人生とは何か」という問いに対して、世の中では様々な答えがある。偉い人は「実験である」「自転車のようなもの」「死ぬまでの暇つぶしだ」と様々な回答をしているが、どれも正解なのだろう。

思うに、人生は単なる時間の集積である。
なんとも面白みのない回答なのだが、それゆえに目の前にある時間をどこにどう費やすのかを考えることは、人生を考えることでもあると思う。だからこそ今をどんな心意気で生きるのかがとても

もっとみる
「エアコンが効いているところでだらだらしていればお金がもらえる仕事」で満足できるのか

「エアコンが効いているところでだらだらしていればお金がもらえる仕事」で満足できるのか

中学生のころにあるおじさんが、学校でキャリア教育に関する講演をしてくれたことがあった。
そのおじさんは「キシさん」という人で、もったりとした不思議な話し方をするおじさんだった。
講演後にはその人の物まねが一瞬流行するくらい妙な話し方ではあったのだが、肝心かなめのキシさんが一体何者であったのかはよくわかっていない。

そのキシさんが言っていたことは断片的にいくつか覚えている。「生涯賃金が全然違うから

もっとみる
仕事を経て、人の顔は変わるのかも

仕事を経て、人の顔は変わるのかも

しわひとつない黒々としたスーツに身を包む若者が、街を闊歩する時期である。
顔つきにはなお大学生のあどけなさが残り、社会人特有の幾ばくかの渋みみたいなものが全く感じられず、その様子を人は「若い」と形容する。

高校1年のころの担任教諭が「中学を卒業して間もないキミたちは実に幼い顔をしている。とりわけ男子は子供の顔をしている」と言われたものだ。
当時はその言葉の意味がよく分からなかったが、時間が経って

もっとみる
文句を言うほど嫌な仕事を人はなぜ続けるのだろう

文句を言うほど嫌な仕事を人はなぜ続けるのだろう

人は合理的に見えて、時に矛盾したことをしはじめる、不思議な生き物である。

例えば、会社で文句を言う人がいる。
でも、なぜかわからないがその人は全然辞めないのである(なんなら、その人に当たり散らされている人が辞めている)。
文句を言ってまでそこに居続けて仕事をするというのは、よくよく考えたら妙な現象でもある。そんなに文句があるならよりよい環境を探すほうが合理的だ。

文句を言う人の周りには、まとも

もっとみる
「転職するほどの気力もない」とこぼす20代

「転職するほどの気力もない」とこぼす20代

ある時、激烈な仕事に追われる20代の社会人女性と話す機会があった。
創業社長のように死ぬほど働いて成功したるぞという気概を持って爆裂に働いているのであれば何も問題はないのだが、聞くところでは彼女はいたく疲れた様子で「この間も退職者が出て…」とすっかり落ち込んだようである。

仕事が大変でも続けるのかどうかは個々人のキャリアビジョンや人生観に依るところも大きいので、辛いからやめたらいいよと無責任に言

もっとみる
ボトルキープで偽名を書き、その後どんな名前にしたか忘れる父のちょっとした一言が引っ掛かった件

ボトルキープで偽名を書き、その後どんな名前にしたか忘れる父のちょっとした一言が引っ掛かった件

年末年始で、実家で家族がそろうという奇跡が起きた。

父、母、姉、そして私の4人はいずれも、驚くほど異なった方向を見て人生を歩んでいる。そもそも家族で一緒に食事をとると言うこともあまりなく、世に言う「個食」は割と中学生くらいの時から当たり前だったので、成長してもなお一家団欒の食事を囲んでいる家庭の様子というのは、私にとっては驚きであった。
一事が万事そんな調子で、「家族」という社会的鋳型に一応はは

もっとみる
人生をどう生きるべきかーー答えは自分の中にある(と思う)

人生をどう生きるべきかーー答えは自分の中にある(と思う)

2年ほど前に鬼籍に入った石原慎太郎氏の「『私』という男の生涯」という本を読んだ。
この作品は死後に発刊されるものとして書き下ろされた本なのだという。それだけに氏が死に刻一刻と近づくなかでどのように死を眺めてきたのかをうかがい知れる本で、なかなか興味深かった。

本のはじめの方に「自分を忘却してしまって死ぬのだけは嫌だ。そんな風に終わる人生なんぞ、結局虚無そのものではないか。忘却は嫌だ。何もかも覚え

もっとみる
ぴりりとした緊張感って

ぴりりとした緊張感って

記者という仕事をしていると「取材」ということでとにかく人と会うこと・話すことを強いられるものである。
記者の仕事は執筆ではなくむしろ取材にありというのは本当にそのとおりであると思うが、それだけに取材先の人がどんな人柄であるのかは記者にとっては重要な問題の一つである。

あるとき、会社の後輩が先輩に「この人って怖い人なんですか」と聞いて、「馬鹿野郎、怖い人だろうが何だろうが取材しろ」と叱られていたこ

もっとみる
仕事観とは人生観である

仕事観とは人生観である

この世界の大半のものは、何らかの仕事によって作り上げられている。

日々歩いている道もそうだし、日々食べているものもそうだし、日々お世話になっている電車の運行サービスもそうだし、仕事なしに存在しているものはなかなかない。

だから世の中にあるいろんな仕事はそれなりに尊い。「職業に貴賎なし」というのは明らかに言い過ぎだが(例えば、日々救命にあたっているお医者さんとクソゲーを作っているスマホゲームメー

もっとみる
仕事なかりせば

仕事なかりせば

就職活動をしていたころ、私はなるべくなら仕事をしたくないと思っていた。であればそもそも就職活動をすること自体に矛盾があるわけだが、飯を食うためにも仕方なく仕事をしないといけないから、しぶしぶやっていたというのが正直なところである。

なぜ仕事をしたくないと考えていたのかを思うと、人からあれをやれこれをやれといわれて何か事を為すというのが心底面倒だったのだろうと思う。なるべく自由に生きたいと思ってい

もっとみる
感謝はあふれるもの

感謝はあふれるもの

以前奥さんのお父さんと話をしていたときに子供の話になったことがあった。私にも娘が生まれたこともあり「だれしもあんな感じで大きくなるんですねえ」というと、ぽろっと笑いながらこんなことを言った。

「まあ、子供のほうは自分で勝手に大きくなったと思ってるんだよね」

自分自身が幼年期のころを思い返し、確かになあと思うほかなかった。
目の前に食事があるのは当たり前、家があるのも当たり前、面倒をみてもらうの

もっとみる
おじさんはちゃんと見ているよ

おじさんはちゃんと見ているよ

覗きをはたらく変態みたいなタイトルになってしまったのだが、ところで(?)おじさんというともはや何しても許される風潮が現代社会に蔓延している。
奥さんからは「ATM」とこき下ろされ、娘からは「臭い」と煙たがられ、部下からは「現場のことがわかってない」と愚痴を吐かれ、上司からは「何をやっているんだ」などと責任を押し付けられる。
それでもおじさんはおじさんとして生きる宿命にあり、時に同僚との飲み会で憂さ

もっとみる
ChatGPT隆盛でも「筋肉は裏切らない」

ChatGPT隆盛でも「筋肉は裏切らない」

かつてNHKの「みんなで筋肉体操」という番組の中で、インストラクターの先生が「筋肉は裏切らない」という名言を残した。

知的労働者が跋扈するいま、多くの人は座ってばかりいる。そんな現代社会では肉体の衰えが活躍に先立ち、そして人からも時に裏切られ自身の肉体は思うように動かなくなっていき、一種の絶望の中に生きることを余儀なくされる。
そこに光を当てるのが筋肉なのだという「メシア」としての筋肉の意義を指

もっとみる