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「退職代行」は別にいいんだけどちょっとだけひっかかる

退職代行というビジネスが活況らしい。
仕事を辞めたいのになかなか言い出せない(というか言い出すとブチギレられて退職交渉どころではない)人たちを対象に、第三者的な立場から退職の手続きを進めてくれるものだ。

たしかに必要な人は一定数いるのだろう。問題のある上司や、とんでもないパワハラの上司に退職を伝えるのは勇気がいるし、まともに取り合ってくれない可能性もある。本来仕事は「やめたい」といえばやめられるものなのに、無理やり続けさせるのは契約上問題がある。

ただ、ニュースは退職代行のビジネスが「活況」だということを伝えている。聞くところには、入社まもない新卒が数日で辞めるときにもこれを使うこともあるという。
この「退職代行が活況」という現象がどこかで引っ掛かる。理由を考えてみると「第三者経由だと人生何十回もない退職交渉の機会を逃すことになり、なんか勿体無い」ということに尽きるのだろう。

私自身転職を2回している。ということは退職も2回したのだ。当然自分より上の立場の人に「仕事を辞める」というのは勇気がいるし、神経もすり減る。
当時は退職代行ビジネスが広く知られていたわけでもなく、第三者経由で退職を言い出す選択肢はなく「直接言わざるを得ない」という環境であった。
仕事を辞めることは別に悪いことでも何でもないのだが、やめるなら自分の口で「やめる」ということで上司のリアクションとか引き止め方をみることができる。わりとこのあたりは人間模様が垣間見えて面白い。

何より別れ際に一瞬本音も出る。これが貴重だ。私自身は銀行を辞めるとき「君は心ここに在らずで働いていたからね」といわれ、零細メディアをやめるとき「君に関する印象はおばあちゃんと一緒に住んでいたことだ」と、仕事に全く向き合っていない状態だったことが如実にうかがえる上司の一言をくらった。なるほど自分の仕事の向き合い方にはまだまだ伸び代があると痛感したものである。

ゆえ、怖い上司でも、ダメでも一度腹を割って話してみることは人生経験としてまあまあ有益だと思うのだ。退職代行や法的措置に訴えるのはそれからでも遅くないような気もする。
結果的に退職代行を使うケースがあるということ自体はやむを得ないように思うが、「活況」というのはどうにも違和感がある。面倒な退職交渉を第三者に委託したとき、失った貴重な経験と一瞬がある気がしてならないのだ。

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