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エッセイ:大ちゃんは○○である

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大学時代~役者を経て介護業界に飛び込み、現在までを綴るエッセイ。
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#資格

エッセイ:大ちゃんは○○である67

エッセイ:大ちゃんは○○である67

期間は三ヶ月間。
座学と実習のカリキュラムを修了すれば、
ヘルパー2級の資格をもらえる。
ヘルパー2級の資格があれば、今までと違って随分と就職活動がスムーズになるはずだ。
資格社会といっても過言ではない介護業界。
その扉を叩く準備の一つとして、この受講は僕にとって何が何でも必要だった。
もう門前払いは懲り懲りだった。
ただし、受講するにはそこそこに高いハードルがあり、小村の説明によると
定員が30

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エッセイ:大ちゃんは○○である66

エッセイ:大ちゃんは○○である66

「大門さん、資格はお持ちになってます?」
「いえ、それが持ってないんです。
実はここに相談に来る前に何件か電話で問い合わせをしたんですけど、
無資格だってことを伝えるとどこも断られちゃったんですよ。」
僕は素直に答えた。
そんな僕の答えを聞き、
小村は『それはそうでしょうな』といったような表情を浮かべると、ゆっくりと話し始めた。
「まあ、現実はそういったところが多いでしょうね。
職業訓練に応募して

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エッセイ:大ちゃんは○○である63

エッセイ:大ちゃんは○○である63

「もしもし、求人を見てお電話したんですが、
まだ募集はしていますでしょうか?」
先ほどの落胆を払拭するかのように再びハツラツとした声を出した。
「はい、していますよ。面接をご希望ですよね?
現在何か資格はお持ちになっていらっしゃいますか?」
「……いえ、資格は持っていないんですが。
あの、無資格でも大丈夫なんですよね?」
嫌な予感がしたので、僕にとっては最も重要視する部分を聞いてみた。
「大丈夫…

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エッセイ:大ちゃんは○○である62

エッセイ:大ちゃんは○○である62

1Kの狭いアパートの一室。
座椅子に腰かけコーヒーを一口啜った僕は
一件目の会社に電話をしてみた。
数回のコール音がした後、
「はい、お電話ありがとうございます。
ふれあいクラブ、佐藤でございます。」
とハキハキした口調の女性が電話口に出た。
「もしもし、あの、求人を見てお電話したんですが、
まだ募集はしていますでしょうか?」
なるべく印象が良いようにハツラツとした声を出した。
「はい、しています

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エッセイ:大ちゃんは○○である60

エッセイ:大ちゃんは○○である60

新しい道として僕が選んだのは介護の仕事だった。
では、なぜ介護業界だったのか?
それには二つの理由がある。
正社員で働いたことのない僕にとって、
『正社員』というハードルは高かった。
これといった資格を持っていたわけでもなく、持っていた資格といえば普通免許ぐらい。
スキルがあるわけでもない。経験があるわけでもない。
だからといって何でもいいというわけでもない。
興味のある職種で正社員採用のあるとこ

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エッセイ:大ちゃんは○○である33

エッセイ:大ちゃんは○○である33

父親は腕組みをしたままじっと俯き、下を向いて何かを考えているようだった。
心配が勝っていたんだと思う。それは絶対にそうだと思う。
『自分の人生なんだから、自由にさせてもらうよ。』
そう思う気持ちも、もちろん本音としてあった。
本音としてはあったが、育ててくれた二人の気持ちを全く無視して突き進むのもなんだか違う気がした。
挑戦を認めてほしい。応援してほしい。
そんな気持ちで自分の気持ちを話したんだと

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