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【3000字無料】 マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む

*Kindle Unlimitedでもお読みいただけます!

こんにちは!

このnoteでは、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、いわゆる『プロ倫』について、解説していきます!

*注意:この内容はすでに販売されている、「キリスト教が現代の資本主義を生み出した!? ビジネスパーソンに必要な『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(前編/後編)」の動画内容を一部変更したものです。
*動画でご覧になりたい方は以下のリンクから。

*youtubeでも冒頭5分程度をご視聴いただけます。




おかしな資本主義 「投資!」&「休まない!」


『プロ倫』の話に入る前に、「資本主義」について少し考えてみます。

資本主義は、今の時代ではすごく当たり前のものですよね。

でも、この資本主義、考えてみると、
「ちょっとおかしいよね?」
ということがあります。


例えば、「余ったお金を投資する」 という行動パターンです。

あなたが、お金を稼ぎたいとします。

まずどこかに就職したり、自分でビジネスを始めたりしますよね。

しばらく働いて、お金を稼ぎました。

自分が生活していくのに必要なお金を使いました。

たくさん稼いでいたので、通常の生活費を払っても、お金は余りました。

では、その余ったお金をどうしますか?

「ぜーんぶ焼肉に使っちゃおう!」

となりますか?

ならないですよね。

余ったお金は「投資」に使われます。

あなたが経営者なら

「この残ったお金は、次の大きな事業に投資するんだ」

と言って投資するでしょう。

どこかに勤めている立場だったとしても

「この残ったお金は、貯金するか、将来の自分のために使うんだ」

と言って投資するでしょう。

なんだか不思議ですよね。


もうひとつ例を出しましょう。「休まない」 ことについて。

あなたが仕事の日、朝起きて、

「今日は何か体調が悪いな」「朝、眠いな」

と感じたら、どうしますか? 休みますか?

なかなか、休まないですよね。

多少、体調が悪くても休まない。

早起きして眠くて働きたくなかったとしても、ちゃんと会社に行き、仕事する。

なんだか不思議ですよね。


資本主義は、どう「おかしい」のか?

最低限の必要なお金以外は、次に投資する。

多少体調が悪くても、しんどくても、毎日仕事に行く。

これが「おかしい」わけです。

なぜなら「お金を儲けたい」というのは、自分の「欲望」だからです。

普通に考えれば。

「欲望」によって、「お金が欲しい!」と思って働いている。

もしそうなら、同じ「欲望」のまま、焼肉に全額を使っても良いのではないでしょうか?

あるいは「欲望」に従って、休みたい時は休めば良いのではないでしょうか?

自分の「欲望」に従って、お金を稼ぐことはOKで、
自分の「欲望」に従って、お金を使ったり、休むことはダメ。

ちょっとおかしい、と気づいたのではないでしょうか。

このように考えてみると資本主義が実はおかしいことがわかります。

このおかしな部分を説明しているのが、『プロ倫』の「ウェーバー・テーゼ」なんです。

前置きが長くなりました、解説を始めましょう。


マックス・ウェーバーってだれ?

最初に、『プロ倫』の著者「マックス・ウェーバー」とは誰なのでしょうか。

この人は昔のドイツの人で1864年生まれ、1920年に亡くなった人です。

つまり、2020年はウェーバーの死後100年でした。

そのため、入門書がたくさん出たり、雑誌で特集が組まれたりしました。

ということで、ウェーバーは、大体100年前ぐらいまで生きていた人と考えてください。


『プロ倫』のありがちな誤解と本当の内容

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。

長いタイトルですが、「名前だけは聞いたことがある」という人も多いかもしれませんね。

というのも、この本は、しばしば
「絶対に読むべき!」
とオススメされる本ですから。

「大学生が読むべき100冊」
だとか、
「社会人が読んでおくべき名著100選」
だとか、そういうブックリストに必ず登場するような本ですね。

さて、この『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、

「この本は資本主義の源泉について説明されている本だ」

という解説がされることがあるんですが、それは間違っています

では、本当はどんな内容なのでしょうか?

『プロ倫』の主張は

プロテスタンティズムの倫理』というものがあり、
それが『資本主義の精神』というものにつながり、
『資本主義』の発展を後押しした
 

というものです。

この主張は「ウェーバー・テーゼ 」と呼ばれます。

この「ウェーバー・テーゼ」こそが『プロ倫』の真の内容なのです。


「ウェーバー・テーゼ」とは?

「ウェーバー・テーゼ」を正しく理解するには、3つの概念 にバラして考えることが大切です。

この3つの概念とは
「プロテスタンティズムの倫理」
「資本主義の精神」
「資本主義」 
です。

「資本主義の精神」と「資本主義」も、別々に分解することが肝です。

この3者の関係を押さえましょう。

まず現代には「資本主義」 があります。これは分かりますね。

次に、その資本主義を後押しするような、「資本主義の精神」 という人間の内面に関わる要素があります。

そして、この「資本主義の精神」を歴史的にさかのぼっていくと、「プロテスタンティズムの倫理」 という、ある1つの「宗教的なもの」に行き着くのです。


資本主義より前の私たち

ウェーバー・テーゼを身近に感じるため、「資本主義より前の私たち」 に想いを馳せましょう。

冒頭で、「資本主義はおかしい」という話をしました。

では、資本主義がなかったころ、人々はどのように行動していたのでしょうか?


資本主義より古い時代の商売は、どう行われていたのでしょう?

資本主義がなくたって、「商売」ですから、当然、利益を求めます。

しかし、その利益というのは「自分の生活のため」 であって、「利益が余ったから新しく次に投資しよう」なんて考えられていなかった

商売が儲かったらそれで終わり。

生活に必要なお金が貯まったので休む。

これが資本主義よりも古い時代の商売です。

「利益が余ったので、次の大きなことに投資! それがまた利益を産んだら、また投資!」なんてことはなかった。


さらに言えば、古い時代には、「自由な労働者を合理的に組織して働かせる」こと自体がありませんでした

そもそも、古い時代の商売というのは、国や貴族が商人に対して「あなたは商売をしてもいいですよ」という許可を与えて行われるものでした。

そのため、一部の商人による独占市場のような状態です。

「全ての人が自由な労働力として働く」ということ自体がありえなかったのです。


つまり「資本主義より前の私たち」にとって、「自由な労働者を合理的に組織して、働く人も休まず働いて、次から次へと投資する」なんてことはとても異質で、おかしなことでした。 


もちろん、そんな時代にあっても、
「いや、あえて投資しよう」
「あえて労働者を組織して働かせよう」
という、資本主義の先駆けのような人々もポツポツと現れてはいたでしょう。

でも、そんな行動パターンは当時の人からしたら「おかしい」わけです。
普通に考えれば、
「なんだアイツ? 変だぞ!」
と反発を受けて、迫害されて、消えてしまいそうなものです。

しかし、現実には「資本主義」は世界を覆い尽くした。 

それはなぜなのでしょうか。

ウェーバーの取り組んだ問題もまさにこの点に関わります。


おかしな資本主義はなぜ広まったのか?

なぜ、「おかしな」資本主義は広まったのでしょうか。

反発がかなりあったはずなのに、推進された。 

そこには何か理由があるのではないか? 

そう考えたのがウェーバーです。

資本主義を後押しするような強い理想あるいは理念があったに違いない。

彼は、そのスピリットのようなものを指して、「資本主義の精神」と呼んだのです。


資本主義の精神

ではその「資本主義の精神」とは何か。

「資本主義の精神」をひとことで言えば、

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