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春に「新習慣」を身につける技術とは?(オペラント条件付けの活用)

「新習慣には2つの目標と報酬の設計が大切ということか」

4月から新生活を始める方も多いのではないでしょうか。春は新しいことを始めるには良い季節ですね。

一方で「新しい習慣」というのは、なかなか定着しない難しさもありますよね。新しいことに集中しようとしても、気持ちが別のところへ行ったり、なかなか続きません。

そしてこれは良い習慣だけでなく、悪い習慣にも言えます。「やめなきゃ…」と思っていてもなかなかやめられない。

そんな悩みを解決するアプローチのひとつに、「オペラント条件づけ」と呼ばれる方法があります。人間が自然と抱いてしまう心理効果を利用して、思い通りの習慣を手に入れる手法を見てみましょう。

「オペラント条件づけ」とは?

オペラント条件づけとは、アメリカの心理学者バラス・スキナー氏が考案した条件づけの方法のひとつです。

わかりやすく言うと「ある特定の行動をする頻度を増やしたり減らしたりするための訓練方法」のこですね。私たちの習慣形成にも役立つものですので詳しく見てみましょう。

この考え方はある実験をベースとしています。それが、ネズミとスキナーボックスと呼ばれる箱を使った実験です。「レバーを押すことでエサが出てくる箱」を用意し、空腹なネズミを中に入れて様子を観察しました。その結果、「(たまたま)レバーを押したらエサが出てきた」という経験を何度もすることで、ネズミがレバーを押す頻度が増えることを発見しました。

つまり、レバーを押すとエサが出てくることを学習したことで、ネズミが「自発的に」レバーを押すようになったのです。このような「ある特定の行動を起こす頻度を変える訓練過程」を「オペラント条件づけ」と名づけ、スキナー氏は以下のように理論化しました。

【オペラント反応】
ある特定の行動を “自発的に” 行なう行動を「オペラント反応」と呼ぶ。

【強化・罰】
オペラント反応に対して「報酬」のような刺激を与えることで行動の頻度を増やすことができる。これを「強化」と呼ぶ。
また、反対に行動の頻度を減らす刺激を「罰」と呼ぶ。

大切なのは「自発的に」というところですね。そして、これから増やしたい望ましい習慣には「報酬」を、減らしたい習慣には「罰」を自ら設計することで、思い通りの習慣を身につけられるということです。

よく「成功体験」という言葉を耳にしますが、「努力してうまくいった!」という成功体験が多ければ多いほど、私たちは自然と自発的に努力するようになりますよね。オペラント条件づけは、そんな成功体験を意図的に増やし、自分から「(自発的に)それをしたい!」と思わせるための手法といえます。

ケーススタディ(新しい習慣化の例)

このコロナ禍で運動不足を感じている人は多いのではないでしょうか。私の周りにも「テレワークで完全に運動不足…。でも、ランニングやウォーキングは面倒で無理…。」という人が少なくないです。

そこで、「この春からランニングを習慣化する」というケースでオペラント条件付けを設計してみましょう。やることは簡単で、3つのステップです。

達成目標→行動目標→報酬 の順番で設計します。

1.達成目標の設計
まずは、「ランニングを習慣化する」というテーマをセットした時に大切なポイントがあります。それは、「達成か未達かが明確かどうか」です。 オペラント条件づけでは、「達成できたときに報酬を出す」という手順を踏むため、達成できたかどうかが明確でないといけません。この、最終的に達成したい目標を「達成目標」と呼びます。

望ましくは数字で表現すると、達成の可否が明確ですね。今回のケースでは以下の通り達成目標を決めるとします。

達成目標:「毎日ランニングを30分する」

2.行動目標の設計
達成目標にいきなり臨むと痛い目を見ます。走る習慣がない人が突然「毎日走る」にチャレンジしても実践するのは難しいでしょう。そこで、もう少しハードルを下げ、次はすぐに実践できそうな別の目標を考えます。これは「行動目標」と呼ばれ、最後の達成目標に向けたスモールステップです。

この行動目標は、達成できたら徐々にハードルを上げて、最終的に達成目標に届くように更新していくイメージです。1つずつクリアしていくことで、達成目標に近づいていきます。

行動目標①:「週に平日2回、15分ウォーキングをする」
行動目標②:「週に平日3回と週末1回、15分ウォーキングをする」
行動目標③:「週に平日3回と週末1回、10分ランニングをする」
行動目標④:「週に平日3回と週末1回、20分ランニングをする」

3.報酬
3つ目は行動を強化するための、行動目標を達成した際の「報酬」を決めます。ポイントは行動した直後にすぐに得られる報酬にすること。ネズミの実験で言う「レバーを押すとエサがもらえる」くらいのシンプルでクイックな報酬です。強化の確度を上げるためには、行動後にすぐ得られる報酬が望ましいです。

報酬:「お気に入りのドリンクが1杯を飲める」

このように、達成目標→行動目標→報酬 の順番で設計し、あとは設計した「行動」に取り組み、「報酬」を受取る。これを繰り返すことで、最終的には達成したい自分の理想に近づけるということです。

全ては考え方から(ガンジーの言葉に学ぶ)

習慣化について学びのある言葉があります。ガンジーの言葉をご紹介します。

Your beliefs become your thoughts
Your thoughts become your words
Your words become your actions
Your actions become your habits
Your habits become your values
Your values become your destiny

Mahatma Gandhi
信念が変われば思考も変わる
思考が変われば言葉も変わる
言葉が変われば行動も変わる
行動が変われば習慣も変わる
習慣が変われば人格も変わる
人格が変われば運命も変わる

マハトマ ガンジー

素敵な言葉ですね。習慣や運命は突然変わるものではなく、小さな連鎖によって起こるもの。その起点は信念や思考です。人生をコントロールしているのは生まれ持った遺伝子でもなく、思考や行動ですね。そのためにも、ありたい姿を強く思い描くことが大切です。

環境の力を借りる

そして、もう一つ習慣づくりに大切な要素があります。それは「環境」です。環境について、ドキッとするデータをいくつかご紹介します。

・友人が太っているとあなたが太る確率は57%
・親友が健康的な食生活を送っている人はあなたが健康的な食生活を送れる確率は5倍以上
・家族や友人が喫煙者の場合、あなたが喫煙者になる確率は61%
・あなたの年収はあなたの身近な友人5人の平均

確かにそうかも、と思えるものもありますよね。「長く一緒にいる人とは顔まで似てくる」という調査結果もあります。環境がいかに人に影響を与えるかということですね。

そして、ダイエットや健康行動と呼ばれるものは特に周りの人の影響を受けやすいです。「類は友を呼ぶ」です。スラッとした体型の人たちと日々過ごしていると自分もそうなります。そしてその逆も…。

ありたい姿を思い描いたなら、その姿や意識を持っている人やコミュニティに積極的に近づき、その環境に身を置くのが実は一番の近道なのかもしれません。

まとめ

今回は新生活がスタートするシーズンということで、「新習慣」をテーマに考えました。オペラント条件づけは、習慣化に導く心理に訴えかける技術です。要点をおさらいしておきましょう。

・達成できたかどうかが明確な「達成目標」を立てる
・自分に無理のない行動からステップアップできる「行動目標」を立てる
・行動した後にすぐに得られる「報酬」を決める

あとは行動→報酬を繰り返すだけです。習慣化にはインキュベートの法則というものがあり、「21日間続くと習慣化する」と言われています。つまり何事も「3週間」が定着するかどうかの分かれ道です。

ただ、いきなり困難なことは3週間も続きません。スモールステップで階段を上がっていく。「気づけば目標が達成できていた!」というのが理想ですね。

良い習慣をつくりたい、または逆に悪い習慣をやめたい、そんなときは「オペラント条件づけ」を上手に活用してみてはいかがでしょうか。

この春からはじめる新習慣が、素敵な未来につながっていますように。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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