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短編小説・小説

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記事一覧

漆黒の翼《短編小説》

漆黒の翼《短編小説》

腕の痛みで目が覚めた。
点滴が入らず、血が逆流している。

しばらく管を流れていく私の血液を、ぼんやり見ていた。
生への諦め。
自分の身体に残された時間くらい、家族が黙っていても何となく分かる。
無駄にお金をかけさせていて申し訳ない…。

生暖かい管。
もうこのままで良いや…。
朦朧としていく意識の中、看護師さんの呼び掛けで鈍い頭が少しだけ働いた。

「ダメですよ!すぐナースコール押さなきゃ!」

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姉妹《短編小説》

姉妹《短編小説》

シャボン玉とんだ
屋根までとんだ
屋根までとんで
壊れて消えた

風 風吹くな

シャボン玉飛ばそう

私の耳に入る澄んだ声はまだ幼さが残り、時々私の目の前を
透明な丸い玉が飛んできた。
私は不思議な物に好奇心が抑えられずに、思わず口を開けて…
パクっ。

「こら!玲!ダメ!お口に入れちゃダメ!」
まだふっくら柔らかい手のひらが、私の口許を触る。

私は大人しくされるがままにしている。

「紫織。

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愛という記憶《短編小説》

愛という記憶《短編小説》

信号待ちをしている時、結構周りの人を観察したり、自分の中に入っていたり。
今日もそんな感じで、青に変わるのを待っていた。

ふと視界の端に引っ掛かる人が居た。
私の向かい側に立っている20代半ば位の男性。

一度気になりだしたら、何故かその彼から目が離せなくなった。

陽射しはどんどん高くなり、気温表は33度を表示している。
日傘をさしていても、こめかみを伝う汗。

信号が青に変わる。
私は一歩足

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セピア《短編小説》

セピア《短編小説》

「今日は奈留がずっと食べたいって言ってた、スイーツのお店行くよ」
朝起きて、まだぼんやりしてる頭。
低血圧だから、尚更直ぐには起き上がれない。
しばらくベッドでウトウトしていると、瑠偉が来て覗き込んできた。

「無理そう?無理なら、俺が奈留の為に作るよ」
いつもの優しい瞳に癒され、やっぱり辛い身体の事を伝えた。
瑠偉は本当に嫌な顔も態度も取らない。
私の体調を優先してくれる。

けどきっと、急な

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狐の嫁入り《短編小説》

狐の嫁入り《短編小説》

「あれ、狐の嫁入りだよ」
おばあちゃんはそう言って、慌てて縁側の釣竿に干してあった布団を取り込んだ。

「狐の嫁入り?」私はその言葉に、とても惹かれた。
狐がこの天気雨の中、お嫁入りする姿を想像して、ドキドキしたのだ。

「おばあちゃん、今外に狐のお嫁さんが歩いてるの?」
おばあちゃんは笑いながら「諺なんだよ、天気雨の」そう言って、布団を畳に敷き、少し雨に濡れた部分をタオルで叩きながら拭いていた。

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君のstory《短編小説》

君のstory《短編小説》

いきなり来たメッセージ。
そこには、止まった時間を動き出させてくれる、愛があった。

初夏が訪れ様としていた。
私は精神病院に入院して、もう1年が経つ頃だった。
閉鎖病棟ではなかった為、何か必要な時は看護師さんが携帯を渡してくれる。
「誰かからメールが来てるみたいだから」
穏やかな雰囲気の、大らかな看護師さんは微笑みながら携帯を渡してくれた。

確かにメールの表示が出ている。
私にメールを送ってく

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教えてくれたのは…《短編小説》

教えてくれたのは…《短編小説》

本当に心から人を愛した事がない。
心から、コイツを守りたいと思えた相手がいない。

そんな俺が、仕事が忙しく、中々一人暮らしのマンションを片付けられずにいた時、偶々目にした映像。
映し出されたモニターには、今流行りの人型ロボット。

見た目は人間と見紛う程。
カスタムで、自分好みにオーダーした物を配送してくれる。
性別も勿論選べる。
一通り映像を見て、俺は購入を決めた。

一ヶ月後に、それは届いた

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アイツに似てる《短編小説》

アイツに似てる《短編小説》

コイツ、会った事あるか…?

一瞬のデジャヴの後、そいつは無愛想に携帯を向けて
「この髪型でお願いしたいんですけど」
とオーダーして来た。

今時珍しい、ガラケーだった。
携帯を手に取り髪型と、彼の髪質、骨格のバランスを見た。
まだ若い印象だ。20代後半当たりだろうか。
端正な顔立ちは、他の女性客がチラチラ見ている程。

「かしこまりました。少しパーマかける感じで?」そう聞くと
「俺、元がストレー

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絶望の縁に咲いた…(DROP エピローグ)《短編小説》

絶望の縁に咲いた…(DROP エピローグ)《短編小説》

腕に増える傷。
遂には手首にまで…。
切っても切っても、最後までやれない。
俺は意気地無しだ。

アイツが逝ってから、今日で49日だ…。
アイツとの約束守れなかったな…。

バイクのキーを片手に家を出た。

アイツが自殺してから、俺は職場に居づらくなり辞めた。
アイツをいじりといういじめで、自殺に追い込んだのは俺だ。
アイツのお袋さんの声が耳に鳴り響いている。
それは絶え間なく。

アイツは一人息

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7年後の約束《短編小説》

7年後の約束《短編小説》

一人暮らしを始める時に、母が本棚から渡してきた2冊の文庫本。
『砂の器』
私が時々借りて読んでいた小説だ。
母は少し寂しげに笑い「これ瑞佳にあげる」そう言って、私の手のひらに乗せてきた。

「良いの?これお母さんの愛読書でしょ?」
「良いの。瑞佳の傍に居られる気がするから、持って行って」
母の笑顔が泣き顔になる前に、私はありがとうと伝え、バックにしまった。

何もかもが初めて。
母は頼りない私を心

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DROP《短編小説》

DROP《短編小説》

なぁ、そこのお前ちょっと時間ある?
あんなら付き合えよ。
いや、そんな時間は取らせねぇ。
俺の話を聞いてくれりゃ良い。

煙草吸って良いか?悪ぃな。
お前は?やっぱな、吸わないよな。
お前真面目そうだもんな。

お前、今生きてて楽しいか?
何かこう、目標とかってあるか?
将来こうなりたいとか、なんか夢とか。

え?何もない?随分素直な奴だな、ごめんごめん。
真顔で、ありません、とか言うからよ…ちょ

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通りゃんせ《短編小説》

通りゃんせ《短編小説》

いつもその神社の前を通る時、私の掌には汗が出る。

帰り道、どうしてもそこを通らないと家に着けない。
友達はその前に、道を折れて帰ってしまうから、私は一人で通らなければならない。

嫌だな…何でだろう…すごく不安な感じを受ける。
昔からこの神社が苦手だった。

理由は分からない。
おばあちゃんに聞いたら、琴美はもしかしたら霊感があるのかもしれないね、と言われた。

おばあちゃんの霊感が強いのは、こ

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雨《短編小説》

雨《短編小説》

足をブラブラさせて、眺めてた。
高い場所から見る夜景って、こんな綺麗なんだなって。

揃えた靴、綺麗に書いたつもりの遺書。

誰も気付かない私の存在。
今私がこのビルから落ちても、きっと誰も悲しまない。

小さなニュースにはなるかもしれない。
けどそんなものは、数日もすれば忘れ去られる。

誰かの記憶に残る人生だったかな。

ふと思った。

悲しいけど、私はいつも見下され、貶されバカにされて来た。

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黒い女神《短編小説》

黒い女神《短編小説》

ふらっと立ち寄ったBAR。

失敗したな、と思ったのは所謂ストリッパーが踊って、男どもにまたがったり、腰を振りながら挑発的なダンスでチップを貰う店だったからだ。

俺の趣味じゃない。
そう思いオーダーしたばかりのウォッカも飲まず、店を出ようとした時、一人の女から目が離せなくなった。

鳥籠に似せたステージで、煌びやかでセクシーな衣装を身に着けた彼女が、俺の瞳を見詰めていた。
誘う様な眼差しで、くね

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