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非行

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息子の非行の日々
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#息子

繋がり

繋がり

次男の彼女から連絡が来た。
『赤ちゃん順調に成長しています。』
次男は緊張しながら彼女の家へ挨拶に行った。
彼女も私たちのところへ挨拶へ来てくれた。
次男を好きになってくれた小柄で可愛い女の子。
彼女のことを何も知らなくてももう大切な人に思う。
若い2人の下に産まれてくる赤ちゃん。
どんなことが好きな子なんだろう。見てもないのにもう愛していて、愛してるのに何も望んでない。
#日記 #私 #家族  

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次男からの電話

次男からの電話

次男の彼女が妊娠していることが分かった。
『お父さんには自分で話すように。』と、伝えていたが次男からはなかなか連絡がなかった。

気になりつつも次男を信じて待った。
しばらくして次男は夫に連絡をしてきた。
夫から聞いた話によると、
次男はとても不安そうだったという。
今の仕事は好きだけど、安定した仕事ではない。
彼女と子どもを養うことへの漠然とした不安。
父さん母さんは両方の親同士と仲がいいけど、

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続 久しぶりの次男のこと

続 久しぶりの次男のこと

次男の家に果物を届けた日。
次男の身体をマッサージしながら、ふと私の目に入ったもの。

テーブルの下に置かれた妊娠検査薬。

うつぶせのままの次男に聞く。

『…この妊娠検査薬なんなん。
どうしたん?彼女赤ちゃんできたん?』

『………』

『赤ちゃんできたん?』

『………』

黙っているので腰をパチパチ叩いて返事を待つ。

『…………。 …そやなぁ…できたなぁ。』

『いつ分かったん。』

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久しぶりの次男のこと

久しぶりの次男のこと

義母から果物が届いた。
私と夫では到底食べきれない量。
きっと次男のところへ持っていく口実にしなさいという優しさが含まれている。

『おばあちゃんが桃くれたけど多いから食べて』
と連絡すると素直な返事がきた。

ここぞとばかりに次男の好きな食べ物や野菜ジュースを持って行った。

力仕事をしている次男。
この信じられない暑さの中、1日中外で働く。
仕事終わりの次男は真っ赤に焼けて目の下もくぼんでいた

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バイバイ

バイバイ

引越しの日。
次男の荷作りはあっという間だ。 
重たい荷物をいくつも運べるようになった次男。
夫が手際よくどんどん車に詰め込んでいく。

とくに会話もないが頼もしく感じた。

あっという間に部屋は空っぽになった。
この部屋での思い出は数え切れない。

何度もベットで乱闘をした。
何度も次男の部屋で言い合いをした。
物を投げられピシャリと目の前でドアを閉められた。

狭い6畳間に友だち、彼女、祖父母

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何度目の別れになるだろう

何度目の別れになるだろう

次男が我が家から独り立ちしようとしていた。
夫から自立を促されたこともあるが本人も考えていたようだった。

夫は18で家を出て働いた。
長男も18で家を出て大学へ行った。
次男は色んなところを出たり入ったり繰り返しながら結局1番長く家にいた。

「一緒に家探しに行こうか?相談に乗るよ。」
と言ったが次男は自分であっという間に決めてきた。次男が何かを始めるときの瞬発力はすばらいものがある。決断力を見

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私の在り方

私の在り方

次男が成人を迎えてから、それをきっかけに私も自分の在り方を意識するようになっていった。

次男が非行に走ったことで母親としての罪悪感からしなくていいことまで尻拭いし、責任を取り続けた。
本人に責任を取らせなかった。
未成年だから子どもだからと逃げられる環境を作り続けた。
逃げられる最後の砦は必要だったが、次男のためではなく私の保身のために動いていたことに気づいた。

そんな私の在り方を変えたかった

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子どもから大人へ

子どもから大人へ

少年院を出てから免許を取ったり取り消されたりと相変わらずな次男ももうすぐ二十歳になろうとしていた。あの頃は次男が二十歳を迎えるのを心待ちにしていた。終わりの見えない毎日から解放されたかった。

未成年のしたことは親が責任を負わなければいけないと思っていた。成人するまで私は責任を持ったという証が欲しかったのかもしれない。
二十歳までは、二十歳までは…と指折り数えるようなそんな気持ちだった。

そうし

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次男と車

次男と車

少年院を出た次男は無事に免許を取得した。
そしてあっという間に仕事も見つけてきた。
どこから見つけて来るのか分からないが、
ハローワークや履歴書などとは無縁の次男だった。

仕事にも行き、家にもお金を入れ新しい生活が始まった。

次男は時々家の車を貸して欲しいと言い、大きなワンボックスを運転して遊びに出かけた。
自分だけの空間で音楽を聞いたり、友達と遠くまでドライブに行くのは楽しそうだった。
保護

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次男の手紙

次男の手紙

誕生日に面会に行ったあと次男から何度か手紙がきた。

「にいちゃんがデザインしたTシャツはめちゃ良かったと思います。でも父さんが着こなしてるから良い感じに見えたのかなと思います。」

「父さんはいつも走ったり筋トレしてたけど俺はそういうの苦手だったのに、ここではずっと続けています。父さんが続けていたのも身体がなまるのが嫌だったからかなとか思います。」

「今回のことで父さんに迷惑をかけたことを数え

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親子が別々に暮らすということ

親子が別々に暮らすということ

未成年の息子を追い出す夫。
そうなってしまうほど夫も限界だった。

保護観察ということもあり、親の関わりや接し方についてやんわりではあるが助言のようなものもされる。

時には面識のない市の担当の人に子育てについて柔らかく遠回しに言葉をかけられることもある。
過敏になっている夫の心はもう閉じていた。

もう誰かに何か言われることを拒否していた。

親子は一緒に暮らした方がいいのかもしれない。

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怒り

怒り

ピリついた毎日だった。

保護観察中の分際で、遅くまで帰らないこと、仕事に寝坊すること、次男の態度の悪さに夫はイライラしていた。

「やりたいことをやるなら筋を通せ」という夫のまっすぐ過ぎる正論は正しかった。

そして正論では伝わらないことが山ほどあり、言葉でねじ伏せても効果はないように感じた。

次男はあまりしゃべらなかった。
というより、話してもどうせ聞いてもらえないことを感じ

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15歳で社会に出る

15歳で社会に出る

次男は知人の会社で働き始めた。

肉体労働はきつかったと思うが丈夫な身体を生かして働いた。

大人の中で働くことで自分も大人になったような嬉しい気持ちだったのかもしれない。

実年齢より上に見られることを嬉しがっていた。

鏡の前で腰袋を装着し工具を入れたり出したりしていた。

新しいランドセルが届いた時も鏡の前で嬉しそうに、からったり下ろしたりしていたなと思う。

嬉しい時に

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反抗期のパワー

反抗期のパワー

相変わらず大小さまざまな問題は続いた。

中学3年、受験生になっても変わらなかった。

典型的な服装の乱れから始まり、遅刻、髪染め、自転車改造、タバコ、ピアス、喧嘩、いじめ、器物破損、先生への暴言、暴力。

問題行動は少しずつエスカレートしながら増えていった。

でもやはり思春期の子どもだったんだと思う。
ここまで反抗しながらも、運動会の係を積極的にしたりと子どもらしい面もまだ残っ

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