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次なる統治機構改革(1)
プロローグ:とある報道について思ったこと先日、こんな報道があった。 https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/900000986.html 私は「政府が大学授業料無償…
世代を焚き付ける唱導者でありたい
個人の生き方や価値観は、生まれ育った時代の趨勢から自由であることはあり得ない。したがって、社会の動態は、そこで暮らす個人の生き方に、しばしば不可逆的な変化をもたらすのであり、時代が変われば、価値観も当然にして変わる。
価値観とは、ある事象の良し悪しを判断するための物差しである。「美意識」と言い換えてもよい。何が美しいか、何が正しいか、何がオシャレだとされるか。時代が変われば、そういったものも変わる もっとみる
私にとっての「誓」: 不可避的な葛藤をいかに処理するか
「誓(うけい)」とは、古事記や日本書紀といった日本神話に現れるモチーフの一つである。ある人が邪心を抱いているかどうか、嘘偽りがあるかどうかなどを確かめるために行われる儀式のようなもので、『もしもAならば、Xが起きる、Aでないならば、Yが起きる』とあらかじめ宣言し、現にそのどちらが起こるかによって、これを判断するという独特な方法が用いられる。
有名なのは、高天原(天上にある神々の国)の支配者である天 もっとみる
制度と文化(4):統治機構の不可欠性
前稿において、国家の文化を日常的に認知する契機が、制度国家の安定した存立の維持のために不可欠であることを確認した。本稿では、制度国家による安定した統治、すなわち、一定の領域において、独占的かつ排他的に支配を行う統治機構を安定した形で持つことがなぜ必要なのかについて検討する。
本稿の問題意識本論に入る前に、本稿の問題意識を明らかにしたい。
インターネットの普及とデジタル技術の発達により、膨大な情報
制度と文化(3):文化的契機と国家の存立
国家としての個は集合的な認知の共通項において成立する人間は文化によって相対的に自己を定義すると述べた。これと同様、国家も文化でもって他と区別されるものである。これまでの議論に即せば、文化でもって他の国と区別されるものが、文化国家であると言える。もちろん、国家には人格があるわけではない。国家としての特殊性の根拠となるのは、そこに暮らす人の集合的な認知である。すなわち、ある国の文化を通じて、その国民が
もっとみる次なる統治機構改革(1)
プロローグ:とある報道について思ったこと先日、こんな報道があった。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/900000986.html
私は「政府が大学授業料無償化」という話を何かで読んで、ようやく政府も少子化対策に本腰を入れ始めたか、と思った(なお、私は少子化の背景には経済的な側面以外の要因が大きく働いていると考えており、したがっ
制度と文化(2):現代の国家が抱える非対称性
人間は、直接的には消費の対象とならない事物を作り出すことにおいて特徴付けられる生き物である。こうした営為には、物質面の充足をその主たる目的とするものと、精神面の充足をその主たる目的とするものの二種類がある。例えば、農耕や企業活動、政治行政などといったものが前者であり、芸術や学問、言論、宗教などといったものが後者である。前者を「物質的営為」、後者を「精神的営為」と呼ぶこととする。
言うまでもなく、物
制度と文化(1):現代の国家が持つ両義性
複数の人間が集まり、一定の規範や価値観のもとで行動する単位のことを共同体と呼ぶとすれば、その形態や態様は時代や地域によって多種多様である。例えば、企業や学校といったものは、現代の日本において馴染みの深い共同体の例である。地域社会で活動をする団体や、自治体、あるいは国際機関といった単位も、その共同体の具体的な形態として理解できる。
こうした様々な共同体の形態の中で、現代社会において、他の共同体のあり