Makiko

ライター。noteでは異文化、英語、食べ物に関するエッセイを書いています。 JOESM…

Makiko

ライター。noteでは異文化、英語、食べ物に関するエッセイを書いています。 JOESMagazineにてインタビュー記事「イマドキの海外生活」連載中。https://joes-magazine.com/category/43 アメリカからお届けしています。

記事一覧

Honda

日本車、今と昔 海外赴任の決まった夫が、現地で乗る車を購入するにあたり「ホンダのオデッセイはどうかな」と言ってきた時、私が真っ先に返したのは「え!日本車なんて乗…

Makiko
4か月前
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梅干しとレモネードの狭間で

「あの、ね、ね、ね、あの、あの、ライオン」 ここまで一生懸命搾り出そうとしていた言葉がライオンだったことが判明し、時計が視界に入らないよう姿勢を傾けて、ゆったり…

Makiko
5か月前
8

クライマックスを迎える、春

加速の季節 春だ。そろそろ、でもなく、待ち遠しい、でもなく、アメリカ・オハイオでは今まさに春真っ盛り。 それは、学校では5月末にEnd of the year(学年末)を迎え…

Makiko
5か月前
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All these dramas

Girls=Dramas 「ドラマ」という言葉は日本のママたちの口からもよく出るかもしれないが、アメリカのママの口からもよく出てくる。 日本での使われ方とは違って、下記のよ…

Makiko
7か月前
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アメリカの図書室ボランティアと、本の中と外

アメリカの図書室ボランティア 「Can I renew this book?」 そう申し出てくるのはたいてい声が小さく、こちらと目を合わせることもできない、本のタイトルを隠しているよ…

Makiko
8か月前
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土とか木の根っことか

ただの人間から母に変わり、十年が経った。 学生の頃から壁に掛けていたモネとゴッホは、七年ほどその座を幼稚園の制作物に譲っていたが、最近、また壁に戻ってきた。 砂場…

Makiko
10か月前
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ポトフ

ポトフとポトス 玉ねぎ、セロリ、にんじん、キャベツ、にんにく、じゃがいも、ローリエの葉。残りもののベーコン数枚。ポトフと白米だけの献立にしてしまいたいから、鶏肉…

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11か月前
5

四階、特別資料室

通っていた大学の図書館では二階が入り口になっていて、その階は一般書コーナー。 三階は専門書。地下一階と二階には研究書庫が並んでいた。 マンモス校と呼ばれるその人口…

Makiko
1年前
3

必死さの味 グラノーラ

グラノーラが好きだ。バリバリしていて、甘くて、ちょっと苦くて、栄養がありそうなところ。カロリーも高そうだから、食べたあとは運動したいような気持ちになるところ。 …

Makiko
1年前
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JOESマガジンの宣伝と、こぼれる点を拾いたい話

「イマドキの海外生活」 この秋から、JOES(海外子女教育振興財団 Japan Overseas Educational Services)WEBマガジン上でライターとして、インタビューの連載をさせていた…

Makiko
1年前
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ママのEx

久しぶりに元カレに会った。 大学生の時に割と長く付き合っていた相手だ。 大学生という、未熟だけれど高校生よりは自由と責任のある、モラトリアムが許されたそんな時期を…

Makiko
1年前
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アメリカの色んな家庭と、エイミーのこと

ママが二人 よく顔を合わせているうちに、色々と話せる仲になってきたママがいる。 兄弟どちらも同じクラスなので、双方のクラスの各種イベントごとに出入りしていると、…

Makiko
1年前
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アメリカでベースボールママ

野球少年の母をしている。 まだアメリカでしかこの役割を担ったことがないので日本との比較はできないが、野球を支える中で色々と面白いと発見するカルチャーに出会うこと…

Makiko
1年前
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テイラー・スウィフトと履歴書に載らない戦い

テイラー・スウィフトのライブを観に行ってきた。 その土曜日は長男の補習校の運動会に出、次男を野球の試合に連れていった後で汗と砂埃まみれという、テイラーの世界観か…

Makiko
1年前
23

笑顔で学校に行けるまで[海外育児]

日本から渡米三週間ごろのある朝。 「恐竜のパジャマまだ届かない?」 こちらに来てから毎晩寝るときにそれを聞いて泣く次男が起きてすぐにまた聞いてきた。 アメリカの会…

Makiko
1年前
13

キッチンタオル偏愛

なんの学びも悟りもないけど、キッチンタオルの話。 アメリカのキッチンタオル 物欲はあまりない方だが、見るとどうしても買わずにはいられないものがある。惹きつけられ…

Makiko
1年前
13
Honda

Honda

日本車、今と昔

海外赴任の決まった夫が、現地で乗る車を購入するにあたり「ホンダのオデッセイはどうかな」と言ってきた時、私が真っ先に返したのは「え!日本車なんて乗ったらいじめられない?」だった。
2020年代のオハイオ州に越してきて、その反応がいかに時代錯誤なものだったかを理解した。
町はホンダ車で溢れかえり、近所ではホンダに勤めるアメリカ人が豊かな家庭生活を築く。散歩に出て日本人と知れると「コン

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梅干しとレモネードの狭間で

梅干しとレモネードの狭間で

「あの、ね、ね、ね、あの、あの、ライオン」
ここまで一生懸命搾り出そうとしていた言葉がライオンだったことが判明し、時計が視界に入らないよう姿勢を傾けて、ゆったり三男に頷く。
「あ、あ、あ、ガオーって、するのとき、じつはこわくないんだよ、ぜんぜん」
こんな喋り方なのに、何ということか、ライオンの雄叫びなど怖くないっていう強がりな発言をしたかったの? 
ついつい目尻を細めるが、驚いたような表情にすぐに

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クライマックスを迎える、春

クライマックスを迎える、春

加速の季節

春だ。そろそろ、でもなく、待ち遠しい、でもなく、アメリカ・オハイオでは今まさに春真っ盛り。

それは、学校では5月末にEnd of the year(学年末)を迎えるためのテストシーズンであり、冬の間影を潜めていたサッカーや野球、フットボールなどの屋外スポーツが盛り上がる時期であり、夏=バカンスに向けて仕事を片付けていく、言うなればクライマックスとも呼べる季節だ。

長かった冬にでき

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All these dramas

All these dramas

Girls=Dramas

「ドラマ」という言葉は日本のママたちの口からもよく出るかもしれないが、アメリカのママの口からもよく出てくる。
日本での使われ方とは違って、下記のような使い方だ。大抵、娘を持つママたちが使う。
”Yeah, the drama, again"
"Honey, you don't have to be that dramatic"
"In your class too? O

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アメリカの図書室ボランティアと、本の中と外

アメリカの図書室ボランティアと、本の中と外

アメリカの図書室ボランティア

「Can I renew this book?」
そう申し出てくるのはたいてい声が小さく、こちらと目を合わせることもできない、本のタイトルを隠しているような子。
できる、と言うと、そんなに安心しなくてもいいのにというくらいホッとした表情になって、嬉しそうに本を差し出してくる。
「Here you go」
そう言って読みかけの分厚い本を手渡す時、私はその子に、つい忘れ

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土とか木の根っことか

土とか木の根っことか

ただの人間から母に変わり、十年が経った。
学生の頃から壁に掛けていたモネとゴッホは、七年ほどその座を幼稚園の制作物に譲っていたが、最近、また壁に戻ってきた。
砂場セット置き場になっていたワインセラーも、復活した。
クローゼットの奥で朽ちているのではないかと思われたマノロブラニクも、リハビリは要するものの、なんとか履いて歩くことならできそうだ。

ガラス製の飾り花瓶、アイロン必須の白いワンピース。

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ポトフ

ポトフ

ポトフとポトス

玉ねぎ、セロリ、にんじん、キャベツ、にんにく、じゃがいも、ローリエの葉。残りもののベーコン数枚。ポトフと白米だけの献立にしてしまいたいから、鶏肉も入れよう。
オリーブオイルを敷いたル・クルーゼからベーコンとにんにくのいい香りが立ってきたら、野菜を切ったそばから放り入れていく。下処理のいる野菜もないし、切り方は雑でいい。順番だって構わない。

しばらく炒める過程も、良い。玉ねぎが透

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四階、特別資料室

四階、特別資料室

通っていた大学の図書館では二階が入り口になっていて、その階は一般書コーナー。
三階は専門書。地下一階と二階には研究書庫が並んでいた。
マンモス校と呼ばれるその人口密度の高い大学の中で、日に一度は地下の研究書庫へ本の背表紙を眺めに下りて、心を落ち着かせていた。

大学卒業間際をヨーロッパのチェコで過ごしていた私は、周りのヨーロッパ学生たちの「芸術万歳、いられる限り学生で、労働は最低限」の風潮にすっか

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必死さの味 グラノーラ

必死さの味 グラノーラ

グラノーラが好きだ。バリバリしていて、甘くて、ちょっと苦くて、栄養がありそうなところ。カロリーも高そうだから、食べたあとは運動したいような気持ちになるところ。

好きすぎて、販売許可を得て、自作したものをネットショップやマルシェで売っていたこともある。
その頃自分が運営していたネットショップは「無添加」「グルテンフリー」が文句だったので、その条件はクリアしていたのだが、作っていると、お客様にはちょ

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JOESマガジンの宣伝と、こぼれる点を拾いたい話

JOESマガジンの宣伝と、こぼれる点を拾いたい話

「イマドキの海外生活」

この秋から、JOES(海外子女教育振興財団 Japan Overseas Educational Services)WEBマガジン上でライターとして、インタビューの連載をさせていただくことになりました。
JOESではこれまで40年以上に渡り『海外子女教育』という冊子を刊行していましたが、8月で紙媒体は廃刊となり、9月からWeb版にリニューアルしました。https://jo

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ママのEx

ママのEx

久しぶりに元カレに会った。
大学生の時に割と長く付き合っていた相手だ。
大学生という、未熟だけれど高校生よりは自由と責任のある、モラトリアムが許されたそんな時期を一緒に過ごしていた。

このことをこのnoteに書きたいと思ったのは、彼も私もアメリカの帰国子女であるというのが共通項だったからだ。

別れてからそれぞれに忙しく、思い出す機会も少なかったが、現在の私は自分が駐在員の子としてアメリカで育っ

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アメリカの色んな家庭と、エイミーのこと

アメリカの色んな家庭と、エイミーのこと

ママが二人

よく顔を合わせているうちに、色々と話せる仲になってきたママがいる。
兄弟どちらも同じクラスなので、双方のクラスの各種イベントごとに出入りしていると、高い頻度で会うことになるのだ。

そのママと話すときには少し気を遣う。
その家庭はパパがいなくて、ママが二人という構成。
それだから気を遣うというわけじゃなくて、
どうしても昔、自分のしてしまったことで忘れることのできない過去を思い出すか

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アメリカでベースボールママ

アメリカでベースボールママ

野球少年の母をしている。
まだアメリカでしかこの役割を担ったことがないので日本との比較はできないが、野球を支える中で色々と面白いと発見するカルチャーに出会うことがあるので、書いてみたい。

パパ送迎

アメリカの場合、外出するには自分で運転できるようになる年齢までは親が練習や試合に送迎することになる。
だから、だいたい夕方5時から8時、週4回か5回の送迎が発生する。
ここで一つ目の発見は、送迎の8

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テイラー・スウィフトと履歴書に載らない戦い

テイラー・スウィフトと履歴書に載らない戦い

テイラー・スウィフトのライブを観に行ってきた。
その土曜日は長男の補習校の運動会に出、次男を野球の試合に連れていった後で汗と砂埃まみれという、テイラーの世界観からほど遠い状態からの出発だったが、ともかく開演に間に合うべくオハイオからデトロイトへ3時間車を走らせた。
コントラストも甚だしい野球道具と男子飯に覆われて今にも消えそうなテイラー・スウィフトに呼応する乙女な灯をそっと暖めて。

アメリカでワ

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笑顔で学校に行けるまで[海外育児]

笑顔で学校に行けるまで[海外育児]

日本から渡米三週間ごろのある朝。
「恐竜のパジャマまだ届かない?」
こちらに来てから毎晩寝るときにそれを聞いて泣く次男が起きてすぐにまた聞いてきた。
アメリカの会社は朝が早い。七時には会社に着くように夫がガレージを開ける音で目が覚めたらしい。
「船便に乗せちゃったからまだまだ届かないの。ごめんね」
何十回目かになるその台詞を聞くと、それを待っていたかのように大声で泣き始める次男。
「なんでー。うぇ

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キッチンタオル偏愛

キッチンタオル偏愛

なんの学びも悟りもないけど、キッチンタオルの話。

アメリカのキッチンタオル

物欲はあまりない方だが、見るとどうしても買わずにはいられないものがある。惹きつけられる文句の書かれたキッチンタオルだ。
これを逃したら二度と出会えないと感じさせる、店の隅にぶら下げられた数枚のキッチンタオル。
目立たないのに、誘ってくる。誰かの手に渡る前に手に入れておかなければ。そう思わせる。
文句とその時の心情が重な

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