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おわりに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』
おわりに――宗教の衰退と、今後の日本仏教 島田裕巳
二〇二三年夏、日本は大変な猛暑に襲われました。本書の対談が行われたのは、その時期のことです。しかし暑いなか、対談の場に赴くことはとても楽しいことでした。私にとって、本郷和人さんのような日本史の専門家とじっくり時間をかけて対談をしたのは、はじめてのことだったからです。
本郷さんと最初にお会いしたのは二〇一三年、雑誌『文藝春秋』の対談「日本人
新まえがき|池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』
新まえがき――やはり戦争が起きてしまった
第二次世界大戦は、ポツダム宣言を受諾した日本が、アメリカやイギリスをはじめとする連合国に無条件降伏して終結しました。一九四五年のことです。この年の五月、ドイツが連合国に降伏しています。日本では、昭和天皇の「終戦の詔書」がラジオ放送(いわゆる玉音放送)された八月一五日を「終戦の日」としていますが、世界的には九月二日が第二次世界大戦の終戦です。これは、日本
はじめに|牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』
はじめに――超高額マンション完売に沸くマーケット
「新築マンションの販売価格が1戸で55億円!」。
2017年4月、三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークマンション檜町公園」は、世間を騒がせました。場所は「東京ミッドタウン」の近く(東京都港区六本木4丁目)、最高価格55億円を付けたのは7階建て最上階で、住戸面積580㎡(175坪)でした。1坪(3・3㎡)あたり(販売坪単価。以下、坪単価)
はじめに|岩井秀一郎『軍務局長 武藤章』
床の間の写真
通された応接間には、「その男」に関するものが置かれていた。真っ先に目に留まったのは、床の間に置かれた額縁入りの大きな肖像写真である。がっしりとした顎を持つ大きめな頭と、意志の強さをうかがわせる眼差し。その顔立ちを際立たせるような丸眼鏡に、軍服姿で左手は軍刀の柄を握っている。
男の名は、武藤章。元陸軍中将で、かつて軍務局長という枢要な地位にあった軍人である。二〇二三年夏、筆者は
はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』
はじめに
泌尿器科では男性の前立腺がんが最も多い悪性疾患ですが、次に多いのが膀胱がんです。一般的に前立腺がんは成長がゆっくりで、命を脅かす可能性は少ないのですが、膀胱がんはしっかり治療をしないと生活や命を脅かされる結果となります。
日進月歩で医学は進歩しています。泌尿器科の中では前立腺がんの場合、血液のPSA(前立腺特異抗原)検査で早期発見されることが多く、ロボット手術、放射線、薬剤治療も
はじめに|山崎雅弘『アイヒマンと日本人』
はじめに
アドルフ・アイヒマンという男の名前は、日本でもよく知られている。
ナチ党政権下のドイツで国策として遂行された、数百万人ものユダヤ人に対する組織的な大量虐殺を、ナチス親衛隊の中間管理職として差配した男。
そして、戦後に捕らえられて戦争中の冷酷な行ないについての責任を追及されても、「自分はただ与えられた命令に従っただけです」と居直り続けた男。
哲学者ハンナ・アーレントが彼を評