祥伝社新書

東京神保町にある出版社の新書編集部です。2005年創刊、オールジャンル。🐑がトレードマ…

祥伝社新書

東京神保町にある出版社の新書編集部です。2005年創刊、オールジャンル。🐑がトレードマークです。 HP→https://www.shodensha.co.jp/ Twitter→https://twitter.com/shoden_shinsho

記事一覧

現代社会に蔓延る共感バカ | 池田清彦『共感バカ』

第一章 現代社会に蔓延る共感バカ (一部抜粋) 過激なバッシングが生まれる理由  そもそも「共感(empathy)」とは、人間と人間のつながりを表す概念である。他者の…

1

おわりに――二〇二四年は大きな転換点 |佐藤優×山口二郎『自民党の変質』

  おわりに――二〇二四年は大きな転換点   二〇二四年春、自民党の裏金疑惑に対する人々の怒りが高まり、この問題への対応を誤れば、自民党は大きな危機に陥るかもし…

祥伝社新書
1か月前

はじめに――対談から生まれた独自の分析と予測|佐藤優×山口二郎『自民党の変質』

 はじめに――対談から生まれた独自の分析と予測    現下日本の混沌とした政治状況を分析し、未来を予測するうえで、本書は独自の位置を占めることになると思う。  …

祥伝社新書
1か月前

おわりに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

おわりに――宗教の衰退と、今後の日本仏教 島田裕巳  二〇二三年夏、日本は大変な猛暑に襲われました。本書の対談が行われたのは、その時期のことです。しかし暑いなか…

祥伝社新書
6か月前
4

はじめに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

はじめに――日本史における鎌倉仏教 本郷和人  今なぜ鎌倉仏教か。歴史学の観点から簡単に見てみましょう。    戦前の日本史学は、鎌倉時代に誕生した仏教を高く評価…

祥伝社新書
6か月前
3

新まえがき|池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』

新まえがき――やはり戦争が起きてしまった  第二次世界大戦は、ポツダム宣言を受諾した日本が、アメリカやイギリスをはじめとする連合国に無条件降伏して終結しました。…

祥伝社新書
6か月前

はじめに|牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』

はじめに――超高額マンション完売に沸くマーケット 「新築マンションの販売価格が1戸で55億円!」。  2017年4月、三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークマ…

祥伝社新書
6か月前
1

はじめに|岩井秀一郎『軍務局長 武藤章』

床の間の写真  通された応接間には、「その男」に関するものが置かれていた。真っ先に目に留まったのは、床の間に置かれた額縁入りの大きな肖像写真である。がっしりとし…

祥伝社新書
6か月前
4

序章|矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験――最強と最凶の分かれ道』

序章 中学受験の「理想」を掲げよう「ブーム化」する中学受験 わたしは過熱化する中学受験の世界を冷ましたいと考えて、筆を執りました。 昨今は首都圏(一都三県)を中…

祥伝社新書
8か月前
4

はじめに|堤藤成『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』

はじめに なぜ僕らは、「言葉を紡ぐこと」に苦手意識を感じるのだろう散歩のはじまりは突然に 「コピーライター目線で『言葉を紡ぐ楽しさ』が伝わるエッセイを書いてほし…

祥伝社新書
9か月前
14

はじめに|春画ール『春画で読むエロティック日本』

はじめに  わたしは、おもに江戸期の春画や性文化をSNSや書籍で発信しています。それらを見てくださる方には、浮世絵やそのほか近世の何かに関する研究者やコアな浮世…

祥伝社新書
9か月前
3

『枕草子』を楽しく読もう|林望『枕草子の楽しみかた』

 日本文学の長い歴史のなかで、特に平安時代は女性の書いた文学の花盛りであった。紫式部の『源氏物語』はいうまでもないことだが、随筆文学の金字塔ともいうべき、清少納…

祥伝社新書
11か月前
3

はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』

はじめに  泌尿器科では男性の前立腺がんが最も多い悪性疾患ですが、次に多いのが膀胱がんです。一般的に前立腺がんは成長がゆっくりで、命を脅かす可能性は少ないのです…

3

はじめに|家田荘子『大人処女――彼女たちの選択には理由がある』

はじめに  東京2020オリンピック・パラリンピックが開かれるすこし前、私は、ダブルワークをしている介護職の女性へのインタビューをしていた。今は閉店してしまった…

3

はじめに|山崎雅弘『アイヒマンと日本人』

はじめに  アドルフ・アイヒマンという男の名前は、日本でもよく知られている。  ナチ党政権下のドイツで国策として遂行された、数百万人ものユダヤ人に対する組織的な…

4

日本が陥っている世界史的な危機|適菜収『安倍晋三の正体』

■世界史の中の日本 三つのメルクマール 世の中には多種多様な人々がいる。多種多様な意見、政治的立場がある。そしてそれぞれ自らの信条を述べる自由がある。たとえそれ…

5
現代社会に蔓延る共感バカ | 池田清彦『共感バカ』

現代社会に蔓延る共感バカ | 池田清彦『共感バカ』

第一章 現代社会に蔓延る共感バカ (一部抜粋) 過激なバッシングが生まれる理由

 そもそも「共感(empathy)」とは、人間と人間のつながりを表す概念である。他者の感情や考えを理解し、相手の立場になって心を寄せる。共同体の中で生きていくためには、程度の差こそあれ共感能力は必須スキルだ。
 だが、インターネットの網目の中で首まで浸かる毎日を過ごすなかで、この共感の取り扱いが極端に下手な人が急増し

もっとみる
おわりに――二〇二四年は大きな転換点 |佐藤優×山口二郎『自民党の変質』

おわりに――二〇二四年は大きな転換点 |佐藤優×山口二郎『自民党の変質』

 

おわりに――二〇二四年は大きな転換点 

 二〇二四年春、自民党の裏金疑惑に対する人々の怒りが高まり、この問題への対応を誤れば、自民党は大きな危機に陥るかもしれないという予想はあった。しかし、私から見れば、安倍晋三政権時代にもっと悪質な腐敗はあったわけで、この程度のみみっちいスキャンダルで自民党の屋台骨が揺らぐことはないだろうと、自民党を批判する立場の学者にもかかわらず、高を括っていた。とこ

もっとみる
はじめに――対談から生まれた独自の分析と予測|佐藤優×山口二郎『自民党の変質』

はじめに――対談から生まれた独自の分析と予測|佐藤優×山口二郎『自民党の変質』

 はじめに――対談から生まれた独自の分析と予測

 

 現下日本の混沌とした政治状況を分析し、未来を予測するうえで、本書は独自の位置を占めることになると思う。

 共著者の山口二郎氏(法政大学法学部教授)は、現代日本政治研究(加えて現代英国政治研究)の第一人者だ。学術活動にとどまらず、山口氏は政治の現場におけるプレイヤーでもある。特に、民主党政権(二〇〇九~二〇一二年)が成立する過程において、そ

もっとみる
おわりに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

おわりに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

おわりに――宗教の衰退と、今後の日本仏教 島田裕巳

 二〇二三年夏、日本は大変な猛暑に襲われました。本書の対談が行われたのは、その時期のことです。しかし暑いなか、対談の場に赴くことはとても楽しいことでした。私にとって、本郷和人さんのような日本史の専門家とじっくり時間をかけて対談をしたのは、はじめてのことだったからです。

 本郷さんと最初にお会いしたのは二〇一三年、雑誌『文藝春秋』の対談「日本人

もっとみる
はじめに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

はじめに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

はじめに――日本史における鎌倉仏教 本郷和人

 今なぜ鎌倉仏教か。歴史学の観点から簡単に見てみましょう。
 
 戦前の日本史学は、鎌倉時代に誕生した仏教を高く評価しました。法然、親鸞、一遍と続く浄土の教え(浄土宗系)。厳しい修行で知られる禅宗と武士の結びつき、それらの隆盛を弾劾して蒙古(モンゴル)襲来を予言した日蓮の激しい布教活動。鎌倉時代の到来は、仏教の新しいムーブメントの登場と軌を一にしてい

もっとみる
新まえがき|池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』

新まえがき|池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』

新まえがき――やはり戦争が起きてしまった

 第二次世界大戦は、ポツダム宣言を受諾した日本が、アメリカやイギリスをはじめとする連合国に無条件降伏して終結しました。一九四五年のことです。この年の五月、ドイツが連合国に降伏しています。日本では、昭和天皇の「終戦の詔書」がラジオ放送(いわゆる玉音放送)された八月一五日を「終戦の日」としていますが、世界的には九月二日が第二次世界大戦の終戦です。これは、日本

もっとみる
はじめに|牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』

はじめに|牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』

はじめに――超高額マンション完売に沸くマーケット

「新築マンションの販売価格が1戸で55億円!」。

 2017年4月、三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークマンション檜町公園」は、世間を騒がせました。場所は「東京ミッドタウン」の近く(東京都港区六本木4丁目)、最高価格55億円を付けたのは7階建て最上階で、住戸面積580㎡(175坪)でした。1坪(3・3㎡)あたり(販売坪単価。以下、坪単価)

もっとみる
はじめに|岩井秀一郎『軍務局長 武藤章』

はじめに|岩井秀一郎『軍務局長 武藤章』

床の間の写真

 通された応接間には、「その男」に関するものが置かれていた。真っ先に目に留まったのは、床の間に置かれた額縁入りの大きな肖像写真である。がっしりとした顎を持つ大きめな頭と、意志の強さをうかがわせる眼差し。その顔立ちを際立たせるような丸眼鏡に、軍服姿で左手は軍刀の柄を握っている。

 男の名は、武藤章。元陸軍中将で、かつて軍務局長という枢要な地位にあった軍人である。二〇二三年夏、筆者は

もっとみる
序章|矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験――最強と最凶の分かれ道』

序章|矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験――最強と最凶の分かれ道』

序章 中学受験の「理想」を掲げよう「ブーム化」する中学受験

わたしは過熱化する中学受験の世界を冷ましたいと考えて、筆を執りました。

昨今は首都圏(一都三県)を中心に中学受験が活況を呈しています。「少子化」が叫ばれる日本ではありますが、首都圏、とりわけ「教育熱の高い」とされる都心部の児童数は増加傾向にあるという歪な構造になっているのもその理由のひとつでしょう。

一〇年ほど前は、首都圏の中学受験

もっとみる
はじめに|堤藤成『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』

はじめに|堤藤成『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』

はじめに

なぜ僕らは、「言葉を紡ぐこと」に苦手意識を感じるのだろう散歩のはじまりは突然に

「コピーライター目線で『言葉を紡ぐ楽しさ』が伝わるエッセイを書いてほしいです」

 それが当初、この本の編集者からいただいたお題でした。コピーライター冥利に尽きる、とても嬉しいお声がけ。とはいえ、自分にとって「エッセイ」とは、大御所の作家や著名なタレントが書くものというイメージがありました。そのため一介の

もっとみる
はじめに|春画ール『春画で読むエロティック日本』

はじめに|春画ール『春画で読むエロティック日本』

はじめに

 わたしは、おもに江戸期の春画や性文化をSNSや書籍で発信しています。それらを見てくださる方には、浮世絵やそのほか近世の何かに関する研究者やコアな浮世絵コレクターはもちろん、「江戸期の歴史にはほとんど詳しくないが春画は笑えて好き」という方まで、さまざまな知識層の方がいらっしゃいます。

 感覚としては、「春画のことそんなに詳しくないけど、解説があれば楽しみたい」という方が多い気がします

もっとみる
『枕草子』を楽しく読もう|林望『枕草子の楽しみかた』

『枕草子』を楽しく読もう|林望『枕草子の楽しみかた』

 日本文学の長い歴史のなかで、特に平安時代は女性の書いた文学の花盛りであった。紫式部の『源氏物語』はいうまでもないことだが、随筆文学の金字塔ともいうべき、清少納言の『枕草子』もまた、まったく違った意味で、すばらしい達成の一つであった。

 ただ、『源氏物語』が当時の宮廷貴族世界を舞台とする「創作」であったのと対照的に、『枕草子』は、どこまでも清少納言の見聞きした貴族社会の実相をありのままに書き残し

もっとみる
はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』

はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』

はじめに

 泌尿器科では男性の前立腺がんが最も多い悪性疾患ですが、次に多いのが膀胱がんです。一般的に前立腺がんは成長がゆっくりで、命を脅かす可能性は少ないのですが、膀胱がんはしっかり治療をしないと生活や命を脅かされる結果となります。

 日進月歩で医学は進歩しています。泌尿器科の中では前立腺がんの場合、血液のPSA(前立腺特異抗原)検査で早期発見されることが多く、ロボット手術、放射線、薬剤治療も

もっとみる
はじめに|家田荘子『大人処女――彼女たちの選択には理由がある』

はじめに|家田荘子『大人処女――彼女たちの選択には理由がある』

はじめに

 東京2020オリンピック・パラリンピックが開かれるすこし前、私は、ダブルワークをしている介護職の女性へのインタビューをしていた。今は閉店してしまったが、その場所は池袋の個性的なバーで、私はその店の奥座敷を借りて取材をしていた。

 取材対象の女性は、ママの知り合いだった。その店をはじめて訪れた人はまず、超過激で華やかな内装と、淫靡な室内装飾の数々に目を剝く。そこには何人かの男女が働い

もっとみる
はじめに|山崎雅弘『アイヒマンと日本人』

はじめに|山崎雅弘『アイヒマンと日本人』

はじめに

 アドルフ・アイヒマンという男の名前は、日本でもよく知られている。

 ナチ党政権下のドイツで国策として遂行された、数百万人ものユダヤ人に対する組織的な大量虐殺を、ナチス親衛隊の中間管理職として差配した男。

 そして、戦後に捕らえられて戦争中の冷酷な行ないについての責任を追及されても、「自分はただ与えられた命令に従っただけです」と居直り続けた男。

 哲学者ハンナ・アーレントが彼を評

もっとみる
日本が陥っている世界史的な危機|適菜収『安倍晋三の正体』

日本が陥っている世界史的な危機|適菜収『安倍晋三の正体』

■世界史の中の日本
三つのメルクマール

世の中には多種多様な人々がいる。多種多様な意見、政治的立場がある。そしてそれぞれ自らの信条を述べる自由がある。たとえそれが荒唐無稽なものであったとしても、言論の自由は守らなければならない。それこそが、全体主義を封じる唯一の方法であるからだ。

しかし、噓やデマを社会に垂れ流す自由はない。噓やデマは言論ではない。それは言論が成立する基盤を破壊するものである。

もっとみる