祥伝社新書

東京神保町にある出版社の新書編集部です。2005年創刊、オールジャンル。🐑がトレードマ…

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東京神保町にある出版社の新書編集部です。2005年創刊、オールジャンル。🐑がトレードマークです。 HP→https://www.shodensha.co.jp/ Twitter→https://twitter.com/shoden_shinsho

最近の記事

おわりに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

おわりに――宗教の衰退と、今後の日本仏教 島田裕巳  二〇二三年夏、日本は大変な猛暑に襲われました。本書の対談が行われたのは、その時期のことです。しかし暑いなか、対談の場に赴くことはとても楽しいことでした。私にとって、本郷和人さんのような日本史の専門家とじっくり時間をかけて対談をしたのは、はじめてのことだったからです。  本郷さんと最初にお会いしたのは二〇一三年、雑誌『文藝春秋』の対談「日本人の死生観」の時のことでした。その頃はまだ、本郷さんは今日のようにテレビなどで大活

    • はじめに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

      はじめに――日本史における鎌倉仏教 本郷和人  今なぜ鎌倉仏教か。歴史学の観点から簡単に見てみましょう。    戦前の日本史学は、鎌倉時代に誕生した仏教を高く評価しました。法然、親鸞、一遍と続く浄土の教え(浄土宗系)。厳しい修行で知られる禅宗と武士の結びつき、それらの隆盛を弾劾して蒙古(モンゴル)襲来を予言した日蓮の激しい布教活動。鎌倉時代の到来は、仏教の新しいムーブメントの登場と軌を一にしていました。鎌倉時代を知るために、また日本人の精神を知るために、歴史研究者は鎌倉新仏

      • 新まえがき|池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』

        新まえがき――やはり戦争が起きてしまった  第二次世界大戦は、ポツダム宣言を受諾した日本が、アメリカやイギリスをはじめとする連合国に無条件降伏して終結しました。一九四五年のことです。この年の五月、ドイツが連合国に降伏しています。日本では、昭和天皇の「終戦の詔書」がラジオ放送(いわゆる玉音放送)された八月一五日を「終戦の日」としていますが、世界的には九月二日が第二次世界大戦の終戦です。これは、日本が降伏文書に署名・調印した日だからです。  あれから七九年。まもなく戦後八〇年

        • はじめに|牧野知弘『なぜマンションは高騰しているのか』

          はじめに――超高額マンション完売に沸くマーケット 「新築マンションの販売価格が1戸で55億円!」。  2017年4月、三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークマンション檜町公園」は、世間を騒がせました。場所は「東京ミッドタウン」の近く(東京都港区六本木4丁目)、最高価格55億円を付けたのは7階建て最上階で、住戸面積580㎡(175坪)でした。1坪(3・3㎡)あたり(販売坪単価。以下、坪単価)3135万円という天文学的な価格です。購入者は、報道などによれば香港系の財閥だそ

        おわりに|本郷和人×島田裕巳『鎌倉仏教のミカタ 定説と常識を覆す』

          はじめに|岩井秀一郎『軍務局長 武藤章』

          床の間の写真  通された応接間には、「その男」に関するものが置かれていた。真っ先に目に留まったのは、床の間に置かれた額縁入りの大きな肖像写真である。がっしりとした顎を持つ大きめな頭と、意志の強さをうかがわせる眼差し。その顔立ちを際立たせるような丸眼鏡に、軍服姿で左手は軍刀の柄を握っている。  男の名は、武藤章。元陸軍中将で、かつて軍務局長という枢要な地位にあった軍人である。二〇二三年夏、筆者は福岡県にある武藤邦弘・京子夫妻の自宅を訪れていた。邦弘氏は、武藤の兄・直也の孫、

          はじめに|岩井秀一郎『軍務局長 武藤章』

          序章|矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験――最強と最凶の分かれ道』

          序章 中学受験の「理想」を掲げよう「ブーム化」する中学受験 わたしは過熱化する中学受験の世界を冷ましたいと考えて、筆を執りました。 昨今は首都圏(一都三県)を中心に中学受験が活況を呈しています。「少子化」が叫ばれる日本ではありますが、首都圏、とりわけ「教育熱の高い」とされる都心部の児童数は増加傾向にあるという歪な構造になっているのもその理由のひとつでしょう。 一〇年ほど前は、首都圏の中学受験生総数は、同エリアの私立中学募集定員をはるかに下回っていて、定員割れ(入学者数が

          序章|矢野耕平『ぼくのかんがえた「さいきょう」の中学受験――最強と最凶の分かれ道』

          はじめに|堤藤成『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』

          はじめに なぜ僕らは、「言葉を紡ぐこと」に苦手意識を感じるのだろう散歩のはじまりは突然に 「コピーライター目線で『言葉を紡ぐ楽しさ』が伝わるエッセイを書いてほしいです」  それが当初、この本の編集者からいただいたお題でした。コピーライター冥利に尽きる、とても嬉しいお声がけ。とはいえ、自分にとって「エッセイ」とは、大御所の作家や著名なタレントが書くものというイメージがありました。そのため一介のコピーライターの自分が「言葉を紡ぐ楽しさを語るエッセイなんて書いていいのだろうか

          はじめに|堤藤成『ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論』

          はじめに|春画ール『春画で読むエロティック日本』

          はじめに  わたしは、おもに江戸期の春画や性文化をSNSや書籍で発信しています。それらを見てくださる方には、浮世絵やそのほか近世の何かに関する研究者やコアな浮世絵コレクターはもちろん、「江戸期の歴史にはほとんど詳しくないが春画は笑えて好き」という方まで、さまざまな知識層の方がいらっしゃいます。  感覚としては、「春画のことそんなに詳しくないけど、解説があれば楽しみたい」という方が多い気がします。  そのなかで人気の高い春画の傾向は、「色摺り」「戯画(おかしみがあり笑える

          はじめに|春画ール『春画で読むエロティック日本』

          『枕草子』を楽しく読もう|林望『枕草子の楽しみかた』

           日本文学の長い歴史のなかで、特に平安時代は女性の書いた文学の花盛りであった。紫式部の『源氏物語』はいうまでもないことだが、随筆文学の金字塔ともいうべき、清少納言の『枕草子』もまた、まったく違った意味で、すばらしい達成の一つであった。  ただ、『源氏物語』が当時の宮廷貴族世界を舞台とする「創作」であったのと対照的に、『枕草子』は、どこまでも清少納言の見聞きした貴族社会の実相をありのままに書き残した記録で、その意味で当時の宮廷生活のありようが、いきいきとリアルに伝わってくる。

          『枕草子』を楽しく読もう|林望『枕草子の楽しみかた』

          はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』

          はじめに  泌尿器科では男性の前立腺がんが最も多い悪性疾患ですが、次に多いのが膀胱がんです。一般的に前立腺がんは成長がゆっくりで、命を脅かす可能性は少ないのですが、膀胱がんはしっかり治療をしないと生活や命を脅かされる結果となります。  日進月歩で医学は進歩しています。泌尿器科の中では前立腺がんの場合、血液のPSA(前立腺特異抗原)検査で早期発見されることが多く、ロボット手術、放射線、薬剤治療も劇的に進歩しました。  また、腎がんは検診や人間ドックの超音波やCT(コンピュ

          はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』

          はじめに|家田荘子『大人処女――彼女たちの選択には理由がある』

          はじめに  東京2020オリンピック・パラリンピックが開かれるすこし前、私は、ダブルワークをしている介護職の女性へのインタビューをしていた。今は閉店してしまったが、その場所は池袋の個性的なバーで、私はその店の奥座敷を借りて取材をしていた。  取材対象の女性は、ママの知り合いだった。その店をはじめて訪れた人はまず、超過激で華やかな内装と、淫靡な室内装飾の数々に目を剝く。そこには何人かの男女が働いていた。  肌を露出した過激な服装をコスプレのように着こなしている従業員が多か

          はじめに|家田荘子『大人処女――彼女たちの選択には理由がある』

          はじめに|山崎雅弘『アイヒマンと日本人』

          はじめに  アドルフ・アイヒマンという男の名前は、日本でもよく知られている。  ナチ党政権下のドイツで国策として遂行された、数百万人ものユダヤ人に対する組織的な大量虐殺を、ナチス親衛隊の中間管理職として差配した男。  そして、戦後に捕らえられて戦争中の冷酷な行ないについての責任を追及されても、「自分はただ与えられた命令に従っただけです」と居直り続けた男。  哲学者ハンナ・アーレントが彼を評して述べた「悪の陳腐さ」という言葉は、さまざまな形でひとり歩きし、アイヒマンの名

          はじめに|山崎雅弘『アイヒマンと日本人』

          日本が陥っている世界史的な危機|適菜収『安倍晋三の正体』

          ■世界史の中の日本 三つのメルクマール 世の中には多種多様な人々がいる。多種多様な意見、政治的立場がある。そしてそれぞれ自らの信条を述べる自由がある。たとえそれが荒唐無稽なものであったとしても、言論の自由は守らなければならない。それこそが、全体主義を封じる唯一の方法であるからだ。 しかし、噓やデマを社会に垂れ流す自由はない。噓やデマは言論ではない。それは言論が成立する基盤を破壊するものである。 本書で明らかにするように、安倍政権は噓とデマにより国家や社会を破壊してきた。

          日本が陥っている世界史的な危機|適菜収『安倍晋三の正体』

          はじめに|適菜収『安倍晋三の正体』

          はじめに 「危機状況」を直視せよ 教育者の新渡戸稲造は言う。 《伝記を書くには人の性格のあらゆる方面を表すように書くのであるから、それはその人間が何も考えていない時にその人間を描くのが本当で、他処行きのような緊張した時のことばかりを書いたものならば浄瑠璃本を読んでも変ったことはない》(「読書と人生」) 安倍晋三の死後、粗製乱造された礼讃本は一面しか捉えていない。それどころか偽書に近いものもある。 読売新聞の記者が聞き書きして、「官邸のアイヒマン」と呼ばれた安倍の利害関

          はじめに|適菜収『安倍晋三の正体』

          はじめに|島田裕巳『最強神社と太古の神々』

          はじめに   日本には、実に多くの神社が鎮座しています。  文化庁が毎年刊行している『宗教年鑑』によれば、日本全国におよそ8万社あるとされています。コンビニエンスストアの数が約5万6000店ですから、神社はそれよりもはるかに多いことになります。  しかも、『宗教年鑑』に掲載されているのは宗教法人として認証されている神社のみですから、認証を受けていない神社もありますし、屋敷神やビルの屋上などにある神社を合わせれば、20万社に達するのではないかと言われています。  神社に

          はじめに|島田裕巳『最強神社と太古の神々』

          はじめに|磯田道史、近藤誠一、伊藤謙ほか『世界を動かした日本の銀』

          はじめに――今の日本の課題がここにある  本書は、石見銀山「を」書いた本ではありません。石見銀山「で」、今を生きるわれわれにとって大事なヒントを得られるようにした本です。  ですから、テーマが島根県の石見銀山だからといって、けっして、小さな話をするものではありません。むしろ、石見銀山を入口にすると、日本の歴史だけでなく、世界の経済の成り立ちの秘密などが塩梅よく浮かび上がってくるので、話の切り口を、石見銀山にしたのです。石見銀山は言ってみれば、日本経済の歩みの縮図です。ここ

          はじめに|磯田道史、近藤誠一、伊藤謙ほか『世界を動かした日本の銀』