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日本が陥っている世界史的な危機|適菜収『安倍晋三の正体』

発売間もない適菜収さんの新刊『安倍晋三の正体』が話題です。今回、日本が世界史的な危機にあることを解説した第一章の一部をnoteに掲載します。国家の崩壊を示す3つのメルクマールとは――。

■世界史の中の日本

三つのメルクマール

世の中には多種多様な人々がいる。多種多様な意見、政治的立場がある。そしてそれぞれ自らの信条を述べる自由がある。たとえそれが荒唐無稽なものであったとしても、言論の自由は守らなければならない。それこそが、全体主義を封じる唯一の方法であるからだ。

しかし、噓やデマを社会に垂れ流す自由はない。噓やデマは言論ではない。それは言論が成立する基盤を破壊するものである。

本書で明らかにするように、安倍政権は噓とデマにより国家や社会を破壊してきた。戦後日本社会の思考停止が行き着いた先が、安倍政権である。

私がいきなりこういっても「そう思わない人」「反発する人」はいる。そこで誰もが検証可能な具体的事実をこれから示していく。

国家の崩壊を示すメルクマールは三つあると思う。

一つは二〇一五年の安全保障法制の際、国を運営する手続きを破壊したことだ。安倍は、お仲間を集めて有識者懇談会をつくり、そこで集団的自衛権を行使できるようにお膳立てをしてもらってから閣議決定し、「憲法解釈の基本的論理はまったく変わっていない」「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にない」「自衛隊のリスクが下がる」などとデマを流し、内閣法制局長官の首をすげ替え、アメリカで勝手に約束してきて、最後に国会に諮り、強行採決した。仕舞いには、首相補佐官の礒崎陽輔が「法的安定性は関係ない」と言い出した。発言を撤回したとはいえ、これは近代国家としての建前をかなぐり捨てたということである。

二つめは、安倍政権下で省庁をまたがる大規模な不正が発覚し、責任がうやむやになっていることだ。森友事件における財務省の公文書改竄、南スーダン国連平和維持活動(PKO)における防衛省の日報隠蔽、裁量労働制における厚生労働省のデータ捏造、入管法(出入国管理及び難民認定法)改定に関する法務省のデータごまかし、国土交通省による基幹統計の書き換え……。安倍政権下で国への信頼は完全に破壊された。

三つめは、二〇一七年二月八日、防衛相の稲田朋美が、「(南スーダンの戦闘で)事実行為としての戦闘行為はあったが、憲法九条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、(日報で)武力衝突という言葉を使っている」と発言したことだ。現役の閣僚が国が憲法を無視していることを公言したわけだ。これを正常な近代国家だと考えるほうが無理がある。

日本は危機管理ができていなかった。そういう国がどうなるか。今、われわれの目の前でそれが発生している。

本書の構成
本書では、テーマごとに、安倍という男の正体を明らかにしていく。
第一章では極めて特異な人間が総理大臣になり、その政権下で一気にわが国が解体された理由について説明する。背後にはアメリカの世界戦略変更とわが国の知的基盤の崩壊がある。

第二章では外交問題を扱う。対米、対ロシア、対韓国、対中国、対北朝鮮……。安倍は外交ですべて失敗し、全方位売国路線を突き進んだ。ロシアには三〇〇〇億円を貢がされた挙句、共同開発で主権問題を棚上げ。北方領土はロシアの法のもとにあるという話になってしまった。この国賊を「外交の安倍」と礼讃したのが、腐り果てた自称保守メディアと思考停止した大衆だった。

第三章では経済を扱った。安倍は著書『新しい国へ 美しい国へ 完全版』(以下、『新しい国へ』)で《わたしたちは、国家を離れて無国籍には存在できないのだ》《基礎的な単位が必要であり、その単位が国家であるのは自明だろう》などと述べておきながら、いざウォール街に行けば「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と言い放った。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定締結に前のめりになり、保護貿易に反対。財界に媚を売り、国民のライフラインである水道事業の民営化をもくろむなど、国家、公共に総攻撃を仕掛けた。

第四章では安倍の政治観を検証した。安倍は保守を自称しながら、保守の対極にあるような政策を一貫して打ち出した。ここでは、いかがわしい勢力、偽装保守が政権中枢に食い込んだ理由も説明する。

第五章では安倍が垂れ流した噓・デマを検証した。にわかには信じがたいものが多いが、そこを確認すれば、総理大臣が噓やデマを流したというより、職業的デマゴーグが総理大臣をやっていたという事実が明らかになる。

第六章では安倍のバカ発言の数々を振り返った。バカがバカを担いだ結果、日本はバカな国になってしまった。

第七章では安倍に関する一連の事件を取り上げた。安倍は追及から逃げ回り、結局何ひとつ解決しなかった。

第八章では安倍と反社会勢力・詐欺組織・カルト宗教の関係を扱った。

第九章では安倍の歴史観を検証した。その歴史観は極めて幼い。そもそも歴史を知らないので、議論は成立せず、妄想だけが暴走した。

第一〇章では安倍の憲法観を取り上げた。改憲によって安倍が何をやろうとしていたかを示す。

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