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#アルバムレビュー

2023年ベストアルバム トップ20

2023年ベストアルバム トップ20

今年はびしっと厳選して20枚で1年を総括。ライブカルチャーの復権と揺れる世界、喜びも悲しみも猛スピードで切り替わる時流の中で、この音楽を聴いてる間はきっと大丈夫だ、と思えたアルバムを選びました。

20位 ROTH BART BARON『8』

三船雅也がドイツに拠点を移してからの1作目。ここしばらく毎年凄まじいアルバムをリリースし続てけいるが、本作はまた違う場所へ飛ぼうとする萌芽を感じた。エレキ

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アジカン精神分析的レビュー『サーフ ブンガク カマクラ』/今を肯定するノスタルジア

アジカン精神分析的レビュー『サーフ ブンガク カマクラ』/今を肯定するノスタルジア

5thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』(2008.11.5)

11thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ(完全版)』(2023.7.5)

2008年にリリースされた2枚目のフルアルバム。江ノ島電鉄の駅名を冠したタイトルの楽曲を藤沢から鎌倉に至るまで順番通りに揃えたコンセプト作品で、サウンドはパワーポップに傾倒し、レコーディングはやり直しや修正ナシの一発録り。歌詞も従来と異なり甘酸っぱい

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2023年上半期ベストアルバム トップ10

2023年上半期ベストアルバム トップ10

例年よりは遅れてしまったけれども、今年も上半期ベストnoteを書き上げることができた。良い歌モノとの出会いのきっかけになればこれ幸い。どのアルバムも、すごく優しい、というのは共通点かもしれない。心に寄り添うという作品が年々好きになっている。下半期も、音楽に抱えられていきたい。

10位 クラムボン『添春編』

蛙化現象という言葉がZ世代の流行語であり、しかもそれがYouTuberの動画を基に流行し

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アジカン精神分析的レビュー『ワールド ワールド ワールド』/“自分”として現実界に挑む

アジカン精神分析的レビュー『ワールド ワールド ワールド』/“自分”として現実界に挑む

4thアルバム『ワールド ワールド ワールド」(2008.3.5)

2年ぶりの4thアルバム。『ファンクラブ』から継承した複雑なアレンジを維持したまま、より外向きに、ポップに開けた楽曲たちが集まった本作。肉体は変わらないままで精神的姿勢に変化をつけたような作風と言える。ジャケットも前作はモノクロで正面を向いた少女、本作は極彩色で背中を向けた少女であるなど対を成しており、前作と明確な対比が付けられ

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アジカン精神分析的レビュー③『ソルファ』/偶像化と不安の狭間で

アジカン精神分析的レビュー③『ソルファ』/偶像化と不安の狭間で

2ndアルバム『ソルファ』(2004.10.20)

前作『君繋ファイブエム』から11カ月で届けられた2ndアルバム。全てオリコントップ10入りを果たしたシングル4曲を含む12曲入りで、アルバムは累計75万枚、オリコンチャート2週連続2位という大ヒット作となった。このアルバムでアジカンはバンドシーンで確固たる地位を築いたのは間違いない。

”一番ノリノリな時期”(※1)と後藤正文(Vo/Gt)は当

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アジカン精神分析的レビュー②『君繋ファイブエム』/世界と向き合う"象徴界“の音楽

アジカン精神分析的レビュー②『君繋ファイブエム』/世界と向き合う"象徴界“の音楽

1stアルバム『君繋ファイブエム』(2003.11.19)

インディーズ期の曲に加え、2003年4月のメジャーデビュー以降に行われたセッションで作られた曲を多く収録した1stアルバム。音楽的な振れ幅も前作『崩壊アンプリファー』から大きく広がり、以降のアジカンを決定づける指針的な1作となった。そしてオリコン週間5位、35万枚のヒットを記録した。

読み方は「きみつなぎファイブエム」。かなり個性的な

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アジカン精神分析的レビュー①『崩壊アンプリファー』/初期衝動とアイデンティティ

アジカン精神分析的レビュー①『崩壊アンプリファー』/初期衝動とアイデンティティ

1stミニアルバム『崩壊アンプリファー』(2003.4.23)

2002年11月にインディーズでリリースされた初の流通盤を再録などもせず翌年にキューンレコードから再発売し、メジャーデビュー作となった1枚。再販に際してテレビアニメ『NARUTO』のオープニングテーマとして収録曲「遥か彼方」が起用され、アジカンの名は広く知れ渡るようになった。

アジカンの結成は1996年の4月。2000年代に入り大

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変わらない自分と救われるpsykhē〜カネコアヤノ『タオルケットは穏やかな』

変わらない自分と救われるpsykhē〜カネコアヤノ『タオルケットは穏やかな』

4枚目の境地1月25日にリリースされたカネコアヤノの新アルバム『タオルケットは穏やかな』はその題からイメージしていたぬくぬくとした空気感もあるが、全体を通してロックミュージックとしてのタフな強さが印象深い。そして演奏陣を固めてからの『祝祭』以降3作とはやや異なる雰囲気を纏う1作に思えた。

2018年からバンドでドラムを担当していたBob(HAPPY)がメンバーを離れ、本作では新たに2名のドラマー

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2022年 ベストアルバム トップ50

2022年 ベストアルバム トップ50

2022年のよかったアルバムを50枚、ランキング化。5年間50枚を選び続けててこれいつまで続けられるのか、って感じなのだけども、いいアルバムが多いんだから仕方ない。とはいえ、トップ50っていうのは一区切りかもしれないなぁと。もうちょっと絞って愛聴する方向に自分を持っていくのもアリかな、と思ってます。現状はね!ひとまず、今年の分は全力で推しておきます!

50位 えんぷてい『QUIET FRIEND

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2012 to 2022〜10年分の年間ベストアルバムトップ10を振り返る

2012 to 2022〜10年分の年間ベストアルバムトップ10を振り返る

「2012 to 2022」をやろうと思ったのは、自分が意識的に多くのカルチャーに触れようとし始めたのが2012年だったことに由来しているので、"年間ベストアルバム"というのも2012年から勝手に書き留めていました。今回の記事は2012年~2021年までの10年間の年間ベストアルバムトップ10を総まとめ。

2012年ベストアルバム

1位 クリープハイプ 『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』

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2022年上半期ベストアルバム 10

2022年上半期ベストアルバム 10

毎年恒例の上半期ベスト。名古屋に住み始めて通勤が車になったのでわんさか新譜も聴けるようになった上半期。トップ10は迷うことなく決められた。例外もあるけど全体的に質量のずっしりした作品が揃った印象。でたらめに長けりゃあいいって話では決してないのだけど、たっぷり聴けてしっかり心に残るアルバムというのが今の気分には合っていたのかな、と思ってる。

10位 羊文学『our hope』

メジャー2ndアル

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”分かり合えなさ“への抵抗〜ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』

”分かり合えなさ“への抵抗〜ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』

心荒むことの多い時代だ。2020年の2月からより浮き彫りになっただけで、それよりもずっと前から価値観で傷つけ合い、思想で燃やし合うような日々は常に目の前に横たわっていた。そんな世界にあって、後戻りできない断絶とコミュニケーションの可能性を描いた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が第94回米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞したほか、世界中で評価されたことは1つの象徴的な出来事のように思う。言語

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SENSAにNelko『How Do You Feel?』のレビューを寄稿しました

SENSAにNelko『How Do You Feel?』のレビューを寄稿しました

SENSAに3回目のレビューを寄稿しました。東京のメロウヒップホップバンドNelkoの1stアルバム。最初の作品なのでバンドの成り立ちや紹介もまじえつつ、ひたすらこの良いムードを届けるべく言葉を選りました。

すっごいざっくり言うと、環ROYがなつやすみバンドとコラボレートしてる、みたいな音楽、なのだけどもちろんそんな形容では収まりきらないユニークな音楽です。ドライブミュージックとしてはもちろん、

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「ネットの音楽オタクが選んだ2021年のベストアルバム」で18本レビューを書きました

「ネットの音楽オタクが選んだ2021年のベストアルバム」で18本レビューを書きました

毎年恒例、ブログ「音楽だいすきクラブ」主催の「ネットの音楽オタクが選んだ2021年のベストアルバム」企画で以下のレビューを18本書きました。

・クリープハイプ『夜にしがみついて、朝に溶かして』
・Base Ball Bear『DIARY KEY』
・カネコアヤノ『よすが』
・吉澤嘉代子『赤星青星』
・DIALOGUE+『DIALOGUE+1』
・MONO NO AWARE『行列のできる方舟』

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