イトケン

元広告代理店の記者・コピーライター。美学美術史専攻。コラムやエッセイ、美術批評など書い…

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元広告代理店の記者・コピーライター。美学美術史専攻。コラムやエッセイ、美術批評など書いてます。E-mail:frtvl077@gmail.com

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記事一覧

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-13【北方ルネサンス】

北方ルネサンスとは1400年~1500年代にかけて、北ヨーロッパで開花した美術様式のことです。より広い意味ではイタリア以外のヨーロッパのルネサンス運動全体を指します。 …

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2か月前
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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-12【後期ルネサンス美術】1530年~1590年

一般的にマンネリというと、「ワンパターン」だとか、「新鮮味がない」、「ありきたり」など、どうしてもネガティブなイメージがあると思います。 日本語の「マンネリ」は…

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4か月前
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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-11【盛期ルネサンス美術】1500年~1530年

容姿端麗、運動能力抜群、人類史上最高とも言われる頭脳を持ち、かつ人類史上最高のアーティストのひとりであった完璧主義者——マンガでもあり得ないようなそんなパーフェ…

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8か月前
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変態絵画と1970年代カルト映画と『君たちはどう生きるか』

だいぶ落ち着いてきた感もありますが、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』についての意見がけっこう賛否両論、真っ二つに分かれていて、色んな人のレビューを楽しま…

イトケン
9か月前
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自然の手によって切り取られた世界の痕跡 サム・フォールズの哲学

自然の煌めきと滅びのアート 壊れることは生まれることだ。絶えまない消滅と創造のくりかえしの世界に私たちは生きている。 サム・フォールズは光や風、草花などの自然の…

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9か月前
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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-10【初期ルネサンス】 1400年~1500年

美術といえば「ルネサンス」、なんて言ったら大袈裟でしょうか? とはいえ「ルネサンス」美術の戦闘力たるや他の時代の美術の比ではない気がするのです。……美術の戦闘力…

イトケン
9か月前
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もっとおもしろくなる西洋美術史PART-9《国際ゴシック美術》 1300年~1400年

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。これまでタイトルに「見るのが100倍オモロくなる西洋美術史」と名づけていましたが、100…

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1年前
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今年に入ってから、仕事が非常に忙しくなっており投稿ができない状態が続いています。記事を読んで下さっている皆様、ありがとうございます。しばらく投稿できないかもしれませんが、今後も興味があれば読んでいただければ嬉しいです。それでは!

イトケン
1年前
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今年の投稿は今回で終わりとさせていただきます。
これまで一度でも記事を読んで下さった皆さま本当にありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

画像は『サン・ピエトロのピエタ』ミケランジェロ作 1498-1500

イトケン
1年前
8

モネ『リアル地獄変』/狂気の天才絵師

地獄絵図を描くために、火刑で炎にあぶられ悶絶しながら焼け焦げていく愛娘の姿を目に焼きつけて、見事な地獄変の屏風絵を完成させた天才絵師、良秀。芥川龍之介の傑作『地…

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1年前
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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-8 〈ゴシック美術/イタリア〉  ~絵画時代の幕開け~

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。 今回は第8弾、初期中世の美術についてです。   * 前回は1100年~1300年代中ごろま…

イトケン
1年前
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静かな宣告 DIC川村記念美術館『ロスコ・ルーム』

変形七角形の部屋には仄かな光源に照らされた巨大な赤褐色の絵画が、それぞれの壁に1点ずつ展示されている。鑑賞者は静まり返った展示室のなかで、未来の墓碑のような絵画…

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1年前
14

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-7 〈ゴシック美術〉

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。 今回は第7弾、ゴシック美術(1100年中頃~1300年代)についてです。 1100年中頃、フラ…

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1年前
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【雑文】ベラスケスとベーコン 《17世紀と20世紀の絵画の比較》

上の絵は17世紀の巨匠、ベラスケスの習作。 ベラスケスについては、これまでも何度か記事で触れていますが、彼は画家のなかの画家ともいわれいる美術史史上もっとも重要な…

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1年前
5

【雑文】フェルメールの凄まじすぎる集客力【日記】

全国を巡回していた「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が、10月から宮城県美術館で開催されています。 私も先日の土曜日に行ってきました。フェルメールというだけで…

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1年前
19

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-6 〈ロマネスク美術〉

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。 今回は第6弾、ロマネスク美術(1000年~1100年)についてです。 しかし、そもそもロマ…

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1年前
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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-13【北方ルネサンス】

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-13【北方ルネサンス】

北方ルネサンスとは1400年~1500年代にかけて、北ヨーロッパで開花した美術様式のことです。より広い意味ではイタリア以外のヨーロッパのルネサンス運動全体を指します。

まず注目したい点は、1400年代のネーデルラント(現在のオランダ、ベルギーなど)ではイタリアより先行して油彩画の技法が発達し、細密な描写を実現していたことです。これに加えて作品にリアリティを求めたその土地の人々の志向もあいまって、

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-12【後期ルネサンス美術】1530年~1590年

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-12【後期ルネサンス美術】1530年~1590年

一般的にマンネリというと、「ワンパターン」だとか、「新鮮味がない」、「ありきたり」など、どうしてもネガティブなイメージがあると思います。

日本語の「マンネリ」は英語の「マンネリズム」を略したものです。「マンネリズム」の語源はフランス語の「マニエリスム」が由来で、これは後期ルネサンスの美術様式を指します。

マニエリスムはざっくり言うとルネサンスの巨匠ミケランジェロたちの手法を徹底的に模倣したもの

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-11【盛期ルネサンス美術】1500年~1530年

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-11【盛期ルネサンス美術】1500年~1530年

容姿端麗、運動能力抜群、人類史上最高とも言われる頭脳を持ち、かつ人類史上最高のアーティストのひとりであった完璧主義者——マンガでもあり得ないようなそんなパーフェクヒューマンがかつて存在したといわれています。その名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。

  *

孤独を愛し、物欲はなく、身なりにも無頓着、人にどう思われようが知ったことではない。陰鬱な人嫌いで質素な生活を送る気難しい男。ただその彼は神のごとき

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変態絵画と1970年代カルト映画と『君たちはどう生きるか』

変態絵画と1970年代カルト映画と『君たちはどう生きるか』

だいぶ落ち着いてきた感もありますが、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』についての意見がけっこう賛否両論、真っ二つに分かれていて、色んな人のレビューを楽しませてもらってます。

僕は初上映の翌日に観に行ったのですが、他の方の感想や考察を読むのがおもしろすぎて、この流れに自分も乗っかるのはあえてやめておこうと思ってました。

ひとつだけ、なぜかこの映画を観たときにパッと頭に思い浮かんだのがルネサ

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自然の手によって切り取られた世界の痕跡 サム・フォールズの哲学

自然の手によって切り取られた世界の痕跡 サム・フォールズの哲学

自然の煌めきと滅びのアート
壊れることは生まれることだ。絶えまない消滅と創造のくりかえしの世界に私たちは生きている。

サム・フォールズは光や風、草花などの自然の手を借りてアート作品をつくりだす。彼のつくる作品は紛れもない人工物でありながら、そのなかに数多の生命を宿しているようにみえる。サム・フォールズは作品をとおして観る者に何を伝えようとしているのだろうか。

サム・フォールズ作品の考察
サム・

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-10【初期ルネサンス】 1400年~1500年

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-10【初期ルネサンス】 1400年~1500年

美術といえば「ルネサンス」、なんて言ったら大袈裟でしょうか?
とはいえ「ルネサンス」美術の戦闘力たるや他の時代の美術の比ではない気がするのです。……美術の戦闘力ってなんだよ!ってツッコむのはやめてくださいね。ても、なんか分かる気がしませんか?

レオナルド・ダ・ヴィンチにミケランジェロ、ラファエロ……もう、誰もが知ってる巨匠が続々と現れた時代です。

ルネサンス三つの時代

というわけで今回から第

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もっとおもしろくなる西洋美術史PART-9《国際ゴシック美術》 1300年~1400年

もっとおもしろくなる西洋美術史PART-9《国際ゴシック美術》 1300年~1400年

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。これまでタイトルに「見るのが100倍オモロくなる西洋美術史」と名づけていましたが、100倍はさすがに言いすぎかと思い「もっとおもしろくなる西洋美術史」にタイトルをあらためました。

これまでPART-1~PART-8まで年代順にポイントを解説してきましたので、順番に読んでいただくと、より西洋美術のながれが分かるかな、と思

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今年に入ってから、仕事が非常に忙しくなっており投稿ができない状態が続いています。記事を読んで下さっている皆様、ありがとうございます。しばらく投稿できないかもしれませんが、今後も興味があれば読んでいただければ嬉しいです。それでは!

今年の投稿は今回で終わりとさせていただきます。
これまで一度でも記事を読んで下さった皆さま本当にありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

画像は『サン・ピエトロのピエタ』ミケランジェロ作 1498-1500

モネ『リアル地獄変』/狂気の天才絵師

モネ『リアル地獄変』/狂気の天才絵師

地獄絵図を描くために、火刑で炎にあぶられ悶絶しながら焼け焦げていく愛娘の姿を目に焼きつけて、見事な地獄変の屏風絵を完成させた天才絵師、良秀。芥川龍之介の傑作『地獄変』のクライマックスである狂気的なシーンを読むたびに、私はクロード・モネを思い浮かべてしまいます。

光の画家

クロード・モネは間違いなく日本でもっとも人気のある画家のひとりと言っていいでしょう。モネならではの光をとらえた大胆なタッチ、

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-8 〈ゴシック美術/イタリア〉  ~絵画時代の幕開け~

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-8 〈ゴシック美術/イタリア〉  ~絵画時代の幕開け~

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。
今回は第8弾、初期中世の美術についてです。

  *

前回は1100年~1300年代中ごろまでのゴシック美術についてお話をしました。今回はイタリアのゴシックについてお話します。美術の大きな転換点となる回になりますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

フィレンツェ派とシエナ派の台頭

イタリアでは300年

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静かな宣告 DIC川村記念美術館『ロスコ・ルーム』

静かな宣告 DIC川村記念美術館『ロスコ・ルーム』

変形七角形の部屋には仄かな光源に照らされた巨大な赤褐色の絵画が、それぞれの壁に1点ずつ展示されている。鑑賞者は静まり返った展示室のなかで、未来の墓碑のような絵画にぐるりと取り囲まれることになるのだ。

DIC川村記念美術館にある通称『ロスコルーム』。抽象表現主義の代表的な画家マーク・ロスコの作品だけを展示した、世界に4箇所のみ存在する空間の1つが千葉の佐倉市にある。

『ロスコルーム』にある全7

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-7 〈ゴシック美術〉

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-7 〈ゴシック美術〉

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。
今回は第7弾、ゴシック美術(1100年中頃~1300年代)についてです。

1100年中頃、フランスから新しい美術のスタイルが生まれました。これがゲルマン民族のゴート族にちなんで「ゴシック」と呼ばれます。

  *

余談ですが、日本ではゴシック(Gothic)の短縮形としてゴス(Goth)と使われるこがあります。です

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【雑文】ベラスケスとベーコン 《17世紀と20世紀の絵画の比較》

【雑文】ベラスケスとベーコン 《17世紀と20世紀の絵画の比較》

上の絵は17世紀の巨匠、ベラスケスの習作。

ベラスケスについては、これまでも何度か記事で触れていますが、彼は画家のなかの画家ともいわれいる美術史史上もっとも重要な画家のひとりです。

17世紀のバロック時代の画家はカラヴァッジオを筆頭にルーベンスやプッサン、フェルメールなど優れた画家がたくさんいましたが、ベラスケスはその中でも突出した存在だと思います。

あくまで私見ですが、17世紀の画家でベラ

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【雑文】フェルメールの凄まじすぎる集客力【日記】

【雑文】フェルメールの凄まじすぎる集客力【日記】

全国を巡回していた「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が、10月から宮城県美術館で開催されています。

私も先日の土曜日に行ってきました。フェルメールというだけで、かなり混雑しそうだとは予想していましたが、美術館の外に行列が並ぶほどの盛況ぶり。

フェルメールではないものの、先月は千葉の美術展に、先々月は東京の美術展に行ってきた私としては、宮城の方が圧倒的に人混みに溢れていることに驚きを隠せま

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-6 〈ロマネスク美術〉

見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-6 〈ロマネスク美術〉

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。
今回は第6弾、ロマネスク美術(1000年~1100年)についてです。

しかし、そもそもロマネスク美術って何?って話ですよね。

ロマネスク美術とは
ロマネスクというのはローマ風建築のことです。そこからロマネスク美術というローマ風建築のような豪華絢爛な中世建築のスタイルをさす言葉がうまれました。その後、建築だけでなく絵

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