イトケン

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イトケン

元広告代理店の記者・コピーライター。美学美術史専攻。コラムやエッセイ、美術批評など書いてます。E-mail:frtvl077@gmail.com

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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-13【北方ルネサンス】

北方ルネサンスとは1400年~1500年代にかけて、北ヨーロッパで開花した美術様式のことです。より広い意味ではイタリア以外のヨーロッパのルネサンス運動全体を指します。 まず注目したい点は、1400年代のネーデルラント(現在のオランダ、ベルギーなど)ではイタリアより先行して油彩画の技法が発達し、細密な描写を実現していたことです。これに加えて作品にリアリティを求めたその土地の人々の志向もあいまって、絵画は異様なほど緻密さを増し写実性を高めていきました。 こうしたなかで1450

    • 見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-12【後期ルネサンス美術】1530年~1590年

      一般的にマンネリというと、「ワンパターン」だとか、「新鮮味がない」、「ありきたり」など、どうしてもネガティブなイメージがあると思います。 日本語の「マンネリ」は英語の「マンネリズム」を略したものです。「マンネリズム」の語源はフランス語の「マニエリスム」が由来で、これは後期ルネサンスの美術様式を指します。 マニエリスムはざっくり言うとルネサンスの巨匠ミケランジェロたちの手法を徹底的に模倣したものです。そして19世紀までは型にはまった生気のない美術作品群という評価をされており

      • 見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-11【盛期ルネサンス美術】1500年~1530年

        容姿端麗、運動能力抜群、人類史上最高とも言われる頭脳を持ち、かつ人類史上最高のアーティストのひとりであった完璧主義者——マンガでもあり得ないようなそんなパーフェクヒューマンがかつて存在したといわれています。その名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。   * 孤独を愛し、物欲はなく、身なりにも無頓着、人にどう思われようが知ったことではない。陰鬱な人嫌いで質素な生活を送る気難しい男。ただその彼は神のごとき御業をもった芸術家であり、その名声と作品群は生前から現代にいたるまで計り知れない

        • 変態絵画と1970年代カルト映画と『君たちはどう生きるか』

          だいぶ落ち着いてきた感もありますが、宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』についての意見がけっこう賛否両論、真っ二つに分かれていて、色んな人のレビューを楽しませてもらってます。 僕は初上映の翌日に観に行ったのですが、他の方の感想や考察を読むのがおもしろすぎて、この流れに自分も乗っかるのはあえてやめておこうと思ってました。 ひとつだけ、なぜかこの映画を観たときにパッと頭に思い浮かんだのがルネサンス時代の異端画家ヒエロニムス・ボスの三連祭壇画『快楽の園』(1503~1504

        見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-13【北方ルネサンス】

        • 見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-12【後期ルネサンス美術】1530年~1590年

        • 見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-11【盛期ルネサンス美術】1500年~1530年

        • 変態絵画と1970年代カルト映画と『君たちはどう生きるか』

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          自然の手によって切り取られた世界の痕跡 サム・フォールズの哲学

          自然の煌めきと滅びのアート 壊れることは生まれることだ。絶えまない消滅と創造のくりかえしの世界に私たちは生きている。 サム・フォールズは光や風、草花などの自然の手を借りてアート作品をつくりだす。彼のつくる作品は紛れもない人工物でありながら、そのなかに数多の生命を宿しているようにみえる。サム・フォールズは作品をとおして観る者に何を伝えようとしているのだろうか。 サム・フォールズ作品の考察 サム・フォールズは1984年にアメリカ・サンディエゴで生まれ、現在はロサンゼルスを拠点

          自然の手によって切り取られた世界の痕跡 サム・フォールズの哲学

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-10【初期ルネサンス】 1400年~1500年

          美術といえば「ルネサンス」、なんて言ったら大袈裟でしょうか? とはいえ「ルネサンス」美術の戦闘力たるや他の時代の美術の比ではない気がするのです。……美術の戦闘力ってなんだよ!ってツッコむのはやめてくださいね。ても、なんか分かる気がしませんか? レオナルド・ダ・ヴィンチにミケランジェロ、ラファエロ……もう、誰もが知ってる巨匠が続々と現れた時代です。 ルネサンス三つの時代 というわけで今回から第3回にわたってルネサンス美術のお話をさせていただきます。なんで3回かっていうと、

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-10【初期ルネサンス】 1400年~1500年

          もっとおもしろくなる西洋美術史PART-9《国際ゴシック美術》 1300年~1400年

          美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。これまでタイトルに「見るのが100倍オモロくなる西洋美術史」と名づけていましたが、100倍はさすがに言いすぎかと思い「もっとおもしろくなる西洋美術史」にタイトルをあらためました。 これまでPART-1~PART-8まで年代順にポイントを解説してきましたので、順番に読んでいただくと、より西洋美術のながれが分かるかな、と思います。 さて今回は第9弾、国際ゴシック美術(1300年後半~1400年代初め

          もっとおもしろくなる西洋美術史PART-9《国際ゴシック美術》 1300年~1400年

          今年に入ってから、仕事が非常に忙しくなっており投稿ができない状態が続いています。記事を読んで下さっている皆様、ありがとうございます。しばらく投稿できないかもしれませんが、今後も興味があれば読んでいただければ嬉しいです。それでは!

          今年に入ってから、仕事が非常に忙しくなっており投稿ができない状態が続いています。記事を読んで下さっている皆様、ありがとうございます。しばらく投稿できないかもしれませんが、今後も興味があれば読んでいただければ嬉しいです。それでは!

          今年の投稿は今回で終わりとさせていただきます。 これまで一度でも記事を読んで下さった皆さま本当にありがとうございました。 来年もよろしくお願いいたします。 画像は『サン・ピエトロのピエタ』ミケランジェロ作 1498-1500

          今年の投稿は今回で終わりとさせていただきます。 これまで一度でも記事を読んで下さった皆さま本当にありがとうございました。 来年もよろしくお願いいたします。 画像は『サン・ピエトロのピエタ』ミケランジェロ作 1498-1500

          モネ『リアル地獄変』/狂気の天才絵師

          地獄絵図を描くために、火刑で炎にあぶられ悶絶しながら焼け焦げていく愛娘の姿を目に焼きつけて、見事な地獄変の屏風絵を完成させた天才絵師、良秀。芥川龍之介の傑作『地獄変』のクライマックスである狂気的なシーンを読むたびに、私はクロード・モネを思い浮かべてしまいます。 光の画家 クロード・モネは間違いなく日本でもっとも人気のある画家のひとりと言っていいでしょう。モネならではの光をとらえた大胆なタッチ、それでいて繊細な色彩の美しさが、多くの人の心をひきつけて止まないのだと思います。

          モネ『リアル地獄変』/狂気の天才絵師

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-8 〈ゴシック美術/イタリア〉  ~絵画時代の幕開け~

          美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。 今回は第8弾、初期中世の美術についてです。   * 前回は1100年~1300年代中ごろまでのゴシック美術についてお話をしました。今回はイタリアのゴシックについてお話します。美術の大きな転換点となる回になりますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。 フィレンツェ派とシエナ派の台頭 イタリアでは300年ころから始まったビザンティン様式の影響が長らく続いてました。ですが、1300年半

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-8 〈ゴシック美術/イタリア〉  ~絵画時代の幕開け~

          静かな宣告 DIC川村記念美術館『ロスコ・ルーム』

          変形七角形の部屋には仄かな光源に照らされた巨大な赤褐色の絵画が、それぞれの壁に1点ずつ展示されている。鑑賞者は静まり返った展示室のなかで、未来の墓碑のような絵画にぐるりと取り囲まれることになるのだ。 DIC川村記念美術館にある通称『ロスコルーム』。抽象表現主義の代表的な画家マーク・ロスコの作品だけを展示した、世界に4箇所のみ存在する空間の1つが千葉の佐倉市にある。 『ロスコルーム』にある全7点の《シーグラム壁画》はいずれもひどく陰鬱で沈んでおり、そこには混沌とした精神世

          静かな宣告 DIC川村記念美術館『ロスコ・ルーム』

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-7 〈ゴシック美術〉

          美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。 今回は第7弾、ゴシック美術(1100年中頃~1300年代)についてです。 1100年中頃、フランスから新しい美術のスタイルが生まれました。これがゲルマン民族のゴート族にちなんで「ゴシック」と呼ばれます。   * 余談ですが、日本ではゴシック(Gothic)の短縮形としてゴス(Goth)と使われるこがあります。ですが英語の頭文字のGothはゴート人を指します。また欧米や日本ではGothはゴシッ

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-7 〈ゴシック美術〉

          【雑文】ベラスケスとベーコン 《17世紀と20世紀の絵画の比較》

          上の絵は17世紀の巨匠、ベラスケスの習作。 ベラスケスについては、これまでも何度か記事で触れていますが、彼は画家のなかの画家ともいわれいる美術史史上もっとも重要な画家のひとりです。 17世紀のバロック時代の画家はカラヴァッジオを筆頭にルーベンスやプッサン、フェルメールなど優れた画家がたくさんいましたが、ベラスケスはその中でも突出した存在だと思います。 あくまで私見ですが、17世紀の画家でベラスケスと肩を並べられるのはレンブラントぐらいじゃないでしょうか。 こちらは20

          【雑文】ベラスケスとベーコン 《17世紀と20世紀の絵画の比較》

          【雑文】フェルメールの凄まじすぎる集客力【日記】

          全国を巡回していた「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が、10月から宮城県美術館で開催されています。 私も先日の土曜日に行ってきました。フェルメールというだけで、かなり混雑しそうだとは予想していましたが、美術館の外に行列が並ぶほどの盛況ぶり。 フェルメールではないものの、先月は千葉の美術展に、先々月は東京の美術展に行ってきた私としては、宮城の方が圧倒的に人混みに溢れていることに驚きを隠せませんでした。 しかもフェルメールは1点だけですからね。話題の《窓辺で手紙を読む

          【雑文】フェルメールの凄まじすぎる集客力【日記】

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-6 〈ロマネスク美術〉

          美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。 今回は第6弾、ロマネスク美術(1000年~1100年)についてです。 しかし、そもそもロマネスク美術って何?って話ですよね。 ロマネスク美術とは ロマネスクというのはローマ風建築のことです。そこからロマネスク美術というローマ風建築のような豪華絢爛な中世建築のスタイルをさす言葉がうまれました。その後、建築だけでなく絵画や彫刻、装飾の様式もロマネスク美術と呼ばれるようになったというわけです。 1

          見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-6 〈ロマネスク美術〉