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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史 PART-10【初期ルネサンス】 1400年~1500年

美術といえば「ルネサンス」、なんて言ったら大袈裟でしょうか?
とはいえ「ルネサンス」美術の戦闘力たるや他の時代の美術の比ではない気がするのです。……美術の戦闘力ってなんだよ!ってツッコむのはやめてくださいね。ても、なんか分かる気がしませんか?

レオナルド・ダ・ヴィンチにミケランジェロ、ラファエロ……もう、誰もが知ってる巨匠が続々と現れた時代です。

ルネサンス三つの時代

ブルネッレスキ像

非常に聡明で機知に富んだ人物で遠近法などを発明。建築の仕事を職人から建築家という知的職業へ押し上げた偉人として名高い。


というわけで今回から第3回にわたってルネサンス美術のお話をさせていただきます。なんで3回かっていうと、ルネサンスは大きく三つの時期に分けられるんですね。

Ⅰ.初期ルネサンス(1400~1500年)
Ⅱ.盛期ルネサンス(1500~1530年)
Ⅲ.後期ルネサンス(1530~1590年)

日本でいうと室町時代(戦国、安土桃山時代ふくむ)ころになります。とはいえ、実際のところルネサンスの定義はあいまいで、8世紀くらいにもルネサンスなんて言葉はみられましたし、そのあともチラホラとルネサンスって言葉は登場するんです。

なんで厳密にルネサンスって時代を特定するのは本当は困難なのですが、この記事でははとりあえず、一般的なルネサンスの時代として1400年~1590年をルネサンスの時代としてお話しします。

ルネサンスって何?

ダンテ・アリギエーリの肖像画(サンドロ・ボッティチェルリ)/1495  

叙事詩『神曲』で有名なイタリア最大の詩人。ルネサンス文化の先駆者と言われている。



「ルネサンス(Renaissance)」はフランス語です。「再生」とか「復活」とかいわれますね。

コレ、何を再生させるのかといいますと、当時の文化人が古典古代の本をたくさん読むようになって、!「古典古代の文化を復興させてやるぞ~!」って意識が高まって文化運動がおこった、とされています。

これまでの絵画や彫刻っていうのはキリスト教にしばられて、その表現はキリストは顔を苦痛でゆがめ、マリアは悲しみに目をふせていた。人生って苦しみに満ちてる……この苦しみに満ちた世界を生き抜いたものだけが天国に行ける……そういう厳しさがありました。

ところが、この時代になると「いやいや、ぼくたちは現在を生きてるんだから、もっと自由な人間性をもって死んだ後の世界より今を大事にしましょうよ」って価値観が生まれてきます。

そんなわけで、ルネサンスの時代の作品は、今を生きる喜びに満ちた古典古代、つまりギリシア・ローマ時代の芸術にならいます。さらにそれに加えて写実性の追求と普遍的な美の調和を目指しました。

ルネサンスのはじまり

レオ10世(ラファエロ・サンティ)/1518

レオ10世はサン・ピエトロ大聖堂建設資金のためにドイツでの贖宥状(俗に言う「免罪符」)の販売を認めた。これがルターによる宗教改革のきっかけとなった。


当時、イスラーム勢力に追われたギリシア文化に明るい、たくさんのギリシアの知識人がイタリアに亡命します。さらにフィレンツェの大富豪のメディチ家やメディチ家出身の教皇レオ10世等が芸術家を保護し、スポンサーになったのです。

また他の都市が王侯貴族による独裁だったのに対し、フィレンツェは主権が人民にある共和体制だったため、合理的で現実的、調和や秩序を重んじる風土でした。

こうしたことが要因になってルネサンスはイタリアのフィレンツェから生まれたのです。

ルネサンスの時代は近代科学の幕開けの時代でもありました。天文学や解剖学、幾何学などの科学が美術に大きな影響をもたらします。


建築

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂


建築では壮大なゴシック建築から、幾何学にもとづいたシンメトリーとバランスを重視した合理的な建築が好まれました。古代建築の要素を取り入れつつ、ゴシック建築のような極端に教会の高さだけを競うようなものではない、人間的な規模のものが造られるようになります。

建築史上最高の美しさを誇るといわれるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ブルネッレスキ作)にみられるような「クーポラ(丸屋根)」はルネサンス様式建築の最大の特徴です。


彫刻

ダヴィデ像(ドナテルロ)/1440頃

彫刻では古典彫刻に使われてきた、体重の大部分を片脚にかけて立っている人を描く技法、コントラポストが導入されます。コントラポストによる安定感は彫刻の像が自然に立っているような写実性をもたらしました。


絵画

三位一体(マザッチオ)/1427頃

絵画では遠近図法が取り入れられ2次元である平面に、3次元的な空間が表現されていきます。また明暗法の研究がすすみ、物体や人体の立体感をうみだします。さらに解剖学の知識の発達により、描かれる人体はいよいよリアルさを増していったのです。

マザッチオは初期ルネサンスを代表する画家で、まるで生きているかのように人間を描き当時の人々を驚嘆させました。

他にも初期ルネサンスを代表する画家として、フラ・アンジェリコ、ピエロ・デラ・フランチェスカ、ボッティチェルリなどが有名ですね。

受胎告知(フラ・アンジェリコ)/1440~1445頃


ルネサンスとヒューマニズム

キリストの鞭打ち(ピエロ・デラ・フランチェスカ)/(1368~1470)

ルネサンスは人間性の回復という人文主義(ヒューマニズム)が基本精神となって生まれました。

これまでの教会や神の重圧から脱却し、人間の持つ美や欲望をありのままに認め、人間は能動的で価値あるものだという精神が芸術に大きく影響をあたえたのです。


※参考文献:西洋美術史(美術出版ライブラリー 歴史編)/鑑賞のための西洋美術史入門(リトルキュレーターシリーズ)/Wikipedia

※タイトル画像は「ヴィーナスの誕生(サンドロ・ボッティチェルリ)/1483頃



最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました!