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見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-6 〈ロマネスク美術〉

美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。
今回は第6弾、ロマネスク美術(1000年~1100年)についてです。

しかし、そもそもロマネスク美術って何?って話ですよね。

ロマネスク美術とは


ロマネスクというのはローマ風建築のことです。そこからロマネスク美術というローマ風建築のような豪華絢爛な中世建築のスタイルをさす言葉がうまれました。その後、建築だけでなく絵画や彫刻、装飾の様式もロマネスク美術と呼ばれるようになったというわけです。

1000年末くらいから、聖地エルサレム回復のための十字軍や聖遺物(キリストや聖母マリアの遺品、キリストの受難にかかわるもの)崇拝ブームで巡礼者が増え、ヨーロッパ各地で文化の交流がさかんになります。こうした背景があって修道院を中心にロマネスク美術が形成されていきました。


1.木造から石造へ

ロマネスク建築の最大の特徴は木造天井から石造天井になり、アーケード型の天井が定番のスタイルになったことです。

ダラム大聖堂 1100年頃

そして木造から石造になったことで教会は「燃えない」ということで永遠化され、教会のいたるところに聖書にまつわる人物や動物、植物文様が彫刻されました。

これらの彫刻は建築の構造に合わせて自由にデフォルメされているため、奇妙で野蛮、不自然です。
※建築の枠の形にあわせることを「枠の法則」とよんでいます。


エヴァの誘惑 1130年頃


2.モザイク画からフレスコ画へ

教会内部の壁や天井にはフレスコ画が描かれるようになります。モザイク画よりフレスコ画は細かな表現ができるため、キリストやマリア像の超越的威厳にみちた雰囲気が特徴的だといえるでしょう。

栄光のキリスト 1123年

モザイク画とフレスコ画については以前の記事でも書きましたが、下のように技法に大きな違いがあります。

モザイク画とは

大理石やガラスなどの小さな断片を使って、建築の壁面や床を装飾する美術技法。

フレスコ画とは

まず壁に漆喰を塗ります。その漆喰がまだ「フレスコ(新鮮)」つまり生乾きの状態のあいだに水または石灰水で溶いた顔料で描くのです。

やり直しが効かないので、高度な計画と技術力を必要としますが、一旦乾くと水に浸けても滲まないので保存に適した方法でした。

有名なフレスコ画としてはラファエロの『アテネの学堂』やミケランジェロの『最後の審判』などがあります。


3.写本装飾はイギリスとスペインがユニーク

写本装飾については、イギリスとスペインが独創的なものをつくっていきました。

イギリスでは大陸のカロリング朝の写本をとりいれ、植物文様を使った繊細な作品がみられます。

ウィンチェスター聖書の挿絵 1100年代頃


スペインでは700年ころからイスラム教が入ってきたため、キリスト教とイスラム教が混ざり合った美術が生まれました。これをモサラベ様式といいます。

エル・エスコリアルの黙示録 900年代後半~1000年頃


ロマネスク美術の蔑視と再評価

美術史において、実はロマネスクという用語は19世紀に入ってから使われるようになりました。19世紀ではロマネスクは野蛮で堕落したスタイルとして蔑視されていたようです。20世紀に入ってからロマネスク美術の芸術的価値が見直され、評価されるようになりました。

ちなみにタイトル画像のピサ大聖堂は、ロマネスク美術を代表する建築物の一つ。大聖堂の隣に作られた有名なピサの斜塔は、約200年の歳月をかけて14世紀に完成した大聖堂の鐘楼です。


※参考文献:西洋美術史(美術出版ライブラリー 歴史編)/鑑賞のための西洋美術史入門(リトルキュレーターシリーズ)/Wikipedia


最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました!