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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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2020年8月の記事一覧

表現の自由

表現の自由

「素晴らしい。こんな絵は見たことがない。これは人類が持つ闇と澱を象徴的に表している。これほど、光と影が織り成す心象風景を一個人の視点から世界にまで拡張している絵は近年見たことがない。しかもそれが極めて自然な筆致で再現され、嫌味がない。直線的で静的な集合体であるそれぞれの線が、ある一定の距離を保つと動的で曲線的な生き物と化しているようにも見える。まさにこの絵からは作者である君の彷徨と咆哮が聞こえてく

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羽毛

羽毛

 翼が生えた。

 まさに、天使のような、純白で、ふわふわと気持ちの良さそうな、羽毛だ。

 行きたかった場所がたくさんある。

 さっと飛んでいって、さっと帰ってこよう。

 いろいろな場所を、見て回ろう。

 そう思い立って、まさに、立ち上がったのはいいのだけれど、

 翼が重い。

 そう、これが、この世のものでないように、重いのである。

 たしかに、人間に翼が生えるという事態、自体が、

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【創作詩】きじさん、どこゆくの

【創作詩】きじさん、どこゆくの

びゅーーーー

ひゅーーーー

かぜが なる なる

イチ ニの サンで、

はねを ひろげて

かぜに のる のる

きじさん きょうも おでかけ

どこゆくの

トワイライト・ブルー

トワイライト・ブルー

『夜の帳がおりてくる』

なんて言葉でも言われたりする時間帯。

夕焼けもおさまり、段々と夜をお迎えする儀式が始まろうとしている。一枚一枚薄いカーテンを降ろしていくように、空は青から黒に変わっていく。

この時間帯は何故だかいつも不思議な気持ちになる。

普通に暮らしている町並みがひとときの間、怪しげな雰囲気を纏うから。私の黒目の中にも青色がじわじわと馴染んでいく。

【逢魔が時】

この時間帯だ

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このまま夏は終わるのか

今朝、草むらから♪ルリルリリリリリ~と、trillで虫の音が聞こえてきた。
あれ?もう秋っぽい虫が鳴いてる。え?蝉は?
ここで漸く、ここ数日蝉の合唱をまともに聞いていないことに気付いた。朝早くから、毎日毎日あんなに騒がしかったのに…。
日常に溶け込み過ぎると「あるけどない」状態になってしまう。こんなに実感したのは久しぶり。
「当たり前」として消えていく怖さ。

日中は、まだまだ30度超えで、何処が

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0時の乾燥

目が乾燥している

わだかまりは溶けないまま

わたしは
いつから
こんなふうなのか

肌が乾燥している

諦めを引きずったまま

案外
長生きをするかもしれない

あなたに会いたい

あなたは誰なのか

また眠れないまま
0時を過ぎたよ

カッコ良いことはなくて。

カッコ良いことはなくて。

大変な時代です。

こんな時代を過ごすなんて、
考えもしなかったわけです。

そして僕の会社は、
会議が多すぎるんじゃないかと思うわけです。

しかも時間がかかりすぎじゃないかと思うわけです。

発言者全員の「えーと」と「あのー」をなくすと、

30分位は早く終われるんじゃないかと。

なんでこんなに「えーと」と「あのー」が多いのか。

あれか。

流行語か。

流行語大賞か。
(違います。)

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再度出会う

再度出会う

もう誰も追わない、誰とも知り合わない。
密かに感じていた。
私の心の音と貴方の心の色は此処から見る夜空の向こうの電波塔と繋がって、微弱な電波から流れ出るシンパシーは私の心を占拠しているように感じられていた。
私の心が誰かの空を呼ぶ度、不気味に浮遊する物体は私の胸元から入り込み私の身体に呪いの様なものをかけていく。

静寂の中、月を見上げると、さっき迄其処に浮かんでいた筈の月は消えていた。
公園の隅

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タバコの人

背中まるめ 隠れるように

タバコを吸う 人がいる

手帳を 見つめ 真剣に

肺いっぱい 煙を吸う

なんの邪魔も 来ませんよ

あなただけの 箱ですよ

わたしは 窓を 曇らせる

人生という 小さな箱

1人のいのち 愛しくおもう

ズボンを 腰より 

上で履き

髪は 灰色 

肌は 焼け

たくさんの 皺がある

笑うと どんなお顔ですか

歩くと どんなふうですか

わたしの いのち

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コップの水

人は距離感を間違える生き物だ。満員電車は当たり前で、その空間の苦痛は我慢すべきものとして理解されている。孤独な人の痛みを知らないで土足で踏み荒らしていく人はとても多い。一人一人の身体の距離感や心の距離感はなかなか尊重されない。自分だけの場所をゆっくりゆっくり耕していきたいのに、それさえ許されないことばかりだ。果たして人は、群れることで失うものの行方を目で追っているだろうか。手放してきたことたちの重

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それが撮りたいものかどうかは別として、撮るべきものはどこにでもある。
暗い部屋から明るい向こう側を覗きこむ。
ちょうど窓の外を眺めるように。
窓の向こうの時間はどんな時間が流れているのか。
風景は撮られることで新しい意味を帯びる。