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ゆっくり読みたい創作大賞記事

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時間のあるときに拝読させていただきます!
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#エッセイ

ここにいるよ、ここにいる。

ここにいるよ、ここにいる。

じぶんの歩いてきた道をたとえば
白い地図に点と点でつないでゆけば
どんな線を描くんだろうって時々
夢想してしまう。

でたらめな線を描きながらも、変わらず
そこにいてくれたのは母かもしれない。

結婚もしなかったから。
離婚した母と暮らしてどれぐらいに
なるだろう。

太陽がいっぱいみたいに、わたしにとっては
まぶしいほどいっぱいだ。

昔は喧嘩もしたし、悪態もついてシカトもした。
沈黙戦を決めて

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八年間で習得したのはエレベーターのボタンを押すこと

八年間で習得したのはエレベーターのボタンを押すこと

八年間勤めたホテルでの仕事を終えた。この記事では八年間の出来事や感謝を綴らせてください。

八年で僕はエレベーターの下行きのボタンを押せるようになった

食べさせてもらってばかりの八年間

仕事での出来事を振り返ろうとしているのに思い出すのはあの人やその人が作って食べさせてくれたもののことばかりです。

入社したてのころに同じ時間帯に入っていた定年間際の長井さんは毎朝お弁当を作ってきてくれました。

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白髪染めの呪い

白髪染めの呪い

 寄る年波、という言葉がある。
 幾重にも波が寄せる様子を、年を重ねていくことに例えている言葉だ。
 確かに、波打ち際の海面を見ると、目尻に刻まれた皺のようでもある。

 寄せる波、返す波。
 波はきちんと返ってきてくれるのに、若さというものは、そう簡単には返ってこない。筋トレ、ダイエット、化粧、整形、ありとあらゆる手を使って、押し寄せる波を自力で返すしかない。

 私は体格に恵まれ過ぎていること

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美弱あつめ001  「光る産毛」 ※創作大賞応募作

美弱あつめ001 「光る産毛」 ※創作大賞応募作

草木の蕾や実にびっしりと生えた産毛につい目がいってしまう。

五月初旬のある日、近所の公園で、淡いピンクのバラの花を囲むように、先がツンと尖った固い蕾がいくつもついているのを見た。その様子がまるで、気高く美しいお姫様をお守りする兵士のように思える。

しかしよく見れば、頑強そうな蕾たちには微細な産毛が生えている。勇敢な兵士であっても、思わず立ちすくんだり、体が震えるような恐怖に襲われたりすること

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笑顔の軌跡は続いていく

笑顔の軌跡は続いていく

まるでタイムスリップしたかのように
一瞬のうちに過去の記憶がよみがえる。
写真を手にとり眺めるといつもそう思う。

私は子供の頃から写真を撮るのが
大好きだった。
この景色、その笑顔を
小さな一枚の紙に閉じ込める。
そう思うとワクワクした。
自分以外が撮った写真、例えば会ったことのない祖父が写っている大昔のモノクロの写真を見るのも大好きだ。
一体この表情の向こうにはどんなドラマがあったのだろう? 

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トイレットペーパーへの疑念

トイレットペーパーへの疑念

 私は今、疑念に駆られている。

 最近、お店に行くと、様々なトイレットペーパーを見かけることがある。昔はトイレットペーパーといえば、シングルかダブルくらいしか選択肢がなかったが、最近は本当に種類が多い。

 どこぞのお姫様が使うのか、と思わせるような、花柄プリントのものや、フローラルなどの香り付きのもの。ウォシュレット用の破けない丈夫なものまで、使う人に合わせたラインナップが豊富だ。

 私は実

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茶碗が割れたら、転換の合図/2023.12.05

茶碗が割れたら、転換の合図/2023.12.05

朝から炊き立てのごはんを、お気に入りのお茶碗に盛って食べれるのは、すごく幸せなことだ。

朝ごはんはごはん派だ。
子供のときから、卯ノ花家の朝ごはんの主食はごはんだった。

上京したばかりの頃。
シェアハウスの備品としてあった炊飯器を使うのに抵抗があり、しばらくの間、パンを毎朝食べていた。

しかし、パンはすぐにお腹が空いてしまい、お昼ごはんを多く食べてしまいがちだった。
さらにパンを毎朝食べるの

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ひとり遠足で気づいた、自由とわがままと私の居場所。

ひとり遠足で気づいた、自由とわがままと私の居場所。

肩書きを全て取っ払いたい日もある。

母、妻、役職、飼い主。
全部ぜんぶ取っ払って、肩の荷を下ろして、ただただ自由になりたい。
そういう日って、絶対誰にでもあると思う。

そんなことないよ、それってわがままだよ、なんて言われたら正直落ち込むかも。
それ、わかるよって言われたら、泣けるほど嬉しいかもしれない。

🚶‍♂️

天気は晴れ。

空はどこまでも青く、雲ひとつない、いい天気。
「今日は晴天

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初めての手術!

初めての手術!

2023年8月に人生初めての手術を受けました。

何年か前に、大腸内視鏡でポリープが見つかり、それが初期の大腸癌だったことで、毎年内視鏡を受けることにしました。
発見された初期の大腸癌は、全て切除することが出来まして、いかに定期的な検査が大事であるかを思い知りました。

その後、小さなポリープが見つかったりしたことはありましたが、特に大きな問題はありませんでした。
しかし、2023年の大腸内視鏡を

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味方ができたと嬉しかったのよ

味方ができたと嬉しかったのよ

母が私を産んだのは、何歳の時だったのだろうか。

今年70歳を迎える母。
私が今年44歳になるので、私を産んだのは26歳の時になる。私は長子なので、母のはじめての出産。

母は福岡生まれ福岡育ち。
独身の時は事務職の仕事をしていて、夜にはバーテンの真似事もやっていたと聞いたことがある。お酒が大好きで、友達とワイワイ賑やかに過ごすのが好きな人。

父は徳島生まれ徳島育ち。
インテリアデザイナーをして

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小学生になる息子と電車で12時間、行って帰って見つけた旅の終わり。

小学生になる息子と電車で12時間、行って帰って見つけた旅の終わり。

「とにかく、とおくにいきたい!」

彼は、元気よく言い放った。

本気か?

本気だった。



この春、小学生になる長男に「春休みどこいきたい?」と聞いたら、こんな答えが返ってきた。
「電車に乗って、とにかく遠くに行きたい」と。

彼は鉄道大好きキッズ、いわゆる子鉄である。それも、乗り鉄マシマシだ。
以前、実家に帰省するときに羽田空港までのルートを任せてみたら、1時間20分の道のりに4時間30

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おんなは股関節

おんなは股関節

 かつてNHKの朝の連続テレビ小説で、「おんなは度胸」という作品があった。最近つくづく思うのだが、度胸と同じくらい、股関節は大事だ。

 40代も中盤になってくると、生理前後の体調不良を感じることが増えてくる。何となく調子が悪いという感覚は、積もり積もると、生活に影響が出てくるものだ。

 正々堂々休んでしまうのも手なのだが、洗濯物やホコリ、髪くずを見て見ぬ振りでやり過ごすのは、なかなか忍耐力がい

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パリジェンヌでお願いします

パリジェンヌでお願いします

「じゃあ、パリジェンヌでお願いします」
私は照れのあまりニヤケ顔のまま、そう発した。
「かしこまりました。パリジェンヌですね」
コクッと頷くと、
彼女は私の目をしっかりと見つめ、頷き返した。

えらいことになった!
「パリジェンヌ」でお願いしてしまった!

自分で決断したというのに慌てる。
決断も何も本当はイマイチよくわかってないのに響きの面白さと、
それを発してみたいという欲に負けた。
自分のこ

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