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ビルと緑で『輝く都市』/ル・コルビュジエ

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 皆さんは普段、散歩をしていて、街並みに違和感や疑問を抱いたり、その景観の未来について空想を膨らました経験はありませんか?

 少しでもそう感じたことがあるなら、今日紹介する本は、絶対読んで楽しめるものだと思います!

 ル・コルビュジエの『輝く都市』です。

 そう、あのル・コルビュジエが書いた「本」です!

 もっと知りたいですよね?
 それでは、詳しく見ていきましょう!


ル・コルビュジエについて

 20世紀を代表する、スイス生まれのフランス人建築家です。ちなみに本名は全く違う名前で、ル・コルビュジエはペンネームなんです。

 彼は、近代建築の三大巨匠の一人に数えられ、建築だけでなく、都市計画、家具デザイン、絵画、彫刻など幅広い分野で活躍しました。

 彼の特徴は、機能性と美しさを兼ね備えた革新性、でしょうか。

 現代の建築や都市計画に大きな影響を与えています。

 そして、何より……、

 東京都台東区にある国立西洋美術館は、ル・コルビュジエが設計した唯一の日本の建築物。世界文化遺産に登録されましたね!

ル・コルビュジエが書いた本とは?

『輝く都市』は、1930年に発表された都市計画の理想像を描いた書籍です。当時の都市が抱える問題を解決し、人々がより健康的で効率的に暮らせる未来の都市を提案しています。

輝く都市のコンセプト

 コルビュジエは、当時の都市を「混沌とした、不衛生で非効率的な空間」と捉え、それを根本的に変革する必要性を訴えかけました。

 つまり、より健康的で効率的な都市を実現するための理想的な都市モデルを提案したのですね。

 彼が提案した「輝く都市」は、以下の4つの原則に基づいています。

【機能の分離】
 
都市を「居住」「労働」「余暇」「交通」の4つの機能に分け、それぞれを明確に分離することを提案

高層化と緑化】
  
都市の中心部に高層ビルを建設し、住民を収容することで、周辺に広大な緑地を生み出すことを提案。これにより、都市に自然を取り込み、住民に快適な生活環境を提供することを標榜。具体的には、60階建ての高層ビルを碁盤目状に配置し、その間に公園や庭園を設けることで、緑被率を50%以上にすることを提案

モデュロール】
人間の身体寸法に基づいた測定システムである「モデュロール」を建築や都市計画に適用することを提案。これにより、人間にとって快適で機能的な空間を実現することを目指した。モデュロールは、黄金比フィボナッチ数列に基づいており、建築物の寸法や配置を決定するための基準として用いられた

交通の効率化】
 
自動車中心の交通システムの整備、都市の中心部に自動車専用道路を建設、歩行者と自動車を分離することを提案。また、都市間交通には高速鉄道を導入し、都市間の移動を効率化することを目指した


輝く都市の具体的な姿

コルビュジエは、これらの原則に基づいて、具体的な都市の姿を提案しました。

  • 居住 高層住宅を建設し、住民に快適な住環境を提供する。高層住宅は、光と風を最大限に取り込み、緑豊かな環境に囲まれている

  • 労働 オフィスビルを集中させ、効率的なビジネス環境を構築する。オフィスビルは、機能的で近代的なデザインであり、最新の設備を備えている

  • 余暇 広大な公園や庭園、文化施設などを整備し、住民の余暇活動を支援する。これらの施設は、都市全体に点在しており、住民は気軽に利用できる

  • 交通 都市の中心部には、自動車専用道路を建設し、歩行者と自動車を分離する。また、都市間交通には高速鉄道を導入し、都市間の移動を効率化する。

輝く都市の評価と影響と日本

『輝く都市』は、その革新的な提案から、都市計画に大きな影響を与えました。特に、高層ビルや機能分離の考え方は、世界各地の都市開発に取り入れられました。

 しかし、一方で批判も受けています。高層ビル中心の計画は、コミュニティの形成を阻害し、画一的な景観を生み出す可能性があるという指摘もあります。

 また、自動車中心の交通システムは、環境問題や交通渋滞を引き起こす可能性も指摘されています。むろん、経済的な問題を誘発させる可能性もあるでしょう。マルクスの『ドイツ・イデオロギー』はまさにそのような本だったと記憶しています。

 日本でも高度経済成長期には、高層ビルや機能分離の考え方が積極的に導入されましたね。

例えば、東京都庁舎や新宿副都心などは、『輝く都市』の影響を受けていると言われています。まあ、見た限りもろ影響を受けてますよね。笑

わたしの感想など

 はじめに、出版から百年経っているとは思えない!が第一印象でした。
 都市を「居住」「労働」「余暇」「交通」の4つの機能に分けて考えるという視点は、非常に明快で分かりやすいと感じました。

 現代の都市計画でも、これらの機能をバランス良く配置することが重要視されていますし、日本のどこだろうと、住宅地、工業団地、公園、道路などは、明確に分離されていますよね。また、高層ビルと緑地の共存というアイデアは、都市における自然環境の重要性を再認識させてくれます。
 東京でも、高層マンションが増える一方で、公園や緑地帯の整備も進められており、このバランスを保つことの重要性を感じます。

一方で、『輝く都市』の提案には、現代の視点から見ると疑問を感じる点もあります。
 例えば、自動車中心の交通システムは、環境問題や交通渋滞を引き起こす可能性があり、現代では持続可能な交通システムの構築が求められています。
 また、高層ビル中心の都市計画は、コミュニティの形成を阻害する可能性も指摘されており、郊外都市では、地域コミュニティの活性化が重要な課題となっています。
 さらに、モデュロールによる画一的な空間設計は、多様なライフスタイルに対応できない可能性もあります。
 
 たしかに、ル・コルビュジエの建築は、その革新性と美しさで人々を魅了します。しかし、日本の高度経済成長期の都市開発は、必ずしも美しい結果をもたらしたとは言えませんよね。

 千里ニュータウンは、その象徴的な例と言えるでしょう。広大な敷地に整然と並ぶ高層住宅群は、確かに機能的で効率的な住空間を提供しましたが、同時に、画一的な景観とコミュニティの希薄化を生み出してしまいました。   
 緑豊かな自然環境の中に高層ビルを配置するというコルビュジエの理想は、千里ニュータウンでは実現されませんでした。代わりに、コンクリートの建物が密集し、緑はわずかしか残されていません。住民たちは、プライバシーが確保された住戸に住む一方で、隣人との交流は希薄になり、孤独感を抱く人も少なくなかったはずです。
 この街も、自動車中心の社会を前提として設計されました。しかし、現実には、高齢化が進み、自動車を運転できない住民が増加しています。そのため、買い物や病院へのアクセスが困難になり、生活の不便さを訴える声も上がっていますよね。
 このように、千里ニュータウンは、機能性と効率性を追求するあまり、人間的な豊かさやコミュニティの重要性を軽視した結果、様々な問題を抱えることになりました。

 ル・コルビュジエの理想と現実のギャップは、私たちに多くの教訓を与えてくれます。都市は、単なる住居や仕事の場ではなく、人々が交流し、文化を育む場であるべきです。効率性や機能性だけでなく、美しさや人間らしさも追求することで、真に豊かな都市を創造することができるのではないでしょうか。

 このように『輝く都市』は、その時代背景を考慮しながら読むことで、より深く理解できると思います。コルビュジエが提案した理想都市は、当時の社会状況や技術レベルを反映したものであり、現代の都市計画にそのまま適用することはできません。

 しかし、彼の思想やアイデアは、現代の都市計画を考える上での重要なヒントを与えてくれることは間違いありません。

 スイスじゃなくて日本に住んでいたとしても、『輝く都市』を読んで、理想の都市について考えてみてはいかがでしょうか?

高層ビルと緑の共存、Le Corbusierが思い描いた理想の都市!
この本を読んだあなたの目にはどう映るでしょうか?
感想を教えてくださいね!

【編集後記】
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