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文化が育む「当たり前」の不思議! 『WEIRD「現代人」の奇妙な心理』

 あなたは、周りの人と比べて自分がちょっと変わっていると感じたことはありませんか?

 実は、それはあなたのせいではなく、あなたが育った文化によるものかもしれません。

 私たちが「当たり前」と思っていること、例えば、個人の自由を尊重すること、論理的に物事を考えること、罪悪感を感じること、公平性を重視すること……。

 これらは、世界的に見ると、決して「当たり前」ではないのです。


WEIRDって一体何? なぜそんなに特殊なの?

「WEIRD」とは、Western, Educated, Industrialized, Rich, Democraticの頭文字を取った言葉で、日本語では「西洋の、教育を受けた、工業化された、裕福な、民主主義社会の人々」という意味です。

 本書『WEIRD「現代人」の奇妙な心理』は、このWEIRDな人々が、世界的に見ると、かなり特殊な心理的特徴を持っていることを明らかにします。

例えば、

  • 個人主義 集団の調和よりも個人の権利や自由を重視する。自分の意見を主張したり、自分の好きなことをしたりすることに抵抗を感じない

  • 分析的思考 物事を要素に分解して論理的に考える。感情よりも論理を優先し、物事を客観的に分析しようとする

  • 罪悪感 道徳的な規範から逸脱したときに感じる。悪いことをしたときに、周りの人からどう思われるかよりも、自分自身の良心に基づいて反省する

  • 公平性 公平な分配や手続きを重視する。結果の平等だけでなく、機会の平等も重要視する

  • 道徳的普遍主義 道徳は文化や状況を超えて普遍的に適用されると考える。ある行為が自分の文化では許されても、他の文化では許されないかもしれないという考え方を理解しにくい

 これらの特徴は、私たちにとっては当たり前のように思えますが、世界には、集団を優先する文化、感情を重視する文化、結果の平等を重視する文化など、様々な文化が存在します。WEIRDな人々の心理は、あくまで一つの文化的なバリエーションに過ぎないのです。

 では、なぜWEIRDな人たちはこんなに特殊な心理を持つようになったのでしょうか?

 本書は、その答えを歴史や文化の中に求めます。中世ヨーロッパにおける教会の結婚政策や、産業革命による社会の変化、そして近代の啓蒙主義などが、WEIRDな人々の心理形成に大きな影響を与えたとされています。

 例えば、教会の結婚政策は、家系よりも個人の選択を重視する文化を育み、産業革命は、都市化や工場労働によって、人々を伝統的な共同体から切り離し、個人主義的な価値観を促進しました。

WEIRDな心理は、世界をどう動かしてきた? そして、これからどうなる?

 WEIRDな人々の心理は、現代社会の様々な側面に影響を与えています。

 例えば……、

  • 経済 市場経済や資本主義の発展。個人の利益追求が社会全体の利益につながると考える。WEIRDな人々に特徴的な考え方。

  • 政治 民主主義や人権思想の普及。個人の権利や自由を重視するWEIRDな人々の心理が、これらの思想を支えている

  • 科学 実証主義や客観性の重視。物事を要素に分解して分析的に考えるWEIRDな人々の思考様式は、科学の発展に大きく貢献している

  • 教育 論理的思考能力や批判的思考能力を重視する教育。WEIRDな人々の分析的思考を育む教育システムが、世界中に広まっている

 これらの価値観や制度は、WEIRDな人々の心理的特徴と深く結びついていると言えるでしょう。
 しかし、グローバル化や多文化共生が進む現代社会において、WEIRDな価値観や制度が、必ずしも全ての人々に受け入れられるとは限りません。

 本書は、WEIRDな人々の心理が、今後どのように変化していくのかについても考察しています。
 グローバル化や技術革新が進む中で、WEIRDな人々の心理は、より多様化し、複雑化していくと考えられます。

WEIRDな私たちへのメッセージ

 本書は、私たちWEIRDな人々に、自分たちの心理的特徴を客観的に見つめ直す機会を与えてくれます。私たちは、世界のどこにもいない、特別な存在なのかもしれません。しかし、それは同時に、私たちが自分たちの文化や価値観を絶対視してしまう危険性も孕んでいることを意味します。

 多様な文化や価値観を持つ人々と共存していくためには、自分たちの心理的特徴を理解し、その限界を認識することが重要です。本書は、心理学、歴史学、人類学など、様々な分野の知見を織り交ぜながら、WEIRDな人々の心理を多角的に分析した、刺激的な一冊です。

 自分自身を深く理解したい人、現代社会の根底にある心理メカニズムを知りたい人、そして異なる文化や価値観を持つ人々とより良い関係を築きたい人にとって、必読の書と言えるでしょう。

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