奥村菜依加|Produce One

道東のライター。 日常で起こったどうでもいいことを、 どうでもいい語り口で好き勝手書き…

奥村菜依加|Produce One

道東のライター。 日常で起こったどうでもいいことを、 どうでもいい語り口で好き勝手書きます。

記事一覧

リプトンと記憶

わたしの血液は、たぶんリプトンのミルクティーで出来ている。 知ってます?あの青い紙パックのやつ。 中学生のときに初めて飲んでからというもの、取り憑かれたように飲…

走れない、メロス

とある持病で、時たま病院のお世話になっている。 病院はなんといっても待ち時間が長い。たまにここはネズミさんが活躍する夢の国なんじゃないか、と勘違いしてしまうくら…

アラサーバツイチライター、ペンを取れ

身を刺すような、北海道の冬が来た。 わたしが暮らす地域は寒暖差がとんでもない。そんなもんだから小さな部屋で、灯油ストーブをブラック労働させている。一歩間違えれば…

金髪チート説

9月の終わり、29歳になった。 29歳。 29歳。 ずしん、とくる重さ。 もう来年には30歳になる。 30歳だなんて、遠い遠い未来の話だと思っていた。なんなら、もっと大人な…

ドライブトークと怒りの処理

仲のいい後輩がいる。 前職の元後輩であり、現在進行形でともにプロジェクトを進めるチームメンバーでもあり、一緒にアイスを食べる友人でもある不思議な関係。常に笑顔を…

諭吉と樋口、ときどき野口

怒り、悲しみは第二感情と呼ばれるものらしい。 ざっくりいうと、「こういう風になってほしい」「相手にこうしてほしい」という自分の欲望からくるものらしい。子どもが親…

病院受付、刀剣おばあちゃん

BGMの持つ力は計り知れないんじゃないか、と思う。 どんなにシリアスな映像であったとしても、ひょうきんなBGMがかかった瞬間にコメディに昇華してしまう。逆にめちゃくち…

寡黙な父、暴走す

割とうちは、仲の良い家族だと思う。 私の6倍は喋り散らかすファンキーな母に、すっとぼけている天然で心優しい弟。言葉数の多くない父と、どんなことも斜に構えて笑う私…

居場所としての運転席

車を入れ替えた。それもとんでもないタイミングで。 元々は小さな茶色の軽自動車に乗っていた。 特段車が好きなわけでもないし、とりあえず乗れるならなんでもいい精神。…

8月16日の夜に

【子どもに関する、ちょっと重たい話を含みます。苦手な方は他の記事をご覧くださいませ。どうぞごゆるりと。】 夢を見た。 だだっ広い公園のような、でもそこまで整備さ…

何度も救われる、あいつの話

8/13の午前0時、私はタオルを握りしめ号泣していた。 昔から音楽が大好きだ。 聴くことが好きだし、歌うことも好き。なんなら好きが高じてギターやベース、キーボードやド…

デパコス売り場のジャンヌダルクたち

「いやあ…これ、まずいよ」 「まずいね、このままだと非常に」 これから余命宣告でもするかのような神妙な面持ちで、私の大好きな先輩2人が顔を見合わせていた。 彼女た…

プレゼントは難しい

贈り物が、どうも苦手だ。 基本的に、人になにかをすることが割と好きな性分だと思う。それはなにかをすることが目的じゃなくて、その人が何をしてもらえたら嬉しいか、そ…

運動?なにそれ美味しいの?

死ぬほど運動ができない。 産みの父はサッカー、育ての父はバスケと柔道。母もこれまたバスケ。弟はやたらと足が速い卓球部。直系の家族から従兄弟たちに至るまで、私の家…

にわかルーティン

にわかフリーランスになってから、数日が経つ。 あえてにわか、としているのは、前職の引き継ぎや残してきた仕事がまだ残っているから。体調不良も相まって、チビチビと進…

手術台の上の鯉

2021年の秋、とある手術を受けた。 命に関わるような重篤なものではないが、ちゃんと全身麻酔をしていただくタイプのTHE手術。どうやら地元じゃ出来ない難解なケースだっ…

リプトンと記憶

リプトンと記憶

わたしの血液は、たぶんリプトンのミルクティーで出来ている。

知ってます?あの青い紙パックのやつ。

中学生のときに初めて飲んでからというもの、取り憑かれたように飲んでいる。飲み物を買おうとコンビニに立ち寄るたびに、色々悩んではこいつに手を伸ばす。テスト前も、部活の大会前も、病める時も健やかなるときも、リプトンミルクティーと共にあった。アーメン。

そして齢30を迎えようとしている今も、しっかりと

もっとみる
走れない、メロス

走れない、メロス

とある持病で、時たま病院のお世話になっている。

病院はなんといっても待ち時間が長い。たまにここはネズミさんが活躍する夢の国なんじゃないか、と勘違いしてしまうくらいには待ち時間が長い。きっと診察室という名のアトラクションなんだと思う。すみません、ファストパスってお金で買えますか?

とまあ、今日も今日とて待合室で時計とにらめっこしている。
手持ち無沙汰で仕方ない。

待合室に置いてあった書籍コーナ

もっとみる
アラサーバツイチライター、ペンを取れ

アラサーバツイチライター、ペンを取れ

身を刺すような、北海道の冬が来た。

わたしが暮らす地域は寒暖差がとんでもない。そんなもんだから小さな部屋で、灯油ストーブをブラック労働させている。一歩間違えれば、労基にカチコまれるような労働時間。おかげさまで、ぬくい室温と体温のまま朝起き深夜に眠る生活。

自分の居場所を作るために慌てて借りたこの部屋には、小さなベランダがついている。最近になって、ようやっと重い腰を上げて掃除し、小さな木の椅子を

もっとみる
金髪チート説

金髪チート説

9月の終わり、29歳になった。

29歳。
29歳。
ずしん、とくる重さ。

もう来年には30歳になる。

30歳だなんて、遠い遠い未来の話だと思っていた。なんなら、もっと大人なナオンになっているはずだった。

ところがどうだ、やっていることは19歳の頃の自分となんら変わらない。夜中にタバコを吸いながらゲームしている。強いて言うなら、納期という仕事に追われているくらい。

20代、終わりの始まり。

もっとみる
ドライブトークと怒りの処理

ドライブトークと怒りの処理

仲のいい後輩がいる。

前職の元後輩であり、現在進行形でともにプロジェクトを進めるチームメンバーでもあり、一緒にアイスを食べる友人でもある不思議な関係。常に笑顔を絶やさない4つ年下の彼は、誰が見ても人当たりのいい穏やかな人間だ。

クライアント先への訪問日。
移動に2時間弱かかるため、彼が運転をかって出てくれた。遠距離訪問の時は、いつも気遣ってそうしてくれる。気遣いの権化だ。

今日も今日とて穏や

もっとみる
諭吉と樋口、ときどき野口

諭吉と樋口、ときどき野口

怒り、悲しみは第二感情と呼ばれるものらしい。

ざっくりいうと、「こういう風になってほしい」「相手にこうしてほしい」という自分の欲望からくるものらしい。子どもが親にお菓子を買ってほしいと泣く、これと同じ原理だ。

例えば、子どもの帰りが遅くなって親が怒るなんてケースがあるとしよう。
これは「どこに行っているか心配だった」「事件や事故に巻き込まれたのでは」という不安からくる第一感情、それが怒りという

もっとみる
病院受付、刀剣おばあちゃん

病院受付、刀剣おばあちゃん

BGMの持つ力は計り知れないんじゃないか、と思う。

どんなにシリアスな映像であったとしても、ひょうきんなBGMがかかった瞬間にコメディに昇華してしまう。逆にめちゃくちゃ面白い映像だったとしても、BGMが世にも奇妙な物語であればどうか。途端に「この映像には何か裏があるんじゃ…?」と勘繰ってしまうだろう。ちょっとそんな映像があったら見てみたい。

この1ヶ月間、左顔面の痛みと闘ってきた。

忌々しい

もっとみる
寡黙な父、暴走す

寡黙な父、暴走す

割とうちは、仲の良い家族だと思う。

私の6倍は喋り散らかすファンキーな母に、すっとぼけている天然で心優しい弟。言葉数の多くない父と、どんなことも斜に構えて笑う私。

この4人で食卓を囲めば、ありがたいことに会話が尽きることがない。むしろ尽きてほしい。そのくせ言葉のキャッチボールができないから、ほぼ一方的なボールばかりだ。さながら言葉のドッジボールである。そしてそれを誰も気に留めない。

中1の時

もっとみる
居場所としての運転席

居場所としての運転席

車を入れ替えた。それもとんでもないタイミングで。

元々は小さな茶色の軽自動車に乗っていた。
特段車が好きなわけでもないし、とりあえず乗れるならなんでもいい精神。充てがわれた車にただ乗っていただけである。

しかし、新しくなった車はコンパクトSUV。小柄な私に対して、そこそこ大きい車だ。まさか独り身になるとは思っていなかったから、何をどう考えたって分不相応な買い物。生後1ヶ月の赤ちゃんにMacBo

もっとみる
8月16日の夜に

8月16日の夜に

【子どもに関する、ちょっと重たい話を含みます。苦手な方は他の記事をご覧くださいませ。どうぞごゆるりと。】

夢を見た。

だだっ広い公園のような、でもそこまで整備されてはいない広場。3、4歳くらいの男の子が、私の右手を握っている。声が出ない。彼はそんな私の様子を見て、心配そうに顔を覗きこんでいる。

咄嗟に思った。あの子だと。

2019年の6月、はじめての命を授かった。
何年も不妊治療を重ねた末

もっとみる
何度も救われる、あいつの話

何度も救われる、あいつの話

8/13の午前0時、私はタオルを握りしめ号泣していた。

昔から音楽が大好きだ。
聴くことが好きだし、歌うことも好き。なんなら好きが高じてギターやベース、キーボードやドラムなどひとしきり触ってみたりもした。

中学から高校まで吹奏楽、大学時代は軽音とバンド活動に明け暮れていた。文字通りの音楽バカである。ちなみに、今でもバンドで歌っている。

そんな私が通い詰めていたのが、北海道を代表する音楽フェス

もっとみる
デパコス売り場のジャンヌダルクたち

デパコス売り場のジャンヌダルクたち

「いやあ…これ、まずいよ」
「まずいね、このままだと非常に」

これから余命宣告でもするかのような神妙な面持ちで、私の大好きな先輩2人が顔を見合わせていた。

彼女たちが憂いているのは世界情勢でも明日の夕飯のメニューでもない。
私が持っている化粧品の少なさについてである。

父は理容師、母は美容師という美容一家の娘に生まれたものの、幼い頃から全くもって美容と呼ばれるものに興味がなかった。ただの1m

もっとみる
プレゼントは難しい

プレゼントは難しい

贈り物が、どうも苦手だ。

基本的に、人になにかをすることが割と好きな性分だと思う。それはなにかをすることが目的じゃなくて、その人が何をしてもらえたら嬉しいか、それを考える時間が好きだから。ただの自己満足である。

ただし贈り物、お前は別だ。

ここで言う贈り物、いわゆる「プレゼント」は行為と違ってモノだ。形として残ってしまう。行為であれば一過性のものだから、たとえそれがお節介であったとしても「あ

もっとみる
運動?なにそれ美味しいの?

運動?なにそれ美味しいの?

死ぬほど運動ができない。

産みの父はサッカー、育ての父はバスケと柔道。母もこれまたバスケ。弟はやたらと足が速い卓球部。直系の家族から従兄弟たちに至るまで、私の家族は全員ゴリゴリのスポーツマンで、文化系の人間は自分たったひとりだった。

100m走の最短タイムは20秒。球技もからっきしで、ドッジボールを考えた人をどうにかして裁判にかけられないか本気で考えた。身体測定で褒められるのは前屈のみである。

もっとみる
にわかルーティン

にわかルーティン

にわかフリーランスになってから、数日が経つ。

あえてにわか、としているのは、前職の引き継ぎや残してきた仕事がまだ残っているから。体調不良も相まって、チビチビと進めていたここ数日。申し訳なさで穴があったら入りたい。そのまま3年は寝たい。

そんなぬるっとしたフリーランスの始まりではあるものの、最近感じているのは「ルーティン」の重要性。数年前にラグビーで有名になったアレである。(情報の鮮度が古い)

もっとみる
手術台の上の鯉

手術台の上の鯉

2021年の秋、とある手術を受けた。

命に関わるような重篤なものではないが、ちゃんと全身麻酔をしていただくタイプのTHE手術。どうやら地元じゃ出来ない難解なケースだったらしく、都市部の病院で受けることになった。

手術当日、なんかもうよく分かんないテンションで病院へ向かう。

事前にサインした同意書を看護師さんに渡し、点滴やらなんやら前処置が始まる。「なんか手術みたいっすね!」とかどちゃくそ当た

もっとみる