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運動?なにそれ美味しいの?


死ぬほど運動ができない。


産みの父はサッカー、育ての父はバスケと柔道。母もこれまたバスケ。弟はやたらと足が速い卓球部。直系の家族から従兄弟たちに至るまで、私の家族は全員ゴリゴリのスポーツマンで、文化系の人間は自分たったひとりだった。

100m走の最短タイムは20秒。球技もからっきしで、ドッジボールを考えた人をどうにかして裁判にかけられないか本気で考えた。身体測定で褒められるのは前屈のみである。ただ腕が長いだけじゃねえか。

おかげさまで、小学校の頃の運動会は散々だった。

足の速い弟は常にリレーのアンカーで、運動会過激派の親族は大盛り上がり。親子競走なんてやろうものなら、足の遅い私は母親の小脇に抱えられそのままゴールした。ルールガン無視である。それでええんか。


そんなもんだから、小学生から短大時代に至るまで運動とは無縁の生活を送ってきた。


そんな私が、運動する羽目になった。

数ヶ月前、前職の親睦会?で恐怖の施設に出掛けたからである。


みなさん知ってます?ROUND1っていうんですけど。


あの施設は、運動ができない人間にとってまさに畏怖するべき場所そのもの。ねえねえ、1Fのゲーセンで終わっておこうよ。

とはいえ、全員が私よりも年下の若い男の子たち。まるで修学旅行の如く、楽しそうにサッカーを始めた。端っこで眺めるマネージャーBBA。はてさて、どうしたものか。

移動した先のバッティングで、「やりましょうよ!」と扉の奥へ誘われる。お気遣いありがとう、だけど本当に運動ができないんだ。このままだと、パワプロくんも驚きの三振フルスイングをかましてしまう。


…あれ?


打てる、打てるぞ。
バッティングフォームの不恰好さは置いておいて、少なくとも振り回してるバットにはボールが当たっている。

何度か振り回しているうちに、きちんとした本塁打が打てるようになった。あれ?今まで知っている自分と違う。そんなポテンシャル持ち合わせていないはずだ。

試しにバットをラケットに持ち替えて、テニスを嗜んでみた。

一応、当たる。次第に狙ったところに飛ばせるようになった。それに何が一番驚いたかって、走れる。瞬発力は母の腹の中に置いてきたかと思ったが、一応ボールを追うことはできるようだ。


思ってたのと違う。


今まではずっと、運動なんて1mmたりとも出来ないと思い込んでいた。
実際にそうだったはず。だけど、ふと思い返せば「どうせ出来ないから」と逃げていた自分がいた。

運動だけじゃない、いろんな面でそういう自分、いなかったかい?

知らないうちに、自分で自分の枠を決めてしまっている。

ただの遊びのはずが、ちょっとした自省につながってしまった。
でも気付けたからよかった。ありがとうメンバー、ありがとうROUND1。もうこの先数年来ることはないだろう。


翌日、全身に襲ってきた筋肉痛と闘いながら、ちょっとだけ気持ちは晴れやかだった。


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