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アラサーバツイチライター、ペンを取れ



身を刺すような、北海道の冬が来た。


わたしが暮らす地域は寒暖差がとんでもない。そんなもんだから小さな部屋で、灯油ストーブをブラック労働させている。一歩間違えれば、労基にカチコまれるような労働時間。おかげさまで、ぬくい室温と体温のまま朝起き深夜に眠る生活。


自分の居場所を作るために慌てて借りたこの部屋には、小さなベランダがついている。最近になって、ようやっと重い腰を上げて掃除し、小さな木の椅子を置いた。


朝起きる。
コートを羽織る。
タバコを手に取る。
ベランダの扉を開ける。


雪国の冬、そして朝は信じられないほど寒くて、痛くて、そしてクリアだ。


環境が激変した2023。
文字通り身ひとつになった私に残されたのは、ペンとファイナンスの知識、そして税金だけだった。納付書の金額に目を通すたび、そこに愛はあるんか?と大地真央さんが問うている。

独立してから数ヶ月、なんとか死なない程度に生きてはいる。書くことで生きていけるのは、やっぱり嬉しい。しあわせ。でも頭の隅っこでは「お前、コピーライターとして生きていきたいんじゃないの?」「こんなところでぬくぬくしてていいの?」という妖精が昼夜問わず煽ってくる。うるせえ。わかってる。


そう、私はコピーライターとして生きていきたい。


もちろん、ありがたいことにお仕事はいただいている。それぞれに持てる全力で、フルコミットしてはいるつもりだ。(こればかりは自己評価にしかならない)しかし所詮、大元は別の畑の人間。独学の叩き上げなもんだから、きちんとした体を成しているのか、判断してくれる人は自分とお客様しかいない。そんな中で、はじめてコピーの仕事をいただけることになった。手が震える。


こうなった以上、いよいよ、もう逃げ腰ではいられない。

このペンで仕事をする、という覚悟を持たなければならない。


もちろん、いまの今まで覚悟が決まっていなかったわけではない。ただ、もっと明確でシンプルな覚悟が必要だ。今のままでも、正直それこそ飢えない程度には生活ができる。でも、自分が目指す将来はきっとそこじゃない。そのずっとずっと、先にあると思う。

だから、ここからはぬくい部屋から一歩踏み出して、刺すような冷たい世界に身を投じる必要がある。自分で選択・決断して、そこで修行を重ねてやり抜く。時には吹雪く日だってあるだろうけど、「雪解ける春が来る」と思いながら耐え抜く時間が要る。純粋な気持ちで。クリアな頭で。


そう、ペンだ。

ペンを取れ、自分。


寒空の中、長時間いたからか手が真っ赤にかじかんでいる。
たばこを挟んでいる指が震える。さむっ。
剣山のようになっている灰皿に押し当てて、冷え切った空気を大きく吸う。


さあ、はじまったばかりの人生第二章。
物語は「転」からが面白いでしょ。



あ、ちなみにペンペン言ってましたが、仕事中に使っているのはほとんど鉛筆です。





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