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負けるな、毛穴


先日、親友が結婚式を挙げた。


10うん年来の付き合いで、
彼女のありとあらゆるものを
知り尽くしている私としては感慨深い1日。


大人ともあろうものが
新札への両替も忘れている、
前日にレンタルしたはずのドレスが届かない、
冷蔵庫の牛乳を買い忘れるなどなどの
大きなトラブルも乗り越え、
キャリーケースに大荷物を詰め込み
車へと乗り込む。
移動距離、300km。
遠い。遠すぎて困っちゃうぜでっかいどう。


そしてなんと言っても、灼熱の暑さ。


数日前まで羽織がないと肌寒い温度だったのに、
今となってはインナーさえ邪魔くさい。
すぐさまに脱ぎ捨てたい気持ちに駆られるが、
式場到着まで前科者になるわけにはいかない。


なんとか無事にホテルへチェックイン。
明日の結婚式に向け、用意を整える。


結婚式って、参列者もどうしたって
身支度に気合いが入る。
親友なら尚のこと。

だってさ、普段着ない素敵なドレスに
合うように全身コーディネート
しちゃうじゃない。
ちなみに真っ黒な
パンツドレスにしたんだけれど、レビューで
「160cmでヒール履いてギリギリ」
なんてコメントがあったもんだから、
直前までヒヤヒヤしたよね。
歌舞伎役者のようなお裾になったら
どうしましょうって。
ヨッ、奥村屋!


そして当日、
撮影も仰せつかっていた諸事情により
朝7時に会場入りするため、
5時に起きて顔面工事に神経を研ぎ澄ませる。


なんと言っても、
灼熱のコンクリートジャングル。


問題はアレだよ、アレ。
さあレディースアンドジェントルメン、
声を揃えて!
 

毛穴!!!!!!


ちょっとファンデーションを塗ったとたん、
「どこから来たんですか?」と
問いたくなるくらいに
ありとあらゆる毛穴から汗が出てくる。
もはや滝。


だから事前予習をしまくるタイプの
ワタクシは、メイク上手な友人に
事前レクチャーを乞うておりましたとも。
どうしたら毛穴の息の根を
止めることができるのか。
末代に辿るまで駆逐できるのか。

デモンストレーションは完璧。
当日の仕上がりも上々。
なんなら毛穴に効くというパウダーまで
しっかり買っておいたもんね。
インスタのレビューも良かったもんね。
親友の晴れ姿に見合うような、
できる努力は全てしたぞ。
いざゆかん、戦場へ!!!


式場に入り、撮影が始まってからの数時間。
めちゃくちゃ動くし、めちゃくちゃ暑い。
式場の方々が気を使って
ドリンクを差し出してくれる。
おそらく砂漠の真ん中で
オアシスを見つけた人類は
こんな気持ちだったろう。
しかし当然、毛穴は待ってましたと
言わんばかりに息を吹き返す。
呼んでもいない汗たちが、はいこんにちは!


こまめにお手洗いに行き、
ひたすらに粉をはたく。
これも友人から教わった。
シンプルイズベスト。粉は正義。
今のところ、
想像より悲惨な状況にはなっていない。
このままならいける、いけるぞ!


暑さと毛穴との戦いが小一時間を過ぎた頃、
とうとう挙式の時間を迎える。
にわかにそわそわする参列者たち。
チャペルの重たいドアが、
音楽に合わせて開かれる。
その先には、
純白のウエディングドレスに身を包んだ親友。


瞬間、目から大量の涙が出てくる。
数時間はたき続けたお粉も、
ファンデーションも、
全てを洗い流していった。


うん、やっぱ無理だったわ。



(追記)
親友、改めておめでとう。毛穴の話にしてごめんね。



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