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コインランドリーと葡萄(短篇小説)
夏が終わり、秋も始まらない、その九月七日の午後に、西陽が部屋に入り込み、冷房をまだつけていて窓を開けていないのに、カーテンが少し揺れる、気がする。
君は朝起きた時、季節の変わり目の雨を見ながら、僕に、「洗濯物が溜まっているのよ」とだけ言った。僕は「コインランドリーに行ってくるよ。銭湯の隣の」と言った。君は「そのまま入ってくるの?」と言った。僕は少し迷って、
「それは贅沢すぎるな」
と言った。
さよなら、For Tracy Hyde
ぼくが音楽をよく聴くようになったのは高校一年のころで、訳といえばスマートフォンを買ってもらってサブスクを使えるようになったからというのが大きいのだが、そのとき夢中になったのは渋谷系や東京インディーやネオシティポップと呼ばれる音楽家たちで、聴き始めたころにムーブメントはすでに終わっていた。
オザケンは復活していたけれど、フリッパーズが登場した時の衝撃は知らないし、シャムキャッツは解散して、ヨギーや