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空地 Vol.3 巻頭言

11月3〜5日の日芸祭、11月11日の文学フリマ東京37で頒布する『空地 Vol.3 夏の日、残像』の巻頭言を全文公開いたします。
当日はぜひE-202までお越しください

(なぜ)夏の日、残像(というサブタイトルになったのか)

この雑誌では、毎号テーマを設けてそれに合わせたサブタイトルをつけている。第一号は「二〇二二年・フィクションの現在地」、第二号は「もうチルしている場合じゃない」だった。同人にはテーマに沿ったものを依頼しているわけではないが、彼らの同時代の生活者としての視点というのは、多かれ少なかれテーマに対する回答になっていると感じている。今回の当初のテーマは「快楽の時代、文学の復権」だった。このサブタイトルは、TikTokや可処分時間、アテンション・エコノミーといった「情報の加速主義」とでもいうべき現代において、読者に立ち止まることを強いる文学は生き残ることができるのか? 大江健三郎が没した今、日本文学はどうなるのか?という問いを含んでいた。われながら大仰なタイトルをつけたなと思うが、ハッタリ的なこのテーマを掲げることこそ、文学の復権につながるのではないかという目論見もあった。しかし、原稿がそろってこの巻頭言を書いている今、そのテーマは内容に合っていないのではないかと感じている。「文学の復権」というタイトルを背負うには、ずいぶん個人的な文章ばかりだからだ。それはまったく悪いことではない。多様な個人の在り方が並んでいる、というのはぼくが当初考えていたこの雑誌の理想的な姿でもある。
そこで新しくつけたサブタイトルが「夏の日、残像」である。元ネタはASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲名である。ここに収められたテキスト群を通して浮かんだのは、この言葉だった。

以下に並ぶのは、八人の若者による二〇二三年の夏の個人的な景色/風景/光景とその残像である。

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空地 Vol.3 「夏の日、残像」

 
空地は、日芸と東京芸大の学生による、同時代の生活者のための文芸誌です。このたびの第三号を刊行します。今号のサブタイトルは「夏の日、残像」。八人の若者たちの、見た/見たかった/見たかもしれない、夏の風景/景色/光景を捉えた、小説、評論、詩を掲載しています。

〈収録内容〉
【小説】
「家族小説」松崎太亮
「白塔/散瞳」中村渚
「海藻」安孫子知世
「僕はこの夏、優勝した」今井詩乃
「ヒア・カムズ・ザ・サン」藤原尭大

【評論】
「ねじれたところからぼそぼそつぶやいてみる」壹岐悠太郎
「Gallileo Gallileiと「花」 について」小川彩夏

【詩】
「協和音アニマル」壹岐悠太郎
「とおくへ 他11篇」吉村久秀 


〈データ〉
【タイトル】『空地 Vol.3 夏の日、残像』
【サークル名】空地
【発行日】2023年11月1日
【サイズ】19cm/172p
【定価】700円


・日芸祭2023 『N1asqUerAde』にて頒布
教室:E-202
11月3日(金)、4日(土)、5日(日)
9:30〜20:00(5日のみ18:00終了)
日本大学藝術学部にて

・文学フリマ東京37にて頒布
ブース:L-35
11月11日(土) 12:00〜17:00
入場無料
東京流通センター第一展示場にて


空地
X(旧Twitter)/Instagram/note: @openspace_zine

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