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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2022年6月の記事一覧

Twitterの神々 新聞・テレビの時代は終わった (田原 総一朗)

Twitterの神々 新聞・テレビの時代は終わった (田原 総一朗)

(注:本稿は2011年に初投稿したものの再録です)

 最近大流行のソーシャルメディアである「Twitter」がタイトルに掲げられた本ですが、著者はオールドメディア世代だと目されていた田原総一朗氏。
 その田原氏と、ソーシャルメディアを駆使して活動している三木谷浩史氏・佐々木俊尚氏・津田大介氏・上杉隆氏・堀江貴文氏・夏野剛氏といった面々が語り合います。

 2010年3月、田原氏の看板番組「サンデ

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猪瀬直樹の仕事力 (猪瀬 直樹)

猪瀬直樹の仕事力 (猪瀬 直樹)

 著者は現東京都副知事の猪瀬直樹氏(注:2011年、投稿当時)。
 先般、猪瀬氏の30年近く前の著作「昭和16年の敗戦」を読んだのですが、本書は新刊です。

 第一章は、最近の「時評-改革の現場から」、第二章は「誰も知らなかったコトを見てみたい」という企業ルポルタージュ、第三章は「対談-「日本」と「文明」をめぐって」。それぞれが独立した構成です。

 そのなかで、特に私の興味を惹いたのは第二章。

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日本海海戦の真実 (野村 実)

日本海海戦の真実 (野村 実)

 司馬遼太郎の「坂の上の雲」では、東郷平八郎連合艦隊司令長官・参謀秋山真之らが日露戦争における日本海海戦勝利の立役者として描かれていますが、本書は、当時の海軍極秘資料から、そういった通説?とは別の結論を導き出しています。

 まずは、日本海海戦勝因の一つ、バルチック艦隊通過コースの予測の経緯を辿ったくだりです。
 当時、艦隊幹部の間では、津軽海峡を通るという意見が主流でした。

 第二艦隊参謀長藤

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この人から受け継ぐもの (井上 ひさし)

この人から受け継ぐもの (井上 ひさし)

 「九条の会」関係の岩波のブックレットで寄稿文は読んでいるかもしれませんが、一冊の本になっている井上ひさし氏の著作を読むのは初めてだと思います。
 「吉里吉里人」もそのボリュームに気後れしてまだ挑戦していません。
 そういう点では、井上ひさし氏といえば、私としては、「ひょっこりひょうたん島」をはじめとした放送作家としての活躍が最も身近なものですね。

 さて、本書は井上氏の講演や評論をまとめたもの

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トニオ・クレエゲル (トオマス・マン)

トニオ・クレエゲル (トオマス・マン)

 言うまでもなく、パウル・トーマス・マン(Paul Thomas Mann 1875-1955)といえば、「魔の山」が代表作のドイツのノーベル賞作家です。
 ですが、恥ずかしながら、私は今まで彼の作品は読んだことがありませんでした。

 本書は1903年に発表されたものなので、マンの作品としては比較的初期のものになります。内容は、マン自身の少年から青年期の自画像とも言われています。

 こういった

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折れそうな心の鍛え方 (日垣 隆)

折れそうな心の鍛え方 (日垣 隆)

 日垣隆氏の著作は何冊も読んでいます。舌鋒鋭く、その分持論の周りには少なからず波風が立ってしまうタイプですね。

 本書は、過去においてウツになりかけた著者自身の体験をもとに、それを克服するためのある種「素人療法」を紹介したものです。「素人療法」といっても自ら実践したものだけにリアリティはあります。もちろん全ての方法が全ての人に有効というわけではありませんが、それは当然、いくつかでも役に立てばOK

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フェルメールのカメラ―光と空間の謎を解く (P.ステッドマン)

フェルメールのカメラ―光と空間の謎を解く (P.ステッドマン)

 オランダの画家ヨハネス・フェルメール(1632‐75)は、最近特に日本で人気ですね。
 「フェルメールの青」に代表される神秘的な色合いとともに、その写実的でありながら柔和な筆遣いは、素人目にも素晴らしいと感じます。

 本書は、そのフェルメールの絵の謎に挑んだもの。その謎とは、「彼は、カメラ・オブスクラという光学機器を創作の助けにしたのではないか」という説です。
 カメラ・オブスクラというのは写

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グーグル秘録 (ケン・オーレッタ)

グーグル秘録 (ケン・オーレッタ)

 グーグルに関する書籍はそれこそ山のようにあります。
 私も直近には牧野武文氏による「Googleの正体」という本を読んでみていますが、そちらはコンパクトな入門編。それに対して、本書はアメリカのジャーナリスト、ケン・オーレッタ氏によるオーソドックスなグーグルレポートです。
 グーグル幹部をはじめとした数々の関係者への直接取材に基づいているので、内容は詳細かつ具体的で結構読み応えがあります。

 も

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正岡子規 言葉と生きる (坪内 稔典)

正岡子規 言葉と生きる (坪内 稔典)

 昨年(注:2011年当時)、NHKドラマ化等で話題になっていたので司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読んでみたのですが、本書は、その中にも登場した正岡子規の生涯を彼の俳句や文章を紹介しつつ辿ったものです。

 構成としては「少年時代」「学生時代」「記者時代」「病床時代」「仰臥時代」と年代を追った形になっており、その「学生時代」の章の冒頭に「子規」という名の由縁が語られています。

 結核を病み喀血し

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世界を、こんなふうに見てごらん (日高 敏隆)

世界を、こんなふうに見てごらん (日高 敏隆)

 動物行動学といえば、以前コンラート・ローレンツ氏が著した「ソロモンの指環―動物行動学入門」という本を読んだことがあるのですが、著者の日高敏隆氏はその訳者であり、日本における動物行動学の第一人者でもあります。

 本書は、その日高氏によるエッセイ集です。
 テーマはタイトルのとおり「ものごとの見方」についてです。キーワードは「イリュージョン」。

 スジが通っているからといって真理とは限らない、ち

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これからの思考の教科書 論理、直感、統合-現場に必要な3つの考え方 (酒井 穣)

これからの思考の教科書 論理、直感、統合-現場に必要な3つの考え方 (酒井 穣)

ロジカル・シンキング 本書が取り上げた思考法は、「ロジカル・シンキング」「ラテラル・シンキング」「インテグレーティブ・シンキング」の3つ。
 それぞれについて一章を立てて、分かりやすく解説していきます。

 まずはロジカル・シンキング。
 これについては、世の中それこそ山のような著作がありますが、著者は、「ロジカル・シンキング」を一言でこう表しています。

 そして、その特色をこう捉えています。

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名文どろぼう (竹内 政明)

名文どろぼう (竹内 政明)

 昨年(2010年)末の読売新聞の書評欄で、お二人の方(東京大学史料編纂所准教授本郷和人氏・読売新聞論説副委員長榧野信治氏)が採り上げていたので読んでみました。

 著者の竹内政明氏は、読売新聞のコラム「編集手帳」の執筆者、本書はその竹内氏による古今の名文コレクションです。
 そこで紹介された多くの「名文」の中から、特に私が興味をいただいたものを、以下にいくつか書き記しておきます。

 まずは、こ

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単身急増社会の衝撃 (藤森 克彦)

単身急増社会の衝撃 (藤森 克彦)

標準世帯は単身世帯 今後の日本社会においては、非婚化の拡大による単身世帯の増加、特に「中高年独身男性を中心とした単身化」が急速に進むと予想されています。著者の推計によると、総世帯数に占める単身世帯数の割合は現在の31.2%から2030年には37.4%になるとのこと。

 本書は、具体的統計データをもとにした状況の紹介とそれを踏まえた対応策を論じたものです。

 2005年の全世帯に占める世帯類型別

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考えない練習 (小池 龍之介)

考えない練習 (小池 龍之介)

思考病 著者の小池龍之介氏は月読寺の住職。カルチャーセンタ等での坐禅指導や著作活動にも積極的です。

 この本、「考えない練習」とは面白いタイトルですね。著者の問題意識の原点は、考えすぎることの弊害です。

 こういった心の状態を、著者は「思考病」と名づけています。

 本書で著者が紹介するのは、五感を研ぎ澄ませて実感を高めることによって「思考」という脳の勝手な活動を調教するための方法です。
 五

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