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グーグル秘録 (ケン・オーレッタ)

 グーグルに関する書籍はそれこそ山のようにあります。
 私も直近には牧野武文氏による「Googleの正体」という本を読んでみていますが、そちらはコンパクトな入門編。それに対して、本書はアメリカのジャーナリスト、ケン・オーレッタ氏によるオーソドックスなグーグルレポートです。
 グーグル幹部をはじめとした数々の関係者への直接取材に基づいているので、内容は詳細かつ具体的で結構読み応えがあります。

 もちろん、紹介されているエピソードのかなりのものはすでに人口に膾炙されているものですが、中には、改めてなるほどと思うものもありました。
 それらの中から、いくつか覚えに書き記しておきます。

 まずは、グーグルを「単なる検索プラットフォーム開発会社」から「新たな広告ビジネスの巨人企業」に脱皮させるトリガーとなったアドワーズ、アドセンスについてです。

 アドワーズのコンセプトはオーバーチュアのアイデアの亜種でしたが、アドセンスは全く別物と言えます。この点について、検索ビジネスの大物ダニー・サリバン氏がUSAトゥデーに語ったコメントです。

(p144より引用) 「アドセンスは基本的に、ネットを巨大なグーグル専用の掲示板に変えてしまった。グーグルは実質的に、あらゆる人の制作したコンテンツを、自らの広告を配信する場所にしてしまったのだ

 グーグルは、超巨大企業になった現在においても、創業者であるラリー・ペイジと・サーゲイ・ブリンの考え方が絶対的な価値観として墨守されています。
 「邪悪になってはいけない」というグーグルのエンジニアに信奉されているスローガンもそのひとつです。が、このスローガンが表している姿勢は、自己規制のようでもありますが、他方、「ある種の傲慢さ」も含んでいます。
 Gメールの開発でコンサルタントを務めたスタンフォード大学教授テリー・ウィノグラッドのコメントです。

(p157より引用) 「ラリーとサーゲイは、・・・さっさとやってしまえば、他の人々は従来のやり方がそれほど優れたものではなかったことに気づき、後からついてくるはずだと思っているんだ」
 こうした態度を「ある種の傲慢さ」とウィノグラッドは呼ぶ。「グーグルには『自分たちの方が分かっている』という考え方が蔓延している。消費者のためになることを、消費者以上によく理解していると考えることが、正しいとされているんだ」

 創造性溢れるサービスを提供することが、まさに消費者であるユーザーのためだとの考え方は間違ったものではありません。その姿勢は、グーグル上場にあたって証券取引委員会へ提出された資料においても、創業者の意思として表明されています。

(p167より引用) 「グーグルは型にはまった会社ではなく、そうなるつもりもない」
 創造性を失わず、投資家ではなくユーザー重視の姿勢を貫くため、“四半期ごとに市場から寄せられる期待”におもねるつもりはない。配当を払うつもりもない。さらに四半期ごとに業績を予想して“収益予想”を提示する業界のしきたりに従うつもりもない、とした。
 「経営陣が短期目標に振り回されるのは、ダイエットをしている人が30分ごとに体重計に乗るのと同じくらい無意味なことだ」とも言い切っている。

 グーグルは一般株主による経営への介入をはっきりと否定しています。上場後も二人の創業者が圧倒的な支配力をもっており、その他の投資家は、金は出しても口は出すなというわけです。これはこれで、すっきりした考え方でもあります。

 さて、そのグーグル。最近(注:2011年時点)のニュースによると、現CEOのエリック・シュミットは代表権のある会長職に退くとのこと。替わって4月からCEOに就くのはラリー・ページです。サーゲイ・ブリンは、テクノロジーのトップとして現職を続け、ページのCEOの就任によってプロダクトとビジネス部門が合体するようです。

 この新体制で、マーク・ザッカーバーグ率いるフェイスブックの台頭とどう渡り合うのか・・・。

(p492より引用) ビル・キャンベルにフェースブックは脅威かと尋ねると、即座に「多くのユーザーに支持されているプラットフォームを持つ企業なら、どこだって脅威だ。ネットを使う際のスタートページになり得るからね」と答えた。
 グーグルのビジネスモデルは、ユーザーをなるべく早く自社サイトから目的地へ送り出すこと、そしてインターネットの空間を基本的なプラットフォームとして使うことを基本としている。一方、フェースブックをはじめとするSNSは、ユーザーを自社サイトにつなぎとめ、彼らのネット生活の中心、ひいてはネット上の自宅になろうとしているのだ。
 SNSはグーグルの検索サービスを脅かすものになりかねない。

 私は、まだフェイスブックは初心者ですが、「ネット上の自宅」を目指しているというニュアンスは分かる気がします。

(p494より引用) 「グーグルの関心は、コンピュータの頭脳であるCPU(中央演算装置)にしかない。人間の頭脳を無視しているんだ」。それがグーグルの検索を脆弱にしている、とボ-スウィックは指摘する。

 SNSやtwitterと真っ向から対立する“群集の叡智”の否定です。
 まだまだグーグルには注目ですね。



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