Googleの正体 (牧野 武文)
グーグルをテーマにした本はそれこそ数多くありますが、その中でも本書は読みやすいもののひとつでしょう。
グーグル社の内部レポートのような生々しさはありませんが、外から入手できる情報をベースにグーグルビジネスの概要を分かりやすく紹介しています。
そういう点では、目新しい情報というより復習として役に立つという感じでしょうか。
たとえば、最近のグーグルの動きとして注目を集めている「android」や「chromeOS」の位置づけについては、こういう解説を加えています。
著者は、この動きの背景にはandroidやchromeOS搭載による「端末の低廉化効果」が大きいという点にも言及しており、それがグーグルの戦略だと指摘しています。
もうひとつ、グーグルのビジネスモデルの基本である「広告ビジネス」について。
ご存知のとおり、グーグルは「検索」を「広告」と結びつけることにより、大きな市場を開拓しました。しかし、その基本スキームである「検索連動型広告」はグーグルのオリジナルではありませんでした。その先駆けはゴートゥードットコムです。ただ、ゴートゥードットコムは「広告料の多寡」によって表示順を制御していました。
グーグルは広告の表示順を「クリック率」という利用者の意思に依拠させたのでした。
さて、著者は、グーグルが目指している今後の基本ビジネスの方向性は「行動ターゲティング広告」であると指摘しています。
この点は取り立てて斬新なものではありませんから、まさに今グーグルの動きが大きな波紋を広げている点についての頭の整理というレベルです。
ただ、ここでの著者のコメントは、著作権の問題にしてもプライバシーの問題にしても、極めて楽観的に聞こえますね。
旧弊にこだわる必要はありませんが、やはりプライバシーの問題は非常に重要で、決して軽んじられるべきものではありません。プライバシーは「個」の問題であり、一度蔑ろにされたプライバシーは、「個」のレベルでは完全修復できないのです。
プライバシー侵害の蓋然性を意識しながらも、それを無視するという姿勢は許されるべきではないと思います。
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