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Googleの正体 (牧野 武文)

 グーグルをテーマにした本はそれこそ数多くありますが、その中でも本書は読みやすいもののひとつでしょう。
 グーグル社の内部レポートのような生々しさはありませんが、外から入手できる情報をベースにグーグルビジネスの概要を分かりやすく紹介しています。

 そういう点では、目新しい情報というより復習として役に立つという感じでしょうか。
 たとえば、最近のグーグルの動きとして注目を集めている「android」や「chromeOS」の位置づけについては、こういう解説を加えています。

(p110より引用) 今、インターネットをすでに使っている19億人は、グーグルも利用するし他のアプリケーションも利用するが、次の19億人のほとんどの人はすべてをグーグルで済ませてしまうことになるだろう。アンドロイドやクロムOSは、次の19億人をグーグライズする強力な武器となるのだ。

 著者は、この動きの背景にはandroidやchromeOS搭載による「端末の低廉化効果」が大きいという点にも言及しており、それがグーグルの戦略だと指摘しています。

 もうひとつ、グーグルのビジネスモデルの基本である「広告ビジネス」について。
 ご存知のとおり、グーグルは「検索」を「広告」と結びつけることにより、大きな市場を開拓しました。しかし、その基本スキームである「検索連動型広告」はグーグルのオリジナルではありませんでした。その先駆けはゴートゥードットコムです。ただ、ゴートゥードットコムは「広告料の多寡」によって表示順を制御していました。

(p156より引用) ゴートゥードットコムのビジネスの基本は、広告であり、その広告をいかに効率的にするかという観点で、検索エンジンという道具を使った。一方で、グーグルの基本は検索エンジンである。あくまでも精密な検索エンジンを作ることが目標で、その資金を稼ぐために広告というビジネスを利用した。
 インターネットの世界では、利用者指向のサービスは必ず評価されるし、業者指向のサービスは必ず失敗する。ゴートゥードットコムとグーグルの明暗は、当然ともいえる結果だった。
 グーグルはこのとき、大きな教訓を得たに違いない。自分が利用者の立場に立って、どういうサービスが欲しいかを徹底的に考える。・・・
 グーグルが、後にグーグルアースやグーグルマップ、グーグルブック検索などといった、徹底した利用者指向のサービスを発表していく原点はここにある。

 グーグルは広告の表示順を「クリック率」という利用者の意思に依拠させたのでした。

 さて、著者は、グーグルが目指している今後の基本ビジネスの方向性は「行動ターゲティング広告」であると指摘しています。

(p130より引用) 今、グーグルの大きなテーマになっているのは、この文脈ターゲティング広告をいかに行動ターゲティング広告に進化させるかだ。・・・
 ただし、そのためには、・・・消費者個人のプライバシーを知っておく必要がある。

 この点は取り立てて斬新なものではありませんから、まさに今グーグルの動きが大きな波紋を広げている点についての頭の整理というレベルです。
 ただ、ここでの著者のコメントは、著作権の問題にしてもプライバシーの問題にしても、極めて楽観的に聞こえますね。

 旧弊にこだわる必要はありませんが、やはりプライバシーの問題は非常に重要で、決して軽んじられるべきものではありません。プライバシーは「個」の問題であり、一度蔑ろにされたプライバシーは、「個」のレベルでは完全修復できないのです。

 プライバシー侵害の蓋然性を意識しながらも、それを無視するという姿勢は許されるべきではないと思います。



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