正岡子規 言葉と生きる (坪内 稔典)
昨年(注:2011年当時)、NHKドラマ化等で話題になっていたので司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読んでみたのですが、本書は、その中にも登場した正岡子規の生涯を彼の俳句や文章を紹介しつつ辿ったものです。
構成としては「少年時代」「学生時代」「記者時代」「病床時代」「仰臥時代」と年代を追った形になっており、その「学生時代」の章の冒頭に「子規」という名の由縁が語られています。
結核を病み喀血した自分自身を血を吐くまで鳴くと言われるホトトギスに喩えた子規は、爾来、病を供にしつつ日本文学の改革活動に文字通り心血を注いだのでした。
さて本書、子規の様々なエピソードが語られているのですが、その中で特に私の興味を惹いたものをご紹介します。
まずは、子規の代表作のひとつに挙げられる「柿くえば・・・」の句と漱石との関わりを紹介したくだりです。
もうひとつ。子規は、『歌よみに与ふる書』にて古今集を「くだらぬ集にて有之候」と一刀両断に否定しました。
子規が改めて高い評価を与えたのが「万葉集」でした。写実・写生を旨とする万葉集ですが、子規が特に注目したのが、その中でもあまり評価されていない第十六巻にある「滑稽の趣」でした。
これも、子規ならではの視点からの斬新な切り込みですね。
そして、最後に紹介する最も印象的な言葉は、子規が発したものではありません。
早くして身罷った我が子に向かって発した寡黙な母の一言です。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?