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君は夕立つ雲隠れ、僕は踏切を渡った

「学校?楽しいよ!」

そう語った君は自室で一人寂しくこの世を去っていった。
きっと最後の最後で、人生で降りかかるであろう一番の選択をしてこの世を旅立ったのだろう。

もう、君は居ない。

今日もどこかで苦しむはずだった君は居ない。

けど、君が苦しんでいることに気づけなかった、そんな僕は今日も明日もその先も君を思い出して涙する。ふと、街を歩いた日にも学校で暮らす時間もそんな些細な時間にも涙するのだ。

僕は君の代わりに今日も苦しみ続ける。

どこかで見たような模様を浮かべながら月は空を泳いでいる。
僕は今日も今日とて暇つぶしに街を眺めている。我ながら同じことをして飽きないことを褒めてあげたい。いや、ほんとは褒めてほしい。
もう、それは無理だとおもうけど。

緑葉が芽吹いた季節が終わりに向かうと人知れず誰かが息を潜めることがあるらしい。僕はそんな話を信じていなかった。当然だろ?

これまでの人生でそんなことは一度も遭遇したことがなかったのだから・

街には次第に秋風が芽吹き、昆虫たちの鳴き声もささやき声程度になり始めていた。日を追うごとに季節は変化している。去年とは大違いだ。

確か去年の秋は学校帰りの丁度踏切に差し掛かった時、
君は僕に毎度、今年の秋はなかなかこないね、なんて言ってたっけ。
懐かしいな。あ、あともう一つあったな

今年の秋は全然雨が降らないね!

そうやって言い放った後、僕の肩を叩いては足を踏み鳴らし僕よりも早く踏切を渡って早く早くって手招きをする。すると、僕は君がいる踏切を越えた道路まで走り出していたんだ。本当に懐かしく感じるな。
因みに今日、僕は踏切を久しぶりに歩いて渡ったよ。

光が一つ消えてはまた一つ連鎖反応のようにして消えていく。訳も分からず僕は悲しくなった。

窓に映る僕は一体どんな顔をしているんだろう。
きっとひどい顔をしているんだろうな。

いつの間にか人々の営みの光は完全に消えており、僕は一人この街に残されてしまった。ただ響くのは風の音と虫の声と僅かな生活音のみだった。
音と音の合間に虚無が首を絞めていく、今にも気が狂いそうだ。
そして、僕は気が狂いそうな夜の淵に何かを求めて下げた頭をもう一度だけ上げて街を眺めた。

雨だ。

それは、始めこそ緩やかな優しいものであったが数分後には歴史的豪雨に姿を変えていった。そんな雨だった。

僕はその光景をただひたすらにバックに映る街には一切の興味を持たず目前に降り注ぐ誰かの祈りにも似た涙に心を奪われ、自分の頬を伝う雫と窓を伝う滴の違いが分からなくなるころには、僕はすっかり眠ってしまっていた。

微睡の中で降り注ぐ雨の内に君をみたような気がした。
そして、同時にやるせなくなった。
仮にあれが君だとしたら歴史的豪雨を起こすほどの怒りを現世に置いて旅立ったという事だ。

せめて、せめて毎日登下校を繰り返していた僕には言ってほしかった。

僕は本当に何もできなかったのだ。。

もう、きみは居ない、それはわかってる
僕は一生君にあえない、それもわかってる。
僕は君に何もできなかった、それもわかってる。

だけど、何故、君が死んだのか、
どうしても僕には理解できなかった。

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