マガジンのカバー画像

またゆき君の小説シリーズ

38
運営しているクリエイター

記事一覧

【毎週ショートショートnote】バンドを組む残像「アフターイメージ」

【毎週ショートショートnote】バンドを組む残像「アフターイメージ」

「先生、何してるんですか?」

おれはある『特殊な』プロジェクターを用意していた。

「まあ、見てなさい…」

このことはおれが軽音部OBで母校に赴任してきてからの念願であった。

この高校はおれがいた頃は文化祭だけでも、町の高校生、皆熱狂させる程それはもう華々しかった。

が、それも昔の話、今は3年生3人のみで来年新入部員が来なかったら廃部だ。

そこで思い立って軽音部に残る貴重な映像やプロジェ

もっとみる
【毎週ショートショートnote】インドを編む山荘「国編み物語」

【毎週ショートショートnote】インドを編む山荘「国編み物語」

祖母は私が物心ついた頃にはいつも編み物をしていた。

だが『その時』の祖母は鬼気迫る勢いであった。

「こればっかりは私の手には負えないねえ…」
というと祖母は長い間帰っていないという実家の山荘へと向かった。

幼い私も何か『見ておかなくては』という使命感のようなものに駆られていた。

祖母の実家は代々資産家の家系で、その山荘も別荘の一つであった。

「今回の依頼はあの『インド』だからねえ…」

もっとみる
#シロクマ文芸部【ショートショート】風に塗りたい

#シロクマ文芸部【ショートショート】風に塗りたい

風の色ってまあ普通は見たら…というか無色透明に見えるわな。
場合によっては灰色っぽく見えたりもするかもしれないけれど、それは砂ぼこりとか何か混ざっている状態になると思う。
で、これから始まるのは、そんな風に色を塗ってカラフルにしようってな話だ。
どういうことかって?
それは読んでからのお楽しみだ。

おれはこの日も絵を描いていた。別に締め切りとか何か目標・目的があっての絵ではない。
ただ純粋に描き

もっとみる
【ショートショート】ヒトイレ

【ショートショート】ヒトイレ

いきなりだけど、読者のみんなはトイレから話しかけられたことはある?
って言っても、これはアレな話ではなくホラーな話…ではあるかな、どっちかというと。
まあ、誰だってビックリするよな。
用を足すつもりが、
「用があるんだけど…」
みたいに言われたら。
これはそんな話…。用がある人もここからも。

おれはめったに学校のトイレを使いたくなかったんだが、
その日に限って我慢できずに駆け込んだ。
やっと胸を

もっとみる
#シロクマ文芸部【ショートショート】月の番

#シロクマ文芸部【ショートショート】月の番

月の色は今月は青色だった。
だったら、来月…アオイは何色に…いや
何色だっていい。
おれ、いや私だって、そのうちに…月になるのだから。

いつからだか肝心なことは学校では教えてくれないから、正確なことは分からないが、大宇宙時代となって遠くの星まで開拓するのが当たり前になったこの時代いつまでも地球にいるのはもはや置いてけぼりを食っているようなものになっていた。

そこで人材として求められたのが、星に

もっとみる
【毎週ショートショートnote】可愛い子には変化をさせよ「菓子化社会」

【毎週ショートショートnote】可愛い子には変化をさせよ「菓子化社会」

「イイな…って言っても私は…」
私はSNSで都会のカフェの映えるスイーツを見ていた。
こんなの都会に住んでいて、資金力のある大人じゃないと真似できない所業である。
友達と
「生まれた場所ガチャってのもあるよねェ」
なんて、ほざいていたら
クラスの田舎の高校にしてはイケてる女子のクノコが
「ねーねー今度うちの町に待望のコンビニができるんだって!だったら…」

で、コンビニができて早速、クノコがバイト

もっとみる
【ショートショート】声薬

【ショートショート】声薬

いわゆる美声と悪声って紙一重かなと思う。
歌手とかでも特徴のある声の人もいるが歌手になる前は変な声だと言われていたとか。
要は印象に残るかどうかなんだよね。
で、私もそんな印象的な声の持ち主だったと自覚したのは良かったんだけど…。

私は前述の通りというのか変な声ではあると自覚していた。
可愛い声なら良かったんだけど、陰キャだったのもあって、普段はあまり喋らなくて、ボソボソ声で通っていて、でもたま

もっとみる
【小説】ゼニん

【小説】ゼニん

おれたちが支配しているものってなんだろ。
おれたちニンゲンって霊長類とか言って他の動物・生物とかより優れているぜ!みたいな感覚だったと思う。
まあ人類も地球の歴史からしたらずーっと支配してきたわけじゃなかったんだけど、まさかあんな奴らに支配されてしまう時代が来るなんて…。

おれはとある研究者の端くれだったんだが、どういうきっかけだか一大プロジェクトとやらに参加することになった。
今の読者には新札

もっとみる
【小説】日記兄貴

【小説】日記兄貴

あんなことがあった時には心底絶望した。
しかし、絶望の底から救ってくれたのもまた兄貴であった。
感謝してもし足りない。
これからも兄貴にはおれと一緒にそばにいてほしい、なあ…。

冒頭の書き出しだと勘違いされた方もいるかもしれないが、今、おれには兄貴はいない。
今、と言ったのは、いた、というか…。
うう…。
思い出すのもツラいから、また書けたら書こうとは思う。
というか今、兄貴は日記帳として頑張っ

もっとみる
【小説】タイム・トイレ・タイム

【小説】タイム・トイレ・タイム

唐突だが、読者のみんな、トイレってどう思う?
みんなのいろいろな汚いものを流してくれる偉大なもの…
などとぬかしたら過ぎた言葉かもしれないが、いろいろトイレの立場になってもみたら、どうなん?って思うこといっぱいあると思うんだ。
今回はそんな思いになったことがあったのでここに書き残しておくことにする。

前述のトイレに対する考えの話をする前置きとして、賢明なる読者諸君はおじいちゃんおばあちゃんがいて

もっとみる
【小説】タイム・ペンフレンド⑦(終)

【小説】タイム・ペンフレンド⑦(終)

そうしてまた、ヤギの郵便屋は足早に去っていった。
「おばあちゃん…私、帰るわ…」
「そうね…それがいいんじゃない?」
それから、ミレイはどこか不安気な面持ちの通子のそばにいてやりたい気持ちもあったが一言だけ添えた。
「おばあちゃん…手紙書くよ…」
「ありがとう」

そうしてまたミレイに日常が戻った。
家、教室、部活、で、また家。
一見前と変わらないような毎日ではあったが、ここだけは違った。
「ねー

もっとみる
【小説】タイム・ペンフレンド⑥

【小説】タイム・ペンフレンド⑥

「そっか…そのお友達…アサコさんって人…彼氏さんができてたんだ…」
「そう…とまでは良かったんだけど、結婚まで考えてご両親にも挨拶されたみたいだけど、随分と反対されて…断念せざるを得なかったようね…それからご病気にもなったようだから…」
今度はヤギがつぶやいた。
「そうらしいですね…と言っても、あっしは一介の郵便屋、それ以上は介入できなかったので、申し訳なかったですけども…」
「分かったわ…なら今

もっとみる
【小説】タイム・ペンフレンド⑤

【小説】タイム・ペンフレンド⑤

「ねえー、おばあちゃん、手紙どうなったかな?届いたかな?」
「そうねえ…何しろ時間をさかのぼっているとなると、どれくらいかかるのかしらねえ?」
「LINEや電話と違ってかなり待たないとダメかも…なんだね」
「そうよー。でも昔はそういうものだって認識だったからね…」
二人の会話はとめどなく続いた。気がつけばミレイは3日間はミチコの家にいた。
「そうだ!おかーさんにLINEしなきゃ!いくら何でも…」

もっとみる
【小説】タイム・ペンフレンド④

【小説】タイム・ペンフレンド④

「おばあちゃん!ヤギの郵便屋なんて信用できないし、ましてタイムポストなんて…」
「でも、ミレイちゃん。ここに現にいるんだから信用してあげなさい」
そうミチコが言うとミレイはうなずく他なかった。
「最近の子にはついていけないと思ったら、案外固いところもあるのね。そうだそうだ!早速、早速!」
と、まるで乙女の年頃に戻ったかのようなミチコであった。
それからおもむろに便せんや封筒と使い込んだのであろう万

もっとみる