記事一覧
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する。命乞いをしてももう遅い【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第1話「拷問」
「エリク王子様も勇者遊びは、ほどほどに」
リフニア国の王国騎士団長が、俺を憐れんだ目で見るのが許せない。地下牢の拷問部屋で俺はこいつに剣で腹に穴を開けられ、両腕を縛られて天井から吊るされているが、この程度で泣きつくほどやわではないつもりだ。仮にも魔王を倒した勇者なのだから。騎士団長の剣先の血のりはもう乾きはじめているが俺の脇腹の穴から溢れる血はまだ止まらない。
でも、問題はそこじゃない。血
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第22話「処刑の醍醐味」
俺は馬鹿らしくなって鼻で笑ってやる。行くわけないだろ。回復魔法が使えないのは戦闘中だけで、俺にはリディがついていることをこの女は知らないからな。
詠唱団(えいしょうだん)は俺を今、捕らえる気はないのか、結界を張ったままで誰も動かない。騎士たちも距離を維持して俺に毒が回るのを待っている。あー、だるい。息が詰まって苦しいなぁ? なんて言うと思ってるのか? 下っ端の騎士たちですら俺を嘲笑っている。
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第21話「解毒剤」
「無様ね。油断してたんじゃない。ヴァネッサしか目に入ってなかったみたいだし」
人を、えろい男みたいに……。にしても一本取られたかも。アデーラは弓使い。彼女の弓矢は、いつも木製なのは仲間の俺が一番よく知っている。それが、何だあれ。魔弾の弓兵の弓に衣装、と装備一式をそろえている。あれでは遠目にアデーラと視認するのは難しい。
本当に当てたいアデーラの毒矢を隠したというわけか。アデーラは森にいて今
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第20話「破裂魔法」
指を鳴らしてヴァネッサは手に炎を浮かべる。また火あぶりにする気なのか、芸がないな。先にその炎を消しときますか。指で弾く動作をすると、切断魔法で鎖も束縛魔法も即座に切断だ。
「焼け死ね! 色欲勇者」
「骨折魔法っと」
ヴァネッサが投げつけた火あぶりの火種を左手で受けると、軌道がそれる。炎も骨折する。実は骨折魔法は屈折魔法の延長線上にある。ややこしいから骨折魔法でいいや。解放された俺は、群衆
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第19話「火あぶり」
クズの国クズの民クズの魔女。お前らに人の痛みの何が分かる。爪を剥がされたり、指を万力みたいな工具で挟まれたこともある。指の骨が折れるぎりぎりまで耐えたときは、あの腐れ王子にやめて下さいと懇願までしてしまった。
今でもねっとりとした悪寒を思い出せる。俺の周りには敵しかいない。ヴァネッサの勝ち誇った笑顔。憎い、憎い憎い憎い。よし、みんな処刑しよう。そう決意することで溜飲が下がる。仲のいい友として
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第18話「公開処刑」
「出たぞ! 元勇者だ!」
俺は元は陰キャラだったが、もうテンションもアドレナリンも止められないし自分で制御できないくらいの快楽主義に走り出している。熱い声援に応えるべく、俺はダンス前にお辞儀をする。
魔弾の弓兵。その名の通り、弓兵であり、矢に魔法を付与して放ってくる、付与魔法の使い手。炎に、氷に、雷に、属性攻撃のフルコースをもらい受けることになるが、「白(ルス)隼(ティコルス)のブーツ」装
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第17話「処刑場」
「サックサクだな!」
ディルガン国の衛兵、数百人全部を処刑(サク)るのに、ものの十秒。少しかかりすぎたか。瞬殺じゃ、ちゃんと恐怖を感じ取ってくれたか分からないからなぁ。人差し指についた血を舐めて味を確かめてみよう。
混ざり合った誰かの血は、喉に通るときにつっかかる苦い感じがする。飲んだことないけど臭いで分かった。きっとこれはビールの味に近しい何か。吐きそうだ、無理。
今ので確実に分かっ
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第16話「矢文」
アデーラの思い出を反すうすると、自分の舌がざらざらしてくる。今一番、処刑(サク)りたい女だ。でも、森に入る前に気合を入れとかないと。小さな村で村人、つまり一般人の家に土足で上がる。寝室にお邪魔してかわいい女の子だと分かった瞬間に抱きつく。
でも、マルセルにも似てない女じゃ、なかなか腰が入らないな。女にあんあん言わせて喜んでもらえたのなら、勇者としても本望だ。
家をあとにして、サクサク歩い
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第15話「森のエルフのアデーラ」
アデーラは俺が最初に旅をしたときにリフニア国に一番近い森に住んでいたから、ドロテの次に仲間になったんだ。森のエルフが何でアデーラ一人だけで、残って川を守っていたのかなという疑問はまあ、美人だから仲間にしてから聞けばいいやと軽い気持ちで森からつれ出した。
アデーラの本性については本人の口から、恥ずかしげもなくつらつらと話すのを聞いた。アデーラがほかのエルフを全て追い出したんだ。
「私が一番き
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第14話「王国会議」
リフニア国ヘイブン宮殿内部、会議室。リフニア国の国王オーバンは、もう会議をはじめていた。僕という王子を差し置いてはじめるとは、父上は相変わらず僕に似て傲慢で自分勝手だ。お付きの者に手押し車椅子に乗せられてようやくやってきたというのに。
僕を見て父上は話を遮られたという、あからさまな顔をする。
「もう横になっていなくていいのか、エリク」という言葉も形だけだ。
「父上、僕の心配はいりません」
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第13話「伝言」
怒りは最高潮! ぼこぼこタイム。おら、食らえ! おら! 割愛。だってグロシーンだし。
おっさんを何度も殴ることに抵抗感はないが、最初に切断魔法を使ったのがいけなかったのか、かなりのショック状態で無反応なのが心配だ。腕がなくなったショックと、出血多量によるショック症状で、不死鳥のグローブの上からでも返り血が手に染み込んでくるぐらい殴ったというのに、喘(あえ)いでもくれないなんて。
俺は肩で
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第12話「決闘?」
お兄様は怒りに身を任せて剣を振り下ろしてきた。感嘆すべきは、怒りに身を任せども形式上は決闘を貫く意思があること。でも俺は暑苦しいのが嫌いなんだ。
さっと、身をかわす。今度は横から薙(な)いでくる。使うつもりがなかった剣を逆手(さかて)持ちで握ってこれを防ぐ。我ながら不本意な戦いだ。俺は勇者業をとっくに辞めている。正式に処刑勇者と名乗ろうか。趣味だし。
再び俺に向かってくる切先。突き。俺の漆黒
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第12話「お兄様!」
マルセルの兄と名乗るおっさん騎士は側近モルガンに指示を出し、剣を一本投げて寄こしてきた。何の属性もない至ってシンプルな剣。ゴーレムとかには普通に折られるやわな代物だけど、人同士で斬り合うには十分に凶器だ。
こいつが俺のお兄様になっていたかもしれない人物か。そう思うと親近感が湧くと同時に、そうならなかったことに対して幸福を感じた。まだ喉元に刃先の冷たさを思い出すことができる。処刑(サク)る意欲
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第11話「包囲網」
リフニア国の国家魔術師は、三種類ある。回復魔法専門の魔術師である国家回復師。攻撃魔法などを得意とする戦闘魔術師。そして、詠唱団(えいしょうだん)。勇者の召喚を行ったのも彼らだ。召喚獣や使い魔など、召喚と詠唱を専門にしている。長期に渡ってバリアを張ったり、建築魔法などの雑多な魔法も扱う。
ふはは。詠唱団の輪の中かぁ。もう空間隔離魔法で閉じ込められている。詠唱が聞こえますね。お経みたい。ごめん。
長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第10話「俺の回復師」
温かい言葉を浴びて、温かい言葉を浴びせた。
ある日の俺。魔物や魔族に爪や剣で傷つけられて、傷だらけの俺の頬をマルセルの艷(つや)やかな指が触れる。放たれた淡く白い光と、体温と同じ温もりが感じられる上級回復魔法であっという間に癒えていく。俺はマルセルの小さい手が好きだから、回復魔法小で、傷を一つずつ癒やして貰いたいなあ、って冗談を言いう。
「馬鹿じゃないの。そんなことして手遅れになって、出血