影津(かげつ)

プロ作家志望の人。夢はでっかく。デビューできるまで書くことをやめない。死ぬまで書く人。…

影津(かげつ)

プロ作家志望の人。夢はでっかく。デビューできるまで書くことをやめない。死ぬまで書く人。作品は主に20代向けダークファンタジー。ライト文芸、ラノベ、なろう系。 作風が流血表現多めで、戦闘シーンは泥臭い。人を選ぶ作品が多いので、刺さる人に刺さるらしい。

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長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する。命乞いをしてももう遅い【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第1話「拷問」

「エリク王子様も勇者遊びは、ほどほどに」  リフニア国の王国騎士団長が、俺を憐れんだ目で見るのが許せない。地下牢の拷問部屋で俺はこいつに剣で腹に穴を開けられ、両腕を縛られて天井から吊るされているが、この程度で泣きつくほどやわではないつもりだ。仮にも魔王を倒した勇者なのだから。騎士団長の剣先の血のりはもう乾きはじめているが俺の脇腹の穴から溢れる血はまだ止まらない。 でも、問題はそこじゃない。血を失うことより俺を攻める変態王子の方が厄介だ。騎士団長を後ろに下がらせてから、嬉

    • 窓のチャンネル〜死ぬほどじゃないけど幸せでもない〜

       機械音と点滴の雫。ここの空気は薄い鉛色。上あごに乾燥した舌が張りつく。窓からひまわり畑が見える。音もたてずに重たい頭を振っている。黄金の花びらと黒い種、黄緑色の葉。数千のひまわりが僕を見て首を傾げている。  こっちを見るな。消え失せろ。どうしてへらへら笑っている。今は冬なんだから。もっと殺風景な風景を見せてくれよ。   Blind VIEW ver2.5 風量 小  気候 穏やかな太陽の日差しの夏 時間 正午  僕は肌寒くなった腕をさすって長袖を伸ばすつもりで指でま

      • 長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第22話「処刑の醍醐味」

         俺は馬鹿らしくなって鼻で笑ってやる。行くわけないだろ。回復魔法が使えないのは戦闘中だけで、俺にはリディがついていることをこの女は知らないからな。  詠唱団(えいしょうだん)は俺を今、捕らえる気はないのか、結界を張ったままで誰も動かない。騎士たちも距離を維持して俺に毒が回るのを待っている。あー、だるい。息が詰まって苦しいなぁ? なんて言うと思ってるのか? 下っ端の騎士たちですら俺を嘲笑っている。びびって逃げ帰れとでも言われているみたいだ。冗談じゃない。  一秒ごとに槍で突

        • 長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第21話「解毒剤」

          「無様ね。油断してたんじゃない。ヴァネッサしか目に入ってなかったみたいだし」  人を、えろい男みたいに……。にしても一本取られたかも。アデーラは弓使い。彼女の弓矢は、いつも木製なのは仲間の俺が一番よく知っている。それが、何だあれ。魔弾の弓兵の弓に衣装、と装備一式をそろえている。あれでは遠目にアデーラと視認するのは難しい。  本当に当てたいアデーラの毒矢を隠したというわけか。アデーラは森にいて今頃は匿われていると踏んでいたのに。読み違えたという不覚より、あの女が馬鹿女だった

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        長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する。命乞いをしてももう遅い【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第1話「拷問」

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        • 創作
          10本
        • 書き方
          12本
        • 創作コミュニティ
          2本
        • 影津(かげつ)の短編小説集
          2本
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          1本
        • 電子出版
          4本

        記事

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第20話「破裂魔法」

           指を鳴らしてヴァネッサは手に炎を浮かべる。また火あぶりにする気なのか、芸がないな。先にその炎を消しときますか。指で弾く動作をすると、切断魔法で鎖も束縛魔法も即座に切断だ。 「焼け死ね! 色欲勇者」 「骨折魔法っと」  ヴァネッサが投げつけた火あぶりの火種を左手で受けると、軌道がそれる。炎も骨折する。実は骨折魔法は屈折魔法の延長線上にある。ややこしいから骨折魔法でいいや。解放された俺は、群衆に礼儀正しく処刑ショーのはじまりを告げる。 「処刑をお楽しみいただきたい皆様!

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第20話「破裂魔法」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第19話「火あぶり」

           クズの国クズの民クズの魔女。お前らに人の痛みの何が分かる。爪を剥がされたり、指を万力みたいな工具で挟まれたこともある。指の骨が折れるぎりぎりまで耐えたときは、あの腐れ王子にやめて下さいと懇願までしてしまった。  今でもねっとりとした悪寒を思い出せる。俺の周りには敵しかいない。ヴァネッサの勝ち誇った笑顔。憎い、憎い憎い憎い。よし、みんな処刑しよう。そう決意することで溜飲が下がる。仲のいい友として微笑むこともできるぞ。嬉しいね。二回も裏切ってくれて。 「何をそんなに笑ってい

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第19話「火あぶり」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第18話「公開処刑」

          「出たぞ! 元勇者だ!」  俺は元は陰キャラだったが、もうテンションもアドレナリンも止められないし自分で制御できないくらいの快楽主義に走り出している。熱い声援に応えるべく、俺はダンス前にお辞儀をする。  魔弾の弓兵。その名の通り、弓兵であり、矢に魔法を付与して放ってくる、付与魔法の使い手。炎に、氷に、雷に、属性攻撃のフルコースをもらい受けることになるが、「白(ルス)隼(ティコルス)のブーツ」装備の俺はそれらを全部、ダンスでかわせる。  足先をかすめる矢。燃える前に踏みつ

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第18話「公開処刑」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第17話「処刑場」

          「サックサクだな!」  ディルガン国の衛兵、数百人全部を処刑(サク)るのに、ものの十秒。少しかかりすぎたか。瞬殺じゃ、ちゃんと恐怖を感じ取ってくれたか分からないからなぁ。人差し指についた血を舐めて味を確かめてみよう。  混ざり合った誰かの血は、喉に通るときにつっかかる苦い感じがする。飲んだことないけど臭いで分かった。きっとこれはビールの味に近しい何か。吐きそうだ、無理。  今ので確実に分かったのは、俺の味覚が血や悲鳴に対して異様に敏感なことと、実際の味と違うものの味がす

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第17話「処刑場」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第16話「矢文」

           アデーラの思い出を反すうすると、自分の舌がざらざらしてくる。今一番、処刑(サク)りたい女だ。でも、森に入る前に気合を入れとかないと。小さな村で村人、つまり一般人の家に土足で上がる。寝室にお邪魔してかわいい女の子だと分かった瞬間に抱きつく。  でも、マルセルにも似てない女じゃ、なかなか腰が入らないな。女にあんあん言わせて喜んでもらえたのなら、勇者としても本望だ。  家をあとにして、サクサク歩いているとリディが漆黒の宝石から飛び出て、俺の鼻先までくる。もしかして宝石の中から

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第16話「矢文」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第15話「森のエルフのアデーラ」

           アデーラは俺が最初に旅をしたときにリフニア国に一番近い森に住んでいたから、ドロテの次に仲間になったんだ。森のエルフが何でアデーラ一人だけで、残って川を守っていたのかなという疑問はまあ、美人だから仲間にしてから聞けばいいやと軽い気持ちで森からつれ出した。  アデーラの本性については本人の口から、恥ずかしげもなくつらつらと話すのを聞いた。アデーラがほかのエルフを全て追い出したんだ。 「私が一番きれいで、一番美人。ブサイクには消えてもらおうと思ったから」そう言っていた。  

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第15話「森のエルフのアデーラ」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第14話「王国会議」

           リフニア国ヘイブン宮殿内部、会議室。リフニア国の国王オーバンは、もう会議をはじめていた。僕という王子を差し置いてはじめるとは、父上は相変わらず僕に似て傲慢で自分勝手だ。お付きの者に手押し車椅子に乗せられてようやくやってきたというのに。  僕を見て父上は話を遮られたという、あからさまな顔をする。 「もう横になっていなくていいのか、エリク」という言葉も形だけだ。 「父上、僕の心配はいりません」  父上は鼻を鳴らす。僕が勇者を拷問したのが全ての始まりだと、腹を立てているわ

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第14話「王国会議」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第13話「伝言」

           怒りは最高潮! ぼこぼこタイム。おら、食らえ! おら! 割愛。だってグロシーンだし。  おっさんを何度も殴ることに抵抗感はないが、最初に切断魔法を使ったのがいけなかったのか、かなりのショック状態で無反応なのが心配だ。腕がなくなったショックと、出血多量によるショック症状で、不死鳥のグローブの上からでも返り血が手に染み込んでくるぐらい殴ったというのに、喘(あえ)いでもくれないなんて。  俺は肩で息をしている。疲れたからじゃない。心の隙間が埋まらない焦りを感じる。 「詠唱団

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第13話「伝言」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第12話「決闘?」

           お兄様は怒りに身を任せて剣を振り下ろしてきた。感嘆すべきは、怒りに身を任せども形式上は決闘を貫く意思があること。でも俺は暑苦しいのが嫌いなんだ。  さっと、身をかわす。今度は横から薙(な)いでくる。使うつもりがなかった剣を逆手(さかて)持ちで握ってこれを防ぐ。我ながら不本意な戦いだ。俺は勇者業をとっくに辞めている。正式に処刑勇者と名乗ろうか。趣味だし。 再び俺に向かってくる切先。突き。俺の漆黒色のマントをかすったけど、この辺は余裕でかわすことができる。 「貴様に、マルセ

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第12話「決闘?」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第12話「お兄様!」

           マルセルの兄と名乗るおっさん騎士は側近モルガンに指示を出し、剣を一本投げて寄こしてきた。何の属性もない至ってシンプルな剣。ゴーレムとかには普通に折られるやわな代物だけど、人同士で斬り合うには十分に凶器だ。  こいつが俺のお兄様になっていたかもしれない人物か。そう思うと親近感が湧くと同時に、そうならなかったことに対して幸福を感じた。まだ喉元に刃先の冷たさを思い出すことができる。処刑(サク)る意欲も湧(わ)いてくるというものだ。 「貴様、勇者の剣はどうした? 紛失でもしたか

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第12話「お兄様!」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第11話「包囲網」

           リフニア国の国家魔術師は、三種類ある。回復魔法専門の魔術師である国家回復師。攻撃魔法などを得意とする戦闘魔術師。そして、詠唱団(えいしょうだん)。勇者の召喚を行ったのも彼らだ。召喚獣や使い魔など、召喚と詠唱を専門にしている。長期に渡ってバリアを張ったり、建築魔法などの雑多な魔法も扱う。  ふはは。詠唱団の輪の中かぁ。もう空間隔離魔法で閉じ込められている。詠唱が聞こえますね。お経みたい。ごめん。俺、成仏してやらないからよろしく!  でも、団体様で来られたということは、個人

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第11話「包囲網」

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第10話「俺の回復師」

           温かい言葉を浴びて、温かい言葉を浴びせた。  ある日の俺。魔物や魔族に爪や剣で傷つけられて、傷だらけの俺の頬をマルセルの艷(つや)やかな指が触れる。放たれた淡く白い光と、体温と同じ温もりが感じられる上級回復魔法であっという間に癒えていく。俺はマルセルの小さい手が好きだから、回復魔法小で、傷を一つずつ癒やして貰いたいなあ、って冗談を言いう。 「馬鹿じゃないの。そんなことして手遅れになって、出血多量で死んでも文句言わないでよね」  マルセルに撫(な)でられるにはもってこい

          長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第10話「俺の回復師」