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高井宏章 雑文帳

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徒然なるままに。案外、ええ事書いてます
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#エッセイ

焼け残った大銀杏

焼け残った大銀杏

あけましておめでとうございます。
きょうはこれから近所の飛木稲荷神社に初詣に行きます。飛木は「とびき」と読みます。

1年前の初詣の際に感じたことを、ご縁があって、昨年3月に成田山名古屋別院大聖寺の機関紙のコラムに寄稿しました。
以下、新年のご挨拶にかえて転載いたします。写真は昨秋撮影したもの。

焼け残った大銀杏日本人にとって、3月は鎮魂の季節です。東日本大震災から10年の今年(2021年)は、

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言葉を惜しむからこそ、語れること

言葉を惜しむからこそ、語れること

アゴタ・クリストフの『悪童日記』を再読している。この30年、何度読み返したか分からない私のオールタイムベストのひとつだ。

この作品がなぜこれほど自分に響くのか、理由のひとつははっきりしている。
文体の「縛り」だ。

「縛り」が生む力

主人公である双子の日記という形式をとるこの小説は、独特の文体で綴られる。それは双子の少年たちの「作文のルール」でもある。

描写のみの乾いた単文の積み重ねと掌編を

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ふたつの誕生日と、もうひとつの人生

ふたつの誕生日と、もうひとつの人生

今日3月27日で、私が生まれてから49年が経った。

「フツーに『誕生日』って書けよ」とイラついた方。
一息ついて、ま、ちょっと聞いてください。

今日は誕生日ではないのだ。

私の誕生日は4月2日だ。
手元の免許やパスポート、戸籍、住民票、あらゆる公式文書がそれを証明してくれる。
でも、私は確かに今から49年前の早朝に生まれたのだ。

一定年齢以上の人は「ははぁ、アレですか」とお気づきだろう。

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下町動物園は、やっぱりカオス

下町動物園は、やっぱりカオス

下町がカオスな緑の楽園なのは皆さん、もうご存知の通りである。

オアシスは、動物の憩いの場でもある。
錦糸町、押上あたりを散策する下町写真集シリーズ第3弾は動物園。
第1弾の昭和な街並みはこちら。

お供はこの子です。今回はほとんど単焦点の方で撮りました。

では、ゆるりと。

タヌキのご用心皇居まで地下鉄で20分というロケーションなのに、下町にはたくさんタヌキがいる。

日本全国津々浦々にいるの

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Wikipediaの寄付圧を「タダ」でかわした小さな奇跡の連携プレー

Wikipediaの寄付圧を「タダ」でかわした小さな奇跡の連携プレー

みなさん、きょうもWikipedia、使ってますか?
私は「本業では使わないが、noteでは使いまくる」派です。
そうすると、出ますよね、最近、また、アレが。

これ。
鋼の意思で無視してスクロールダウンすると。

スクロール先に、

「スクロールせずにご覧ください。」

って、「貴様を見てるぞ」という威圧感。
もうね、21世紀の日本は自宅PCのスクロールまで筒抜けな監視社会なワケですよ。

「う

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カメラを持ち歩くと変わるもの 20年ぶりの一眼レフ

カメラを持ち歩くと変わるもの 20年ぶりの一眼レフ

最近、一緒にお出かけする相棒ができた。

ニコンのD3300。
機体が赤いのは私がシャアだからだが、ちょっといきさつがございます。

この子、Wikipediaによると、初心者向けのこんなカメラだそうだ。

D3300(2014年2月6日発売、DXフォーマット)
D3200の後継機。光学ローパスフィルターを非搭載とした2410万画素のCMOSセンサーを採用、一層の解像感向上を図っている。画像処理エ

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大人も、たまにはブランコに乗ろう

大人も、たまにはブランコに乗ろう

子どもの頃、ブランコが大好きだった。
保育園の近くの貝田公園のブランコを、飽きもせずこぎ続けた。
公園で1人でいても、ブランコの上では笑顔だったんだと思う。

後ろに振れて、下りはじめたら、腕とお腹に力を込める。
ぐん、とブランコが加速する。
次の瞬間、重さが消えて、視界いっぱいが空になる。

そう、ブランコは「物理の法則」も教えてくれた。
体を放り出すように勢いよくこげば、束の間の無重力を楽しめ

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「スマホ無き時代」の世界一周旅行記 in 2005

この苦難の英語学習体験記で触れたように、私は2005年12月に唐突な成り行きで海外出張に行った。

以下、ちょっと上記投稿から引用。

それはこんな会話から始まった。

上司「高井、お前、海外出張、行ったことないだろ?」
高井「はい」
上司「年度末で予算が余りそうだから、ぐるっと世界一周してこいよ」
高井「はい?」
上司「英語、できるんだろ?」
高井「はい!」

入社10年ちょいで海外出張はゼロ。

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「語りえないもの」を描いた天才ジョージ秋山 『捨てがたき人々』

「語りえないもの」を描いた天才ジョージ秋山 『捨てがたき人々』

今回は何度か紹介しようと試みては断念してきた作品、『捨てがたき人々』(小学館、幻冬舎)を取りあげる。

ジョージ秋山『捨てがたき人々』 幻冬舎文庫

6月に入り、作者・ジョージ秋山氏が先月亡くなっていたことが明らかになった。この機会に書くしかないだろうと腹を固めた。以下、敬称略で書き進める。

書くのを諦めてきたのは、この作家の作品に正面から向き合うと、「すごい」の先につなぐ言葉が浮かんでこないか

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父のスーパーカブ

父のスーパーカブ

今年80歳になる私の父はバイクの限定解除の免許を持っている。
いい加減にばら撒かれた時代の、いわゆる「おっさん免許」だ。
それでも限定解除は限定解除。私が18歳になって中型免許を取ったときには、「お前と違って、どんなでかいのでも乗れるんだ」と散々自慢された。
ちなみに中型は排気量400ccまでのバイクしか乗れない。

今から30年ほど前、大学2年の時。友人の兄が、放置していたバイクを格安で譲ってく

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2冊の聖書と日本語の自由

2冊の聖書と日本語の自由

文筆家で詩人の真帆沁さんのnoteを愛読している。

クリスチャンとして内面を真っすぐな文章で綴られていて、同じくらいの頻度と熱意で美味しそうな食事を紹介している。

よく読まれているこの投稿のように、心が洗われて食欲がわく一粒で二度おいしい素敵なnoteだ。
「それにひきかえ自分のnoteは……ニントモかんともニンニン」と苦笑しつつ、読んで魂のプチ洗濯に活用している。

さて、私はまったく信仰心

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地上15階のチキンラン

地上15階のチキンラン

人間、50年近く生きていれば、何度か死にかけたことがあるものだ。
私が死に最接近したのは、中学1年の夏だった。
15階建ての高層ビルの屋上から落下しかけたのだ。
それも、たった100円のために。

私が育った名古屋市北西部の町には、日本初の高層アパートがあった。
「又穂団地」がそんな大層な代物とはこちらのブログを見るまで知らなかった。建ったのは1967年らしい。私が生まれる5年前だ。

15階建て

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「描くこと」と生き抜く力

「描くこと」と生き抜く力

新型コロナウイルスとの戦いで、私たちは「おうちにいること」が使命になっている。
この使命が、なかなか大変な人たちがいる。
そして、そうでもない人たちもいる。
ウチの三姉妹は「そうでもない」という部類に入る。
それは、彼女たちが持つ「絵を描く力」と無縁ではないと私は思ってる。
今日はそんなお話を書いてみる。
テーマは「描くこと」とresilience(レジリエンス)だ。

難訳語 resilienc

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「書けば、人生、パッ変わる」 『おカネの教室』刊行2周年 高井浩章 特別インタビュー

「書けば、人生、パッ変わる」 『おカネの教室』刊行2周年 高井浩章 特別インタビュー

お久しぶりです。新聞記者の高井〇章です。
2018年の秋に、他人とは思えないほどよく似た方にインタビューした。

すっかり忘れていたのに過日、唐突に「また取材してほしい」と依頼があった。
『おカネの教室』という本が出て3月16日でちょうど2年なので、記念インタビューを、という提案だ。
本人にとっては記念の日かもしれないが、世間の皆さまにはどうでも良いことだし、もう1年以上重版もかかっていないようだ

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