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小説

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#創作

小3で書いた少年時代の処女作を自分で考察してみた

小3で書いた少年時代の処女作を自分で考察してみた

平成17年度第3学年創作物語集「ゆめの中の話」の中に火花少年の創作物語のデビュー作が記されている。タイトルは「おかしをぬすみに」だ。

僕はこの作品から文章を書くことの楽しさを学んだと思う。そのことは以前この記事にも書いている。

まずはその作品を改めて文字に起こした。

考察タイトルの「おかしをぬすみに」と登場人物の名前が焼肉の部位からして、火花少年は食いしん坊だと思われる。お宝ではなくておかし

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きんつば

きんつば

ホワイトデーのお返しが手作りのきんつばだなんて、花柳くんはやっぱり変わってる。しかも私は老舗和菓子屋の娘。和菓子にはうるさい。

「はい!みっちゃんホワイトデー!きんつばつくってみた!」

屈託のない笑顔で花柳くんはそう言って、私に不恰好にラッピングされたきんつばを渡した。

「すごいやん!自分でつくったん?でもなんできんつばなん?」

「なんでって、そりゃみっちゃん和菓子職人だからさ、みっち

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アーモンド

アーモンド

僕はアーモンド。

桜の花に似ているのに、みんなが綺麗だというのは桜ばかり。

桜より早く咲くのに、桜まだ開花しないねってみんなの頭の中は桜のことばかり。

学校近くの公園に咲くアーモンドをブランコに揺られながら見つめる。桜によく似ていて綺麗なのに、僕らはどうして桜ばかり追いかけるのだろう。

「俺はアーモンド好きだな。だってさ、アーモンドチョコレートうまいもん」

靴を飛ばしながらそう言

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たねまき

たねまき

ある日、たぬきはきつねに出会った。

「きつねさん、何の種をまいてるの?」

「それが何の種か分からないんだよね」

しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。

「きつねさん、このあいだの種は芽が出たかい?」

「それがね、芽が出てこないんだ」

きつねは悲しそうに水やりを続けた。そして別の種をまいた。

「こっちの種はなんだい?」

「これかい?それが何の種か分からないんだ」

しば

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黒猫のヨル

黒猫のヨル

ある春の日、黒猫のヨルは本当に美しいものを探しに旅に出た。

最初に出会ったのは桜だった。

初めて見る満開の桜は圧巻だった。

桜の花びらが散るのを見てヨルは綺麗だと思ったが、どこか寂しくなった。

次に出会ったのは虹だった。

その七色に光る橋を見てヨルは心を躍らせた。

しばらくして虹は消えた。ヨルは寂しかった。綺麗なものがまたなくなった。

次に出会ったのは花火だった。

花火の迫力と美し

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交換日記喫茶店#3選択

交換日記喫茶店#3選択

カツカツと革靴を鳴らすスーツ姿のサラリーマン。ランドセルを担いで駆けてゆく小学生。手を繋いで互いの愛を感じ合う大学生のカップル。
昨日も今日も明日も1日のはじめを告げる朝日が綺麗に思えない。
社会のどこにも属さない僕は、社会の全てが敵に見えた。

大学受験に落ちた。それは初めての挫折だった。中学までは成績優秀だった自分。高校受験はすんなりと上手くいった。どこかに慢心があったのだろう。当然の

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交換日記喫茶店#2幸せのマインドマップ

交換日記喫茶店#2幸せのマインドマップ

「ねえもっと分かる人いないの?」

「申し訳ございません。只今の時間は私しかいなくて…、担当の者なら13時過ぎに来ます」

情けなかった。仕事なのに、仕事にならない。全てが分かるわけなんてないのに、客は店員が全てを知ってると思ってやってくる。でもこんなにたくさんのジャンルを扱ってるホームセンターで全てを網羅するのは困難だし、商品について研修する時間などどこにもない。みんな地道に知識を積み重ねるしか

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