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火花
2022年5月17日 15:00
平成17年度第3学年創作物語集「ゆめの中の話」の中に火花少年の創作物語のデビュー作が記されている。タイトルは「おかしをぬすみに」だ。僕はこの作品から文章を書くことの楽しさを学んだと思う。そのことは以前この記事にも書いている。まずはその作品を改めて文字に起こした。考察タイトルの「おかしをぬすみに」と登場人物の名前が焼肉の部位からして、火花少年は食いしん坊だと思われる。お宝ではなくておかし
2022年3月18日 10:58
ホワイトデーのお返しが手作りのきんつばだなんて、花柳くんはやっぱり変わってる。しかも私は老舗和菓子屋の娘。和菓子にはうるさい。「はい!みっちゃんホワイトデー!きんつばつくってみた!」 屈託のない笑顔で花柳くんはそう言って、私に不恰好にラッピングされたきんつばを渡した。「すごいやん!自分でつくったん?でもなんできんつばなん?」「なんでって、そりゃみっちゃん和菓子職人だからさ、みっち
2022年3月15日 22:44
僕はアーモンド。桜の花に似ているのに、みんなが綺麗だというのは桜ばかり。桜より早く咲くのに、桜まだ開花しないねってみんなの頭の中は桜のことばかり。 学校近くの公園に咲くアーモンドをブランコに揺られながら見つめる。桜によく似ていて綺麗なのに、僕らはどうして桜ばかり追いかけるのだろう。 「俺はアーモンド好きだな。だってさ、アーモンドチョコレートうまいもん」 靴を飛ばしながらそう言
2022年1月19日 11:20
ある日、たぬきはきつねに出会った。「きつねさん、何の種をまいてるの?」「それが何の種か分からないんだよね」しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。「きつねさん、このあいだの種は芽が出たかい?」「それがね、芽が出てこないんだ」きつねは悲しそうに水やりを続けた。そして別の種をまいた。「こっちの種はなんだい?」「これかい?それが何の種か分からないんだ」しば
2022年1月22日 13:34
ある春の日、黒猫のヨルは本当に美しいものを探しに旅に出た。最初に出会ったのは桜だった。初めて見る満開の桜は圧巻だった。桜の花びらが散るのを見てヨルは綺麗だと思ったが、どこか寂しくなった。次に出会ったのは虹だった。その七色に光る橋を見てヨルは心を躍らせた。しばらくして虹は消えた。ヨルは寂しかった。綺麗なものがまたなくなった。次に出会ったのは花火だった。花火の迫力と美し
2021年11月6日 22:18
カツカツと革靴を鳴らすスーツ姿のサラリーマン。ランドセルを担いで駆けてゆく小学生。手を繋いで互いの愛を感じ合う大学生のカップル。 昨日も今日も明日も1日のはじめを告げる朝日が綺麗に思えない。 社会のどこにも属さない僕は、社会の全てが敵に見えた。 大学受験に落ちた。それは初めての挫折だった。中学までは成績優秀だった自分。高校受験はすんなりと上手くいった。どこかに慢心があったのだろう。当然の
2021年3月20日 18:05
「ねえもっと分かる人いないの?」「申し訳ございません。只今の時間は私しかいなくて…、担当の者なら13時過ぎに来ます」情けなかった。仕事なのに、仕事にならない。全てが分かるわけなんてないのに、客は店員が全てを知ってると思ってやってくる。でもこんなにたくさんのジャンルを扱ってるホームセンターで全てを網羅するのは困難だし、商品について研修する時間などどこにもない。みんな地道に知識を積み重ねるしか