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たねまき



ある日、たぬきはきつねに出会った。

「きつねさん、何の種をまいてるの?」

「それが何の種か分からないんだよね」

しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。

「きつねさん、このあいだの種は芽が出たかい?」

「それがね、芽が出てこないんだ」

きつねは悲しそうに水やりを続けた。そして別の種をまいた。

「こっちの種はなんだい?」

「これかい?それが何の種か分からないんだ」

しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。

「きつねさん、種から芽が出たかい?」

「たぬきさん、二番目の種から芽が出たんだ!」

きつねは大喜びで水やりを続けた。

「やったね、きつねさんその調子。花が咲くといいね」

しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。

「きつねさん、芽はどうなったかい?」

「それがね、あの芽は枯れてしまったんだ」

きつねは悲しそうに水やりを続けた。そしてもうひとつ別な種をまいた。

「きつねさん、今度は何の種をまくの?」

「それが何の種かわからないんだよ」

しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。

「きつねさん、三番目の種は芽を出したかい?」

「たぬきさん、もう芽が出て蕾になったんだ!」

きつねは大喜びで水やりを続けた。

しばらく月日が経ったある日、たぬきはきつねを訪ねた。

「きつねさん、蕾から花は咲いたかい?」

「それがね、枯れてしまったんだ」

きつねは悲しそうに水やりを続けた。そしてまた別の種をまいた。

しばらく月日が経ったある日の朝、きつねが走ってたぬきを訪ねた。

「たぬきさん、急いで来て!一番目の種から芽が出たんだ!」

たぬきはきつねに連れられた。

「わあ。芽が出てるね!」

「きつねさん、一番目の種に水をやり続けてたの?」

「そうだよ、ずっと水をやっていたんだ」

きつねとたぬきは二人で座って芽をながめた。

その日の昼、芽は蕾になった。

「わあ、すごい。もう蕾になった!」

きつねとたぬきは声をそろえて喜んだ。

「ねえ、きつねさん、どんな花が咲くんだろうね」

「わからない、どんな花なんだろうね」

二人は日が沈んで暗くなるまで蕾をながめた。

「きつねさん、夜になっちゃったね」

「咲くのは明日かな」

すると、つぼみがむくむくと動き出した。

「なんだ、なんだ?」

むくむく、むくむく、むくむく


ひゅ〜〜

どっかーーん!!

「うわぁあ」

二人は夜空に咲いた大きな花火に息を呑んだ。

「綺麗だね」

夜空に大きな花が咲き、地面に小さな新しい芽が出ていた。


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