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きんつば

 ホワイトデーのお返しが手作りのきんつばだなんて、花柳くんはやっぱり変わってる。しかも私は老舗和菓子屋の娘。和菓子にはうるさい。

「はい!みっちゃんホワイトデー!きんつばつくってみた!」

 屈託のない笑顔で花柳くんはそう言って、私に不恰好にラッピングされたきんつばを渡した。

「すごいやん!自分でつくったん?でもなんできんつばなん?」

「なんでって、そりゃみっちゃん和菓子職人だからさ、みっちゃんの和菓子をつくってるときの気持ちになってみたかったんだよ」

「あんこも自分で炊いたんだよ。きんつばってあんこと薄皮でできたすごくシンプルな和菓子なのに、このあんこと薄皮のバランスがすごく繊細なんだね。和菓子はまるでみっちゃんそのものだ。」

 花柳くんのこういう所が私は大好きだ。あんこよりも甘い花柳くんが私には勿体ないくらい愛おしい。

 花柳くんがつくったきんつばは男の子の手作りにしては充分すぎるくらい上手にできていて、口にした瞬間、優しい甘さが広がっていった。

 これから先も、花柳くんのそばにいて、彼がつくったものが食べたい。彼の繊細さ、優しさ、真心が反映したものたちを感じたい。そんなことを感じながらこの優しい甘さを胸いっぱいに私は閉じ込めた。

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 Twitterでお題を募集してそれにまつわる小説を書くという企画をやってみました。まさかのお題はきんつば。きんつばに対する知見がなく、書くの難しかったです。

 でもこの企画凄くいいなと思ったのは、普段考えたことない1つのものに対して深く考えることができるということです。ひとつひとつの物に対して、色々な哲学があります。その哲学を考えるきっかけになる気がしました。これがキッカケに自分の中に新しい哲学が生まれたり、新しい言葉が生まれる可能性はあると思いました。今回きんつばに対する知見がなく哲学があまりなかったですが、、、またお題募集して挑戦してみたいです。

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