読み物シリーズ 年季の入った本を借りました 内容よりも、紙が茶色くて文字小さく ……読むのくるしい
有吉佐和子には、藝道ものと呼ばれる小説がある。単行本未収録作品を集めた『挿絵の女』(河出書房新社)の『鬼の腕』。老境に入った舞踊家、紫猿が若い青年の精気を吸い取る話だった。初代藤間紫がモデル?。花組芝居の『レッド・コメディ』を観ながら、この小説を思い出していた。
「世界では戦争も起こっているというのに、私は何をやっているんだろう…」などと思うのである、飲み過ぎた日の翌朝に。この虚無感と情けなさは、下戸の人には味わえない感情だと思います。そんな今朝から読み始める本のタイトルは「悪女について」。
有吉佐和子を読み返している。『断弦』『一の糸』のような藝道物は、何度、読んでも飽きない。魔が住んでいるからだろう。単行本未収録作品として『有吉佐和子の本棚』(河出書房新社)に収められた『六十六歳の初舞台』は、老いを微笑ましく描いているので、おすすめしたい。暑さしのぎに絶好です。
おととい、帰って来た橋本治展をみてきた。神奈川近代文学館とすぐ近くの大佛次郎記念館を父は好きだった。緑深く静か。展示は素晴らしかった。有吉佐和子さんに約束した千羽鶴の手編みセーター、役者絵、ポスター、原稿用紙の手紙、どこまでも続く原稿。出口の等身大パネル。笑顔とまたね。今日まで。