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📚31【青い壺】の謎にツボる 785

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青い壺

有吉佐和子(1931年和歌山生まれ、『恍惚の人』『複合汚染』などの意欲作を発表、1984年没)

文春文庫 345頁
2011/7/10新装版
初出は1976/1〜1977/2文藝春秋
単行本化1977/4/10
文庫化1980/4


これは陶芸家、牧田省造が焼き上げた青磁の壺を巡る13編の物語。
青く美しい壺は人を惑わせながら数奇な運命を辿り、人間模様を露わにする。


省造は、30年間で一番美しい色が出せたと壺を前に感慨にふけっている。
たまたま訪れた道具屋から「古色をつける(薬品を使って時代物に見せる処理)」よう依頼され、落胆する。
省造の心中を察した妻は、省造の留守中に壺をデパートの美術コーナーに売り渡す。
ここから青い壺の波瀾万丈の物語が始まる。


定年退職した夫婦が、職場の役員への贈り物にと壺を購入し夫が職場に渡しに行く。
夫はそのままかつての席に座り書類に判を押し始めてしまう。
役員が持ち帰った壺に、華道家の妻が花を活けようとするも、壺の完璧な美しさを前に手を焼く。


青い壺は、夫婦のすれ違い、恋愛、介護、遺産相続、嫁姑、病気、空き巣などに翻弄され、京都の露店では僅か3,000円で売り出され弓香が購入する。
弓香の孫の悠子は、職場であるミッションスクールの修道女がスペインに帰る際の手土産にと青い壺を渡す。


バルセロナの骨董屋で青い壺を買い日本に持ち帰った名高い美術評論家である園田は、省造の恩師。
園田は青い壺のことを「南宋浙江省の竜泉窯。12世紀初頭の作品」だと鑑定する。
省造が自分が焼いたものだと告げると「君の作品ではない」と断じ、省造を追い返す……


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巻末にはエッセイスト平松洋子さんが解説を書いている(新装文庫版)。
私はうっかりと先に読んでしまったけれど、できれば復習として最後に読んでほしい。


たかが壺、されど壺。
文字から青磁の美しい青色を想像してみてほしい。
美しい壺と一緒に時代と海を超えてみてほしい。
ひとりの陶芸家、牧田省造の落胆とプライドに寄り添ってみてほしい。


社会派有吉佐和子氏の極上のエンタメ作品。
壺が行く先々の人間模様には、当時の社会問題が絡んでいる。
1976年に書かれた作品であるのにもかかわらず、古くささは驚くほど感じられない。
今もなお売れ続けている「不朽の名作」の名に誇張はない。







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