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集英社文庫の公式アカウントです。 書籍紹介やコラム、裏話、連載小説などを発信していきます。 読書の秋!新連載ぞくぞくスタート! 集英社文庫公式サイト:https://bunko.shueisha.co.jp/

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マガジン

  • 海路歴程/花村萬月

    精力的に執筆を続ける著者があたためていた構想がついに実を結ぶ! 水運国家としてのこの国の歴史をひもとく大河ロマン。

  • 本バカ一代記  ――花の版元・蔦屋重三郎――/吉川 永青

    江戸随一の出版バカ・蔦屋重三郎の生涯を描く、著者渾身の時代小説!

  • メソポタミアのボート三人男/高野秀行

    新たな脱力系本格派の冒険が始まる!! コンゴで怪獣を探し、ミャンマーでアヘン栽培に潜入し、ソマリアで独立国家を取材した著者が、メソポタミアの河下りを敢行する! 世界中の河を旅した山田隊長と共に、文明発祥の地を巡る一大冒険記。

  • 下町やぶさか診療所5

    看護師知子の義母が癌のため死去。故郷島根の海へ散骨してほしいとの遺言を残した。大先生こと麟太郎が知子夫妻に同行すると知った居候の高校生麻世は……。ユーモア&人情小説。

  • 雌鶏/楡 周平

    昭和29年、ナイトクラブ「ニュー・サボイ」で働く貴美子は、上客の鬼頭から京都で占い師として生計を立てないかとスカウトを受ける。服役の過去を持つ貴美子は、そこを足掛かりに次々と成り上がり……。昭和の政治と金を描く大長編。

  • REISAI×捜し物屋まやま「Anemone」
  • 畠中恵『猫君』(集英社文庫)PV

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読書の秋。新連載ぞくぞくスタート!

まだまだ残暑が厳しい……というより猛暑まっただなかですが、暦の上ではもう秋。 そう、読書の秋です! というわけで、集英社文庫noteでは小説・エッセイの新連載をぞくぞくスタート! 先行して連載を開始したのは、骨太なサスペンスを数多く生み出してきた福田和代さんのサイエンス×忍者小説『梟の胎動』。令和の忍者のスリリングな活躍をご覧ください! そして、血液のがんと闘いながら、長年あたためてきた構想をついに小説化した花村萬月さんの『海路歴程』。読み手をとらえて離さない中毒性の高い

    • 海路歴程 第十一回<上>/花村萬月

      .     09〈承前〉  中途半端にひらいた罅割れた唇から、薄汚く黄ばんだ糸切り歯が見える。前歯はない。落雷したときに泣き騒いで親司に殴られ、折られたのだ。  貞親は惚けて、ひたすら爨の糸切り歯を見つめた。歯には艶がまったくなく、乾ききっていたが、尖りが獣じみていた。その脇に生えている歯と歯のあいだに、薄白いものがはさまっている。  盗み食いしやがって──胸中で吐き棄て、貞親は無理やり口をひらいて歯の隙間にはさまったものを抓み、引き抜いた。  凝視する。  いったい何か?

      • 新刊のご案内【集英社文庫6月刊】

        みなさんこんにちは。 集英社文庫noteです。 夏目前! 気温も上がり季節の移り変わりを感じます。 集英社文庫も夏の一大キャンペーン”ナツイチ”が始まりました。 暑い夏こそ、涼しい場所での読書をしたり、旅のお供に本を連れて行ったり。 読書で”整って”元気に過ごしませんか? さて、6月20日に集英社文庫の6月刊が刊行されました。 今月は13作品14冊。 心に潤いを与えてくれる味わい深い作品や、学びを得ることができる作品が多く登場しています! こちらの記事では、それぞれの魅力

        • 「空を飛ぶほどアイ・ラブ・ユー」【試し読み】

           困った。  ブサイクなのにバク転ができるようになってしまった。  一九九三年、中学二年生の夏休み。私はひょんなことからバク転をマスターしてしまう。地面に両手を着けて後方に一回転するアレである。うちの学年、いや、学校の中でもできる奴はそうはいない離れ業である。  始まりはジャッキー・チェンだった。  夏休みも残り一週間となった八月の終わり、宿題を無事に片付け、暇を持て余していた私は、前日に見たジャッキーの映画『プロジェクトA』の影響で、家のすぐ裏手にある空き地にて、ひとりで

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        読書の秋。新連載ぞくぞくスタート!

        マガジン

        • 海路歴程/花村萬月
          22本
        • 本バカ一代記  ――花の版元・蔦屋重三郎――/吉川 永青
          28本
        • メソポタミアのボート三人男/高野秀行
          3本
        • 下町やぶさか診療所5
          4本
        • 雌鶏/楡 周平
          7本
        • 【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った
          6本

        記事

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第十話(上)

           三月には滝沢興邦を手代として迎えた。七月には喜多川歌麿の『婦人相学十躰』を売り出し、再び大当たりを取った。  そうした中で寛政四年(一七九二)が暮れようとしている。  十二月五日の晩、重三郎は蔵前の西福寺にあった。  昨日、勝川春章が世を去った。六十七歳の生涯であった。今宵はその通夜、広く寒々しい本堂に厳かな読経の声が流れている。 「お焼香を」  導師に促され、春章の家族がひとりずつ前に進む。各々、通夜に参じた面々に頭を下げて礼を尽くし、香を手向けていった。  家族の次は春

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第十話(上)

          メソポタミアのボート三人男 第三回/高野秀行

          【前回】 1-4メン・イン・ブラックの惨劇  現代の川旅は不思議だ。その昔、世界中どこでも川は交通の中心であり、川辺は栄えていたはずだが、今、川は生活の文脈と何も関係がないから、どこに行ってもまるで宇宙人がUFOに乗ってポッと降りたような気持ちになる。なにしろコンビニも自販機も何もない。地方の川の上流部では民家すらめったにない。他の人たちと全く異なった経路で、理由もなくそこに到達するみたいなのだ。  しかるに、この宇宙人は間抜けで自分の位置が地形図でしかわからない。川は

          メソポタミアのボート三人男 第三回/高野秀行

          「ベルマークの数だけキスをして」【試し読み】

          「じゃあ、ベルマークを一〇〇〇枚集めたらキスしてあげる」  クラスメイトの谷口茜は確かにそう言った。  聞き間違いではない。  不意に訪れたファーストキスのチャンス。  冗談か本気かわからない彼女の言葉を信じ、十二歳の私はベルマーク集めに奔走することになった。 「ベルマーク」とは、その名の通り、ベルのイラストが描かれたマークのことだ。食品、文房具など、さまざまな商品の包装紙やパッケージに印刷されているので、誰でも一度ぐらいは目にしたことがあるだろう。  私の通う小学校では、

          「ベルマークの数だけキスをして」【試し読み】

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第九話(下)

          【前回】           *  朝一番、耕書堂に山ほどの荷が届けられた。山東京伝の筆禍から三ヵ月余り、寛政三年の六月も終わらんという日であった。  紙に包まれたその品は、七月に売り出す絵――喜多川歌麿の美人画である。十枚ひと組の小箱入りで、深緑の蓋の中央に『婦女人相十品』と記した札が貼られていた。  その蓋を開け、一枚を手に取る。仕上がりの素晴らしさに、重三郎はぶるりと身を震わせた。 「こんなに良く刷れてるとは……」  手にした絵は、歌麿から最初に受け取った「煙草を吸

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第九話(下)

          下町やぶさか診療所 5 第二章 居場所がない・後/池永陽

          【前回】  午後の患者もあと数人というところで、耳打ちをするように八重子が話しかけてきた。 「大先生、あの娘、ちゃんときてますよ」 「あの娘って、吉沢明菜さんのことか――そうか、ちゃんときてくれたのか」  独り言のようにいう麟太郎に、 「待合室の隅に座っているのをちらっと見かけたので、受付の知子さんに訊いてきたら、一番あとで診てもらいたいということでしたよ」  得意げな顔で八重子はいう。 「ということは、今日は腹を括って話をするつもりってことか」 「そのようですね――おまけ

          下町やぶさか診療所 5 第二章 居場所がない・後/池永陽

          ミラン・クンデラ著『緩やかさ』訳者解説note特別公開

          <訳者解説>  ミラン・クンデラ(1929―2023)の小説『緩やかさ』La lenteurは、1995年1月、パリのガリマール社から出版され、たちまち彼のそれまでの作品と同様ベストセラーとなって、大いに話題になった。著者については、改めて紹介するまでもなく、現在わが国ではその主要作品がすべて日本語で読める。ただ、本作成立の背景については、いくらか解説しておくべきことがあるように思われる。  まず、この作品は著者がはじめてフランス語で書いた小説だということである。1975年

          ミラン・クンデラ著『緩やかさ』訳者解説note特別公開

          「恋の隠し味はしそと塩昆布」【試し読み】

          「死ぬ! 死ぬ!」 「助けて……吐きそう……」  次々に体調不良を訴える児童たち、その対応に追われる先生。いつもは楽しい給食の時間が、このような地獄絵図になろうとは。しかも、その原因を作ったのは私の祖母なのだ。  一九八八年九月、私の通う小学校で、あるコンテストが行われることになった。食欲の秋にかこつけた「あなたの家のオリジナル料理を教えてください!」というものだ。各家庭から料理のレシピを募集し、その中から優秀作品を選んで、実際に給食のメニューに採用するといった企画である。

          「恋の隠し味はしそと塩昆布」【試し読み】

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第九話(中)

          【前回】           * 「北町奉行、初鹿野河内守様。ご出座」  重々しく太鼓が響く中、その声が高らかに上がった。  重三郎は白州に敷かれた筵に座り、平伏して奉行を待つ。左隣では山東京伝が同じように平伏し、恐怖のあまり身を震わせていた。  やがて、静かに足を運ぶ音が届いた。衣擦れの音、静かに腰を下ろす音。次いで、低く厳かな声が渡る。 「地本問屋・耕書堂の主、蔦屋重三郎。並びに戯作者・山東京伝こと京屋伝蔵。面を上げい」  これに従って平伏を解けば、奉行は重三郎とそう

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第九話(中)

          海路歴程 第十回<下>/花村萬月

          .    *  滋養があると思われる腸まで食った。太い骨は折り、髄を啜った。  腹に入れられるだけ入れておこうと、気合いを入れて食ったのだが、五人で食うには大きすぎた。食い切れなかった分を干し肉に仕立てた。  ところが海水に漬けて干したにもかかわらず、腐ってしまった。どろりとした腐敗が酷くて、さすがに口にするわけにはいかない。いや口にできない。無理に口に運ぶと、厭な唾が湧いて嘔吐してしまうからだ。  腐臭というものは、それを口にしたら危ないという天からの警告だ。  鼻を抓ん

          海路歴程 第十回<下>/花村萬月

          メソポタミアのボート三人男 第二回/高野秀行

          【第一回】 1-2 衝撃の出発  川下りはユーフラテス川源流部最初の町であるディヤディンから始めることにした。ここから下は舟で下れるだけの水量があるし、両側が切り立った渓谷のようになっており、雰囲気もいいからだ。  ディヤディンの外れに車を止め、川下りの装備を川原に広げる。  千頭もの山羊と羊の群れを連れた羊飼いの家族が二組、通り過ぎた。羊の数にも驚いたが、片方の家族にはイスタンブールの繁華街にでもいそうな、派手な絵柄がプリントされたスリムジーンズに白いTシャツを着たお

          メソポタミアのボート三人男 第二回/高野秀行

          雌鶏 第六章 3/楡 周平

          【前回】      5  電話から三週間後。小早川(こばやかわ)が森沢(もりさわ)を伴って貴美子(きみこ)の元を訪ねてきた。 「失礼致します……」  小早川の押し殺した声が聞こえ、襖(ふすま)が引き開けられた。 「先生、ご無理をお聞き届けいただき恐縮でございます」  小早川は丁重に頭を下げ、部屋に入ると振り返り、「本日は息子の縁談について相談したく、先方のお父様を同行させていただきました。こちらは、ヨドの森沢社長です」  背後に立つ繁雄(しげお)を紹介する。  一目見た瞬

          雌鶏 第六章 3/楡 周平

          「本当にクラスメイトの女子、全員好きでした?」鈴木涼美×爪切男〈特別対談・完全版〉

          大ヒット作『死にたい夜にかぎって』の著者として知られる、作家・爪切男さん。その前日譚的エッセイ『クラスメイトの女子、全員好きでした』では、小学校から高校まで、爪さんが恋した女の子との強烈な思い出の数々が綴られています。2024年5月の文庫化に際して、解説を寄せてくださった作家・鈴木涼美さんの「元ギャルの言い分も聞いてください!」という一言から実現した本対談。相反する恋愛観から、作家としての意外な共通点まで、存分に語り尽くしました! 撮影/織田桂子 構成/土佐有明 (2024

          「本当にクラスメイトの女子、全員好きでした?」鈴木涼美×爪切男〈特別対談・完全版〉