【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 9/岩井三四二
(第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ)
九
「なるほど、初手柄ってわけですな」
「ええ。運よくおなじ中隊のヴォワザンVが偵察にきていましてね、証言してくれたんで、撃墜と認められました」
「うん、めでたい。たとえ『ベベ』に乗っていても、なかなか撃墜はできませんからね」
滋野男爵は、乾杯というようにワインのグラスを近づけたので、英彦はそれに合わせた。ちん、と澄んだ音がした。
十月二十三日、パリの一角に偕行社──日本陸軍の将校・準士官らの親睦・互助組織──が借りている一室で