橋本治の初期雑文を読む4
『問題発言2』より「理性の時代に--解説·有吉佐和子『母子変容』」
有吉佐和子の小説『母子変容』が週刊読売誌上に連載されていた昭和四十八年は、有吉佐和子にとって実に重要な年だった。前年に『恍惚の人』、翌年に『複合汚染』を書いた"社会派"有吉佐和子が、実におもしろい小説を三本も並行させて書いていた年なのだ。問題意識の狭間に"おもしろい"ものがあるということは、実に重要なことで、この辺りが才女·有吉佐和子の大きさと言えよう。
"社会性"に挟まれて昭和四十八年のエンターテインメント