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書籍「青い壺」

有吉佐和子さんの「青い壺」を読みました。
1976年に発表された小説なのですが、令和になってベストセラーになっているということで、波に乗ってみました。

昔の小説やからとっつきにくいんかな、と最初は思った私でしたが、
すぐに反省。
改めて大ベストセラーになる理由がわかる、その圧倒的な文章!!
面白すぎてほんまに止まりません。

読了後、拍手👏
無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壺が、売られ盗まれ様々な人の手に渡りながら映し出す数々の人生模様を描いています。

その青い壺は、まだ世間では知られていない陶芸家が焼き上げたものでしたが、古代中国の高価な壺と見まがうほどの出来でした。

そこから、最後の第13話で作者と再会するまで、十数年。
さまざまな人の手に渡るのですが、基本的には色々な形の母娘の関係性、夫婦の関係性を描いた物語と解釈しました。

個人的には第二話、第四話が非常に印象的。

第二話:定年を迎えた夫のつまらなさと奇行

定年になった夫が朝から晩まで家にいつくようになり、苦痛を感じる主婦目線のお話。
特に文句は言わないが何もせず、何の意見もなく、働きもしないのに一日三食よく食べる夫。
芝居に連れたってみても女友達と行くように楽しくならず、途中で帰ることになる。孫たちの喧噪を嫌がり、公園に連れて行くこともできない。

ある日、妻は長年お世話になった上司に改めてお礼をするため、夫を会社へ行かせた。そのとき持たせたお土産が、デパートで買い求めた「青い壺」!二万円という手ごろな価格で、見た目も美しく、妻はすぐに気に入ってお礼の品とした。

夫は会社でその壺を上司にわたすと、そのあと、なんと現役時代と同じように書類に判を押しはじめる。
周囲は怪訝な顔をするが、面白いのでそっとしておく。
なんと食堂で昼食までとり、その後現役時代の日課としていたラジオ体操を屋上でいつまでもいつまでもしているのだった。

第二話の感想
めちゃくちゃ怖ない?
もう50年以上、毎日朝から晩まで同じことを繰り返してきた人間は、こういうふうになるんやなあと空恐ろしくなりました。

ボケてるのかなんなのか、もう頭が考えることをやめ、何も機能していないみたいです。
人間は常に新しいことに挑戦して、無理やりにでもルーティーンを壊していくことが大事やなあと痛感。

第四話:親の遺産に群がる浅ましい子どもたち

芳江は、実家に孫を連れて会いに来た娘から、娘の嫁ぎ先の兄弟たちが聞くに堪えない財産相続争いを繰り広げている話を聞く。

四人の娘や息子たちが、親が亡くなる前から、誰が親の面倒見てきたか、嫁入りの持参金はいくらだったか、出産祝いを誰が多くもらったか、といった些末なことを理由にして、少しでも自分の分け前を増やそうと口汚く議論しているという。

芳江は、自分は娘一人、息子一人だから揉めるようなことはないわねえと言ったところ、娘は「あの壺はどうしたの」と目の色を変えて尋ねる。

そう、先ほどの第二話でお礼の品として壺を受け取ったのは、この芳江の夫!

高そうな壺だと踏んだ娘は、さっきまで相続争いの醜さを嘆いていたのに、値打ちのものを目ざとく見つけて自分のものにしようという魂胆が見える。そしてなんと、両親が死ぬ前に財産を相続して家を建てたいという話までするのである!

芳江は意気消沈し、娘が帰ったあとに帰宅した夫に話す。
娘にこんなことを言われるなら、長生きなんてするもんじゃないと落ち込む芳江に、夫はこう言う。
「僕はそうは思わんね。こうなれば思いっきり長生きをして世の中にトコトン迷惑をかけてやろうと思うね。もしガンにでもなったら、この家も土地も売り飛ばして、世界一周に出かけようよ」
「家も地べたも最後は売り払って、思いきりよく費って死ぬからそのつもりでいろって、友一郎(息子)にも言ってやれ」

第四話の感想
人間って恐ろしい生き物やなあと思うと同時に、
親の勝手で生まれてきたわけなので、親のお金をもらって当然という態度は間違ってはいないという気もします。

ただ、不自由なく愛情豊かに育ててくれた親ならば、「頼んではないけど生んでくれてありがとう、親があなたたちでよかった」という態度は人として必要かなと思います。

そして最後の夫の言葉、素敵やん?
強欲なこどもたちを甘やかさずに、夫婦のお金は夫婦で使い切ってほしい!
豪胆に最後まで生きていく決意を見せて、妻を励ます夫、頼もしい~~~
私も、死ぬその日まで攻めの姿勢で生きていこうと思いました。


こんな感じで、様々な家族の、様々な人生が、壺を通して繋がります。
全話めちゃくちゃおもろい。
夜中まで一気読みして、翌日半目で過ごすことになるので要注意です。






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