【ショートエッセー 神戸新聞文芸202401】筆は選ぶもの ※落選作
二十歳のとき、成人祝いで父から万年筆をもらった。まったく親不孝なことだけれど、父がくれた万年筆はわたしの手に馴染まなかった上、二年もしないうちにペン先が割れてしまったので、そのまま捨ててしまった。現在愛用している万年筆は、四半世紀前、当時東京の日本橋にあった丸善の文房具売り場で買った万年筆である。会社員になって初めての冬のボーナスで買うこともあって、購入前に何度も書き味を試したことを覚えている。 万年筆に限らず筆記用具はこだわる。鉛筆やシャープペンシルは使わない。基本は万年