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出戻り小学生

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根っからの学校嫌いが大人になって、まさかの学校で働くことに…。 現場における謎と不思議、笑いと感動に溢れた日々の記録。 今でも、戻れるのなら戻りたい…。
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#学校

学校図書館司書という仕事

 初めて赴任した時、何に何処から手を付けて良いのかわからなかった。何せ初めての職業。一人職なので指南してくれる人がいない。勤務開始前に引継ぎと称して二度呼び出しを受け、一校では校長から数時間に渡って図書に関する要望を延々と聞かされ、もう一校では授業の流れと機械の基本操作について実地演習を受けた。図書に関する熱意の凄まじい校長に脅威を覚え、始まる前から不安になった一方、授業に参加した2年生のクラスは

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最初で最後の音楽会

 現在専任している学校は市のほぼ中心にあり、自然いっぱいの田舎にありながらそこは〝都会〟と呼ばれる場所になる。市役所や市立図書館などの公共施設も、徒歩かせいぜい自転車圏内。坂だらけなので決して平坦な道のりではないが、田舎の〝田舎〟に比べると大分便利だ。
 学校の隣には市の文化会館があり、各種公演が行われている。唯、私にとっては、大昔に何かのイベントで行ったことがあったようななかったような、怪しい記

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それぞれの春 ①

 春が苦手だ。昔から。出会いと別れの季節…というが、先ず、そのどちらも苦手。学生時代はクラス替えなどで前後左右の景色が変わるのもストレスだった。
 進学を繰り返す度、ひたすら挫折を経験したのも原因ではある。
 就職氷河期真っ只中に社会へ出てからも、長らく毎年更新の有期雇用者だったため、翌年仕事があるのか、路頭に迷うのか、何ヶ月も前から不安で倒れそうだった。
 希望を胸いっぱいに抱いて羽ばたこうと将

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ありとあらゆる境目に

 新年度が始まって、毎年何人かがやって来る。100%女の子で、100%高学年だ。
「友達が出来ない。」
「誰と仲良くしたら良いのかわからない。」
 今年やって来た子たちは、ストレートだった。
 学校の規模が大きいと、毎年クラス替えが行われる。クラス数が多ければ多いほど、小学校6年間で、一度も話したことがないとか、同じクラスにさえなったことがない…などという話もよく聞く。
 自身が小規模校の出身で、

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集団行動①

 以前働いていた職場で、こんなことがあった。
「誰か、これ運ぶの手伝ってー!」
 彼女の手元に置かれているのは、小学校の教室にあるような、一人用の勉強机。十人にも満たない小さな事務所に居た数人が、一斉に立ち上がる。結局、一人用の勉強机を4、5人でわいわい言いながら運んで行った。
 彼女達が立ち上がった時、私は声のする方を見はしたが、立ち上がらなかった。
「手伝ってー!」が異様だと感じたのは、『そん

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学校という奇異な職場

 以前、私は学校や先生が嫌いなのに、今、学校という場所で先生という人たちの間で仕事をしていると書いた。実際、学校で先生達とも関わって給料を得てはいるのだが、改めて見渡してみると、私はとっても不安定な環境に居ることがわかる。それは中途採用でその場所に飛び込んだということも少なからず関係しているが、最低週五日、一つの学校を職場として就業している〝先生方〟と違って、私は週五日勤務していても、週二日と週三

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学校という場所

 学校が嫌いだ。今に始まったことではない。学生時代から嫌いだった。
 今、何故か学校で働いている。働くには良い場所のように思えたが、それは思い違いだったと気付く。学校が嫌いだったことを、改めて実感しているせいだ。
 学校が嫌いなのは、学校の先生が嫌いだからでもある。その影響力は凄まじい。今、私が見ている学校の先生というものは、私が通っていた頃、嫌いだった学校の先生と同じ顔をしている。偉そうに踏ん反

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ハードル part2

 学校司書として働く。前回そう書いたが、もう既に辞めることを考えている。まだ働いてもいないのに…。
 今日、配属先の二校中、昨日とは別のもう一校へ引継ぎに行った。
〝授業〟というものに参加し、実際に仕事として行う作業の、一部を手伝う。週五日の内、三日間を通うその学校は規模が大きい。三日間、一時限目から六時限目まで、担当の時間割がびっしり入っていた。
 仕事はそれだけではない。事務的な仕事や整理業務

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ハードル

 前向き過ぎる無職生活が終わる。仕事が決まったのだ。
 一年毎の更新で、最長五年の任用期間を設けられた仕事。学校の図書館司書…図書室の先生というやつである。
 引継ぎというものに行って打ちのめされた。ハードルが高過ぎる。
 仕事はしながら覚えて行く…仕事とは私の中でそういうものだったが、想像以上の激務が待ち構えている様子だ。引継ぎに行ったが、勤務にあたって必要な持ち物など、最低限知りたいことが何

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